人生はマラソンだ!

監督:ディーデリック・コーパル
出演:ステファン・デ・ワレ、マルティン・バン・ワールデンベルグ他
2012年 オランダ映画

“シニアの楽しい生き方を教えてくれる”
オランダの街の小さな車修理工場で働く4人のオジさんと1人の若者。
借金だらけの工場を救う方法として、金持ちの中古車ディーラーに
「マラソンで完走したら工場の借金を肩代わりしてもらう」約束をとりつける。
日頃から酒とタバコと不摂生な生活。
メタボになり、家では奥さんの尻にひかれたり、浮気をされやりとダメなオジさんに成り下がっている。
借金まみれの社長は、子どもが不良になり、自分も癌に侵され、工場と家族を守る為に「マラソン完走」という最後の賭けに出る。
人生の終わりに向かっていくオジさん達が1つの事に向かって徐々に真剣になっていく姿は、
シニアが楽しく生きるヒントを教えてくれているようだ。
年を取るにつれ、仕事だけで、家族や友達を顧みなくなっていく人が多い。そして退職して生きがいを失う男性も多々いる。
そんな中、この4人、そしてサポートする1人の若者は何て楽しく生きているのだろうと羨ましく感じる。
しかし、この4人は決して特別な人達ではない。
誰もが歩みだせる「シニアの生き方」を教えてくれる作品です。



グラン・ブルー

監督:リュック・ベッソン
出演:ロザンナ・アークエット、ジャン=マルク・バール、ジャン・レノ他
1988年 フランス/イタリア映画

“友情と記録”
フリーダイビングの世界記録保持者“ジャック・マイヨール”の協力の下、2人の本物のダイバーを中心に映像美と共に描かれた作品。
実際のストーリーは時代や恋愛の部分はフィクションのようだが、
監督であるリュック・ベッソン自身がダイビングをやっていることもあり、その部分はリアリティがあると思われる。
実際にエンゾは命を落としていないことをここに書いておくが、フリーダイビングも1つのスポーツとして海外では人気を博している。
恋愛の部分についてはゆっくりと作品を観て楽しんでもらうとして、
先輩・後輩と友情について描かれている部分はアスリートも学ぶべきものが多いであろう。
先輩は後輩にチャンスを与え、後輩は先輩を尊敬しつつも自分の全力で立ち向かっていく。
お互いに全力を尽くしたら結果にこだわらず、共に喜び合う。
もちろん、お互いにライバルであるが、知り尽くした者同士が全力で、しかも楽しみながら戦うからこそ意義があるのだと思う。
先輩が伸びてくる後輩をつぶす話を多々聞くが、それではお互いに伸びることなく、つまらないことで共にダメになってしまう。
日本人は特にその場の結果だけを求めてしまいがちである。
しかも小さなローカルの大会でこそ、そんなシーンをよく見かける。
本当に成長したいのであれば、この作品のジャックとエンゾのように、お互いを認め合い、共に成長する道を選んで欲しいものである。
グラン・ブルー映像の美しさだけでなく、アスリートの本当の誇りと友情を教えてくれる作品である。



ザ・ファイター

監督:デヴィッド・O・ラッセル
出演:マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール他
2010年 アメリカ映画

“事実に基づいた究極のボクシングムービー”
ゴールデングローブ賞2冠に輝き、世界中の映画祭で数々の賞を受賞した、実在の兄弟ボクサーを描いた感動作。
兄“ディッキー”は天才と呼ばれたボクサーだったが、短気でおちゃらけた性格でドラッグに手を出し、警察に捕まってしまう。
弟“ミッキー”は兄に憧れ、子供の頃からボクシングを始めたが、
家族の金儲けの為、無理な試合ばかり組まれ、花開かない生活を送っていた。
兄の指導を受け、世界チャンピオンを目指していたが、監獄送りになった兄に頼れないので、
新しいトレーナーをつけ、再起を図る。
今まで家族の犠牲になっていたミッキーは、解放されボクシングに集中できるようになると次々と結果を出し、
ついに世界タイトルマッチ出場権を手にする。
そんな時、ディッキーが出所してくる。
どん底の生活をしている家族がボクシングを通して絆を深めたり、ボクシングに全てを賭けていた故に、家族が壊れたり…。
事実だからこそ全てが簡単には上手くいく訳では無いことを教えてくれる。
試合のシーンは実にスピード感あふれ、見ているこちらも思わず痛くなってしまうほどである。
HBOのボクシングの試合をいつも撮影しているスタッフが試合を撮っているそうで、
まさに、現実、スポーツ中継を見ているようだった。
どんなに苦しい生活をしていても“夢”はあきらめなければ叶えられることを教えてくれる、
事実に基づいた“究極のボクシングムービー”である。



マシュー・マコノヒー マーシャルの奇跡

監督:マックG
出演:マシュー・マコノヒー、マシュー・フォックス他
2006年 アメリカ映画

“復活するために必要なもの”
名門のアメフトチームを持っているマーシャル大学。
それは単なるカレッジスポーツではなく、町の人達の希望であり、町をつなぐ象徴であった。
そんなアメフトチームを乗せた飛行機が遠征の帰りに墜落し、全員他界する。
残されたのは4人のメンバーと試合に出場出来ない1年生と何人かのアシスタントコーチ。
次のシーズンを見送って喪にふくそうとしたが、残されたメンバーや大学の生徒達によって、
すぐ復活することを目指すことにした。
コーチ選びや選手集めから難航するが、徐々にチームが出来ていく。
どんよりとしていた町の人達も、アメフト部の復活で少しずつ元気を取り戻していく。
初めてアメフトをやるメンバーもいる急造のアメフト部。
彼らは勝利を目指し、チームは1つになっていく。
そんなアメフト部の復活の事実を作品化したのがこの“マーシャルの奇跡”である。
アメリカの大学スポーツは単に大学だけのものではなく、地元の象徴となっているものが数多くある。
町の人達は大学スポーツの勝敗に一喜一憂し、グランドに足を運び、練習を見ながら会話を楽しむ。
この感覚は日本では分かりづらいが、アメリカの田舎に行くと、カレッジTシャツやトレーナーを全世代の町民が着ている。
復活するためにやってきたコーチは、この町の出身者でない何の関わりもない人間だった。
しかし彼は「町を元気にするにはフットボールの力しかない、だから救いたいんだ」
ヘッドコーチとなった彼は大学スポーツを“家族”という目で見て復活に力を注ぐ。
立ち止まっていても悲しみは増すだけ。一勝して初めて亡き人達に敬意を持てるのだ。
彼の考えで多くの町の人達の心も救うことが出来た。
復活のために必要なもの。それは前に進むことに対して“恐れない心”。
その大切さを教えてくれる、本当に出会えてよかった作品でした。



Win Win

監督:トーマス・マッカーシー
出演:ポール・ジアマッティ、アレックス・シェイファー他
2011年 アメリカ映画

“Win Winの関係”
お人好しで儲かっていない街の弁護士はストレスを抱え仕事を探しながらもギリギリの生活を送っている。
彼が唯一燃えているモノ、それは自分がコーチしている高校のレスリング部だった。
お金に困っている弁護士は、資産家で知覚障害のある老人の後見人となり、楽をしたいので施設に入れる。
生活は少し安定したが、家族に隠して弁護士的にも裁判所を騙している行為は余計に心苦しく、
ストレスをさらに溜めるだけだった。
そんな時、老人の孫が家出をして老人の元にやってくる。
母親に見捨てられ、母の新しい恋人にいじめられ、不良になった高校生。
しかし、彼はレスリングの才能があり、弁護士は“コーチとしての魂”に火をつけられ、
少年を引き取り、愛情をかけ育て始める。
そんな弁護士と少年の関係を描いた作品がこの“Win Win”である。
ビジネス用語として、“Win Win”という言葉をよく使う。
両者共に得をする構造のことを言うが、この作品の2人の関係もそうかもしれない。
“愛情”を持って育てられなかった少年は“教育”を得て、冴えない弁護士も“夢”をもらえた。
この後ストーリーは二転三転していくのだが、
1対1でぶつかり合うスポーツである“レスリング”と人生でぶつかり合う2人の様子が、非常に象徴的に伝わってきた。
“表現は下手でもぶつかってくる若者”の存在がとても新鮮に感じた。
最近の若い人達には、すぐに嫌なことから逃げてしまう人が多いが、
ぶつかっても対話したり、言い合うことで、答えは導かれていくものである。
逃げると何一つ答えは生まれない。
“Win Winの関係”を作るには、逃げ出してはいけない。
んなことを教えてくれる作品です。



俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル

監督:デニス・デューガン
出演:アダム・サンドラー、クリストファー・マクドナルド、ジェリー・ボーウェン他
1996年 アメリカ映画

“誰かの為に…”
スケートがまともに出来ないのにパッティングだけは凄い、アイスホッケーに命をかけている
アダム・サンドラー演じる“ハッピー・ギルモア”。
彼の最愛の祖母の家が税務署に差し押さえられ、ひょんなことからプロゴルファーになり、賞金で家を取り戻そうとする。
基本はコメディ映画なので、笑って楽しめばいいのだが、
単純に楽しみながら、愛する祖母や仲間の為にゴルフをしている“ギル”と、
賞金と名誉の為にやっている人間の違いを善悪はっきりさせて描いているので、
誰もがわかりやすい作りの作品である。
誰かに夢や希望を与える人間の“正しさ”“強さ”を笑いの中で表現しているのだが、
シリアスな目で見ると、実に真実をついている。
若いトップアスリートの中にも、自分の為だけにスポーツをしている人間が多い。
この作品ほど目に見えるような卑怯なことはしていないが、本当の友達が1人もいなくて、実は孤独な人も多いと思う。
ただプレイするのでなく、プレイを通して自分を表現し、
仲間や応援者、家族を大事に出来ない人間は、一流になれないと僕は思う。
こんなコメディ映画の評論で、こんな文章を書いているのは少し滑稽だが、
笑いの中にある真実は、シリアスなものよりグサッと心の奥を刺すときがある。
この作品はそんな作品であった。
子供から大人まで楽しめて、周りの人間の大切さ、楽しむことの重要性を教えてくれる1本です。



栄光の彼方に

監督:マイケル・チャップマン
出演:トム・クルーズ、リー・トンプソン、クリストファー・ペン他
1983年 アメリカ映画

“日本とアメリカのスカラシップ”
トム・クルーズ演じる主人公は、さびれゆく鉄工所の町にある高校のアメフト選手として活躍していた。
父も祖父もこの鉄工所で働き、兄も働くのだが人員カットで無職になってしまう。
しかしこの町の産業は鉄を作る事しかなく、さびれゆく町の唯一の希望が地元高校のアメフト部だった。
彼らの活躍は町全体の喜びだった。
主人公はこんな町を出て、自分が将来やってみたい設計の仕事に就けるよう
工科大でアメフトと勉強をすることを望んでいた。
しかし家は貧しいので奨学金を受ける必要があった。
そのためにも人一倍アメフトの練習も勉強もしたのだが、
男気が強く友達思いで思った事を言わないと気がすまないタイプなのでコーチと衝突してしまう。
コーチは大学の推薦を決める大きな壁となる。
若い力でどのように打開していくか?
この作品は、そんなアメリカの貧しい田舎町の青年を描いた作品である。
この作品で描かれている“大学推薦”だが、日本とアメリカでは捉えられ方が大きく違う気がする。
日本のスポーツ推薦は、スポーツの成績がフューチャーされ過ぎている。
やりたい学問などよりも「このスポーツの名門は○○大学だから」という理由だけで、
高校生が学校を決め過ぎていると思う。
アメリカの場合、スポーツはもちろん、学科や学部、研究内容などを事細かに話をし、
卒業後の人生までも話をするそうである。
トップアスリートのセカンドキャリアも含め、“スポーツと大学”のあり方を考えなくてはならないのかもしれない。



ウィンブルドン

監督:リチャード・ロンクレイン
出演:キルステン・ダンスト、ポール・ベタニー他
2004年 アメリカ映画

“自分との戦い”
30歳を過ぎた元有名プレイヤーと、最高潮で旬な女子テニスプレイヤーが
ウィンブルドンの大会期間中に恋に落ち、
その気持ちと大会に向けての集中力が入り混じりながら展開していくラブストーリー“ウィンブルドン”
30歳の元プレイヤーは年齢、体力などに限界を感じ始め、このウィンブルドンで引退を考えていた。
そんな時、スターテニスプレイヤーと出会い、恋に落ちる。
男はその恋をパワーに変え、勝利をつかみ決勝へと進む。
女は恋のことを考え、集中力を切らし、負けてしまう。
しかし、恋の力は絶大である。
その後、2人の恋は?そして男の結果は?
ラブストーリー好きの人ならとても楽しく見られる作品である。
僕的には、心理をうまく表現していることに感心した。
コートの中は自分と敵だけである。
1球ごとに変わっていく心の変化を、モノローグを使い、うまく魅せてくれる。
強気になったり、弱気になったり、一刻一刻変わっていく自分の気持ち。
でも、前に向かう気持ちが失われた時、試合は事実上終わる。
ボールボーイ、審判、観客と本人のカットバックが、試合は単なるゲームでなく、自分との戦いであると教えてくれる。
何気ない音や観客の声まで選手の心理に影響している。
そんな部分を非常に丁寧に描いている作品である。
試合という一瞬にスポーツは人生を映し出すことができる。
そんなことをはっきりと確認させてもらえる作品です。
メンタルが弱いと感じているアスリートに見てもらいたい1本です。



君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

監督:クリスティナ・ゴダ
出演:イヴァーン・フェニェー、カタ・ドボー他
2006年 ハンガリー映画

“自由と愛とスポーツと”
1956年、ハンガリーはソ連の侵略を受け、首都ブダペストは炎に包まれた。
自由を望む民衆の中で立ち上がった1人の女子大生と、オリンピックに向け注目されている1人の水球選手。
自由に向け武器を持ち戦う女性と、国の名誉の為プールの中で金メダルを狙い戦う男性。
2人は結ばれ、ソ連も撤退し、自由と真実の愛を得た気がした。オリンピックに向かう男と送り出す女。
しかし、オリンピック開催中、またもソ連がハンガリーを侵略する。
水球を捨て、愛する女性の為に帰国も考えたが、
「ハンガリー国民に名誉や勇気を与える為にもオリンピックで戦うのだ」という監督の言葉で奮起し、試合に出場する。
しかしその時、彼女は秘密警察に捕らえられてしまう。この後、2人の運命は…というストーリー。
ソ連がブダペストを戦車で攻めているシーンと、
水球でソ連がハンガリーをフファウルで殴ったり、沈めているシーンの対比が、よりストーリーに引き込んでくれた。
スポーツが国の名誉や勇気を与えることというのは大いにあると思う。
そんなイメージをはっきり形にしているこの作品は、トップアスリート達に見てもらい、
自分が代表選手やトップアスリートとして発信できる可能性を考えてもらいたい。
単なる1人の人間であり、民衆の中の1人なのかもしれないが、
試合や大会を通して発信できるメッセージは絶大なものである。
時代、国、仲間、民衆、いろいろなものを背負った中で発信する力があるアスリートが真のトップアスリートなのだ。
“自由と愛とスポーツと”そんな当たり前のものに慣れすぎているから感じていないが、
実はとても大切であることに気付いて欲しい。


 

チャンプ

監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ジョン・ヴォイト、フェイ・ダナウェイ、リッキー・シュローダー他
1979年 アメリカ映画

“カムバックの力”
かつてのボクシングのチャンピオン・ビリーは、妻に逃げられ今や酒とギャンブル漬け。
競馬場で1人息子を育てながら生活をしている。
息子の為にも再びリングに上がり、強い父の姿を見せようとするが、最後は逃げてしまい、
息子に1度も闘う姿を見せてあげられないでいる。
ある日ギャンブルで勝ちまくり、馬を1頭買い、父子は馬主となる。
この馬を競馬に出した時、別れた妻が2人を見つける。
金持ちと再婚し裕福な生活を送っていた別れた妻は、ビリーがギャンブルで刑務所に入れられた時、息子を引き取ろうとする。
しかし息子は父の元に戻ってくる。
その息子の姿を見てビリーはリングに戻ることを決意する。
この後は感動のストーリーへとつながっていくのだが、
このカムバックを決意する父の姿が、僕がこの映画で最も注目して見た部分である。
全てのスポーツ、いや人生において、1度自分が失敗したことに再挑戦することはたやすいことではない。
自信を失っている部分もあるし、恐怖もある。
特にモチベーションを必要とするスポーツは、余計にその重さを感じるであろう。
この作品の場合、何度も再挑戦しかけては逃げてしまうビリーの姿を描写している。
しかし、最後は挑戦する。
大切なことを残し、伝えたいという父の気持ち。それも本当に強い意志が必要なのである。
カムバックは初挑戦の何倍もきついはずである。
だからこそ、応援する力が必要なのだ。
周囲でカムバックをしようとする人がいたら、真の応援を送ってあげよう。
そんな気持ちを持たせてくれる作品である。



チアガールVSテキサスコップ

監督:スティーヴン・ヘレク
出演:トミー・リー・ジョーンズ、クリスティナ・ミリアン他
2005年 アメリカ映画

“応援力”
缶コーヒーのCMでお馴染みのトミー・リー・ジョーンズが演じる無骨でジョーク1つ言えないテキサスの刑事と、
今や盛りの5人のチアリーダー達が繰り広げるコメディタッチの作品“チアガールVSテキサスコップ”
刑事が事件を追いかけている時、たまたま取り逃がした犯人を見てしまったチアガール達。
彼女達が狙われると判断した刑事は、チアガール達の寮に住み込み、事件解決まで守ることに。
しかし、自由気ままな彼女達の生活に高校生の娘を持つ刑事は頭を抱えてしまう。
しかも自分の娘と言っても、離婚をしていて別れた妻の元にいるので、なかなか会うことも出来ない。
チアガールである彼女達はフットボールの試合や決起集会など人がたくさんいる所に出て行くので、警備も大変である。
「27点差付けられた時、誰が必要?」「それは私達チアガールよ!!」
負けている時の応援の力を知っていて誰よりも応援力を持っている彼女達。
常に前向きでポジティブに生きることこそ、“応援力”の源である事を笑いの中で教えてくれる。
応援は形ではない。応援は“心”“気持ち”なのである。
試合会場だけでなく人生においても自然に応援できる彼女達を見て元気になってしまう。
少し落ち込んでいる人に是非見てもらいたい1本。
応援力、CHEER SOULを感じる作品です。



シービスケット

監督:ゲイリー・ロス
出演:トビー・マグワイア、ジェフ・ブリッジス、クリス・クーパー他
2003年 アメリカ映画

“不屈の精神とパートナー”
20世紀前半のアメリカの歴史の解説から入り、アメリカの盛栄と不況、そして立ち上がっていく様子が、
1頭の競走馬“シービスケット”と騎手通称レッドの人生と照らし合わせ描かれている感動の作品。
名馬の息子だったのだが、性格や扱いでダメな馬のレッテルが貼られる。
レッドは家族が裕福だったのだが、アメリカ大不況に巻き込まれ、家族から1人巣立ち、競馬の世界に入る。
しかしいつも1人孤立していた。
そんな時、1人の調教師と1つのファミリーに拾われる。
「少しダメなところがあっても殺す必要は無い」
調教師のそんなポリシーと馬主ファミリーの温かさでどんどん成長していく1頭の馬と1人の人間。
先日鳥羽でディスクドッグのJAPAN CUPの取材をしてきた。
犬と人間が心を通わせ、苦楽を共にし、1つの競技に臨んでいる姿を生で見た。
馬と騎手の関係もこんな感じなのだろう。
動物と共に競技をするスポーツは、人間のエゴだけでは成立しない。
“愛”と“共存”の中、練習を重ねていかなくてはならない。
信頼を得ないと言う事を聞いてくれない。口先では動物を騙すことも出来ない。
本当の意味で心を通わせる必要がある。
この作品“シービスケット”も台詞が無いところが多々ある。
きっと彼達の気持ちを体感出来るように作られているのであろう。
挫折して再び立ち上がる勇気と熱い気持ちを与えてくれる作品です。



ティンカップ

監督:ロン・シェルトン
出演:ケヴィン・コスナー、レネ・ルッソ、ドン・ジョンソン他
1996年 アメリカ映画

“立ち上がる力”
テキサスの田舎のしがないゴルフのレッスンプロが、
自分の人生を切り開くため一念発起し、USオープンを目指していく“ティンカップ”
何の目標も無く、昔の彼女に金を借り、遊びまくり、だらだら仕事をしていた主人公が、
一人の美人精神科医と出会うことで人生が変わっていく。
才能はあってもメンタルが弱く、その反動ですぐ怒ったり、ゲームを捨ててしまうゴルファーが、
トッププロゴルファーを彼に持つ精神科医を落とすため、
その彼を潰すべくUSオープン出場に向け、トレーニングを始める。
彼の周りの人間も、光の当たらない人達だらけだった。
しかし、トレーニングを続け、彼女の優しさとメンタルトレーニングの中、徐々に成長していく。
“一か八か”的攻めのゴルフをしていく彼も、弱気になると急にダメになっていく。
そんな中、仲間や友達の希望の星となり、逃げられなくなることで心も少しずつ強くなり、ついに…。
結果は単なるハッピーエンドというわけではないのだが、自分を貫いたゴルフをやっていく。
この作品は少し自虐的になっている人達に見て欲しい1本。
才能はあってもメンタルが弱く、何かのせいにしてしまうことは誰でも簡単に出来る。
でも成長はそこで止まってしまう。
挑戦していくことは、年齢に関係なく、いつでも出来ることなのである。
この作品を見て、挑戦する気持ちを取り戻して欲しい。



ダイブ!!

監督:熊澤尚人
出演:林遣都、池松壮亮、溝端淳平他
2008年 日本映画

“2世3世の苦しみ”
父がトップの飛込選手だった若者、祖父が伝説の選手だった孫、
そしてただ飛込に憧れて始めた普通の若者という3人のトップ飛込選手とコーチの関係を通して
オリンピックを目指す過程を描いた作品“ダイブ!!”
日本水泳連盟などがストーリー上に現れ、水連の仕事もしている僕にとってはとても身近に感じられる作品でした。
競泳やシンクロは日本人にとって身近ですが、飛込、水球、オープンウォーターなどは知らない人も多いでしょう。
でも生で見ると迫力や演技など迫ってくるものがあるので、一度見てみてはいかがでしょうか?
本題に戻ると、元有名選手を父に持つ息子の葛藤、
他界している伝説の祖父を越えたいと思っている若者の苦悩、
そしてサラブレッドに混じって練習をしている普通の家庭に生まれた飛込を単純に好きになってしまった青年という
タイプの違う3人がお互いを刺激しあって成長していく様がこの作品では描かれています。
自分の父親をコーチとしてしか見れない息子は、だんだん父が大きな壁になっていく。
勝ち方を知っているコーチである父は、息子に失敗させたくないあまり、冒険して苦手な技をやらせるようなことをしない。
息子はやがて自分の人生を支配されているように感じるようになる。
それでも直接言ってもらっている姿をうらやましいと思う伝説の飛込選手の孫。
見えない存在を追いかけるつらさ。
そんな2人と共に自由に練習する若者。
父や祖父と同じ道を歩むことはスポーツに限ったことではない。
家業を継いだり、店を継いだりと父や祖父と同じ仕事に就く人達は世の中にたくさんいる。
そんな中で“父と師匠”のバランスが子供に大きな影響を与えると思います。
自分のやっていることを子供にやらせたい親は、一度この作品を親子で見て、話をしてみると良いのではないでしょうか?



レイジング・ブル

監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバート・デ・ニーロ、キャシー・モリアーティ、ジョー・ペシ他
1980年 アメリカ映画

“パーフェクトとは?”
マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ出演の
NYブロンクスに住むイタリア系アメリカ人のボクサーを描いた名作“レイジング・ブル”
ボクサーである兄とマネージメントする弟が、自らの“男としてのパーフェクト”を求め
ボクサーとして立ち向かっていくストーリーを描いているのだが、
女にもてて強くて金を持っていて見栄えが良くて…という男の欲をすべてむき出しにしている。
そんな見た目と欲のパーフェクトを求めているボクサーを利用しようとする人もたくさん出てくる。
真のパーフェクトでなく、見た目のパーフェクトを求める人間は、
本当の意味で信頼してくれる人や助けてくれる人はいない。
自分も相手に利益だけを求めているから、相手の真意も見えてこない。
派手な世界にいるが、実際は孤独であることにも気付かなかったりする。
見栄をはって生きていると、相談する相手すらいなく、
外ではスター、内でな孤独な人生って本当にパーフェクトなのだろうか?
マーティン・スコセッシらしく、状況を見せるカットや、
白黒の映像に写真や8mmフィルム的なカラー映像が織り交ぜられ心情描写が巧みに表現されている。
“男の美学”とは何かを考えさせられる。人生には調子の良い時と悪い時がある。
自分の見栄と我を通すと、調子の悪い時、誰も話すら聞いてくれなくなるだろう。
人生の光と影を表現しているこの作品を通して、見栄だけのパーフェクトの薄っぺらさに気付いてください。



ルディ/涙のウイニング・ラン

監督:デヴィッド・アンスポー
出演:ショーン・アスティン、ジョン・ファヴロー他
1993年 アメリカ映画

“夢と努力”
ノートルダム大学の1人のアメフト選手の実話を映画化した“ルディ/涙のウイニング・ラン”
このルディという青年は背も小さく、読書障害を持っていたため学力もなく、
特に運動能力が高い訳でもない、どちらかと言うと兄弟の中でも大学に行くタイプの人間ではなかった。
しかし、兄弟とやっていたフットボールが大好きで、テレビの中のノートルダム大学のチームに憧れていたルディは、
高校の先生に「無理」というレッテルを貼られ、受験すらせず、高校卒業後、工場で働き始める。
そんな中、親友は夢をあきらめないように応援してくれていた。
その応援を糧にルディは少しずつお金を貯め、いつの日かノートルダム大学を受験しようと思っていた。
しかし、同じ工場で働いていたその親友が、事故で突然他界してしまう。
ルディはその日を境に夢に向かう決心をする。
特に能力もない普通の人間も、“熱意”と“努力”で夢を叶えることが出来るということを証明してくれる作品である。
大学時代もレギュラーになれず、卒業する前にたった1試合だけベンチに入れてもらい、
公式試合に5分も出ていないこの青年をフューチャーしている部分が本当にユニークである。
スター選手の生き様を描いている作品は数多くあるが、
スター選手でないが、チームに必要とされている人間の大切さをしっかりと描いていることで、
誰もが夢を持っていいのだということを教えてくれる。
夢に向かって努力しているすべての若者に見て欲しい“ルディ/涙のウイニング・ラン”
本当に勇気を与えてくれる作品です。



レスラー

監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド他
2008年 アメリカ映画

“最期までつらぬくこと”
ミッキー・ローク主演の孤独な老いたプロレスラーの生き様を描いた作品“レスラー”
昔の栄光の姿を追いかけすぎて家庭を顧みず、娘をおいて興行の旅にでる主人公。
トレーニングやランニングなど体を鍛えることと、派手な世界ばかりに目を向け、
夢だけを追いかけたアスリートの結末の姿を見せている。
「夢を追う」この言葉はすごく美しく聞こえるが、自分の体や仕事としての現実、
家族や社会のことを見失っていると、ふと後ろを振り返った時、何も残っていない自分に気付くのである。
“夢と現実”このバランスの難しさを見事に描いた作品である。
僕も様々なアスリートと出会ってきたが、彼らが年を重ねていくと、
セカンドライフに入る人と、いつまでも食らいついていこうという人の2つに分かれる。
特にピークの時、頂点にいた人ほど悩んでいることが多い。
年をとり、自分の現実に気づかず“まだやれる”というイメージだけが残っている人は、
そんな自分を騙してでも続けようとする。
自分の中でしっかり“ケジメ”をつけてセカンドライフを送っている人で成功している人は多々いる。
どちらが正しい人生かと言うことは出来ないが、アスリートはいつの日か“引退”する日が来るものである。
本当の引退は、本人しか決められないものだが、周りの人間が出来ることは、
冷静に考える時間を作ってあげることではないだろうか?
この作品を通して、最期までつらぬくことの良し悪しを深く考えさせられた。
夢を追う人は、何度か決断をしなくてはいけない時がある。そんな時に見て欲しい1本です。



傷だらけのランナー

監督:サンディ・タン
出演:ブラッド・ピット、リッキー・シュローダー他
1990年 アメリカ映画

“兄弟で同じスポーツをすること”
若き日のブラッド・ピットが主演で出ている陸上映画“傷だらけのランナー”
働き者の母と、いつも酔っ払っていて子供達に暴力を振るう父の間に生まれた兄ジョーと弟ビリー。
父は勉強も運動も出来るジョーが勝った時だけジョーを自慢し優しかった。
兄ジョーは父に優しくされたい為、勝ちにこだわるランナーになり、郡でもトップのランナーになっていた。
弟ビリーはそんな姿を見てレースが嫌いになり部活もせず遊び歩くようになっていく。
そんな時、父が酔っ払い、車で事故を起こし亡くなってしまう。
弟ビリーは不良と付き合うようになり、車泥棒で少年院に1年入れられてしまう。
少年院から出た後、兄ジョーは弟ビリーにランナーとして陸上部に入るよう勧める。
しかし、レース嫌いなビリーはこばみ続ける。
個人的に兄の練習に付き合っていると、徐々に走ることの面白さに魅せられ、陸上部に入部。
違う学校だった2人は対決することになる。
そして兄の奨学金のかかった大会で2人の対決はどうなるのか?という、
兄弟で同じスポーツをする2人のランナーを描いているのだが、
このようなシチュエーションの兄弟や姉妹は多くいると思う。
兄や姉のやっているスポーツを見て弟や妹が始めるという機会は多々あるし、兄や姉よりも才能がある時もあるだろう。
勝敗にこだわり過ぎたり、結果重視にすると家庭に新たないざこざを作ってしまうことになりかねない。
スポーツで心身の育成をしたいのに、逆に絆を壊す可能性を作ってしまう。
この作品は、1つのスポーツを通して本当に大切なことを教える必要があると教えてくれる作品である。



ロンゲスト・ヤード

監督:ピーター・シーガル
出演:アダム・サンドラー、クリス・ロック、バート・レイノルズ他
2005年 アメリカ映画

“リメイクならではの良さ”
アメフト映画の不朽の名作“ロンゲスト・ヤード”をピーター・シーガル監督がリメイクした作品。
1970年代の話を21世紀になった今の話にし、その当時の人種差別的な話を外し、
今のテイストでオリジナルを壊さず、エピソードも入れつつ、本当にリメイクの良さが伝わってきた。
キャスティングもMTV制作ならではのラインナップ。
Nellyなどのラッパーやボブ・サップなどのレスラー、本当のアメフト選手などが
主演のアダム・サンドラーを支えている。
僕はスポーツ映画に本物のアスリートを起用するのに大賛成の人間である。
いきなりプレイに本物感を表現出来るからだ。
アスリート達とミュージシャンと俳優が1つになって作った作品は、テンポも良いし、
本物感たっぷりでエンターテイメントしている。
さらに、ただのリメイクでなく、今の文化をしっかり入れたことで、
“昔の話すぎてよい話なんだけど体験しづらいな…”という他人事にならず、
すんなりとストーリーに入らせ、VFXを上手く使っているところがなんともニクイ。
ロンゲスト・ヤードはまず新しいリメイク版を見てオリジナルを見ると、
両方とも新鮮に見ることが出来て良いだろう。
年をとった人間が昔の話として出しても伝わりづらいが、今の話に置き換えたら伝わりやすいこともたくさんある。
“リメイクならではの良さ”を最大限に活かした素晴らしい作品です。



Mr.ウッドコック-史上最悪の体育教師-

監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、ショーン・ウィリアム・スコット他
2007年 アメリカ映画

“トラウマ”
コメディ映画なのに僕は全く笑えなかった“Mr.ウッドコック-史上最悪の体育教師-”
その理由は面白くなかったからではない。
ストーリーは面白い。面白いのだが、僕はシリアスに考えて見てしまった。
ストーリーは、体育教師の数人の生徒に対する嫌がらせ的授業のシーンから始まる。
少しデブで運動神経の悪い子や喘息で運動が苦手な子に何かと文句をつけ、
皆の前で罰として走らせたり、パンツ1枚で懸垂をさせたりなどしてしごいていく。
その中の1人がその後頑張って自己啓発本の作家として大成する。
都会に出て作家をやっていた彼は、父親を亡くしていて、ある日田舎に帰ると、
自宅にあの時の体育教師が母の婚約者としているではないか!
青年はその教師が“トラウマ”になっていたので、家から追い出そうとあの手この手を考える。
結果は見てもらってのお楽しみという感じなのだが、僕は子供にスポーツを広めていく仕事もしているので、
本当に身につまされるような思いで見ていた。
子供のスポーツのイベントに行くと親が我が子に罵声を浴びせている時がある。
その子なりに頑張っているのに、他人と並べて我が子に怒りをぶつけている姿を見ていると、
この作品の青年のように“トラウマ”となり、スポーツ自体を嫌いになってしまいかねないと思う。
子供のスポーツを応援しているつもりが、逆にあだとなってしまう。
子供にスポーツを教えている人、そして我が子のスポーツを応援している人、
是非一度この作品を見て、自分が正しいか胸に手をあてて考えてみてください。



クール・ランニング

監督:ジョン・タートルトーブ
出演:レオン、ダグ・E・ダグ、ラウル・D・ルイス他
1993年 アメリカ映画

“未知へのトライ”
雪を見たことも無いジャマイカの若者達が冬のオリンピック出場を目指して
ボブスレーに挑戦する姿を描いたコメディ作品“クール・ランニング”
陸上で活躍していた男がオリンピック予選でたまたまこけてしまい、オリンピック出場を断念しなくてはならなかった。
父もオリンピック選手で、アメリカ人から体力をみこまれてボブスレーにスカウトされたことがあったことを知り、
そのアメリカ人を訪ねる。
元々BOX CARTも得意だったのでオリンピックに出場したいがために仲間を探し始める。
雪を見たことも無いジャマイカ人にとって、ボブスレーという競技自体も未知なものだ。
僕も昔アメリカのサーフィン雑誌で“スノーサーフィン”の写真と記事を見て、
サーフボードを持ってゲレンデに行ったことがある。
今で言うスノーボードのことだったのだが、当時はまったく情報が無く、とにかくトライしたかっただけだった。
今思えばクール・ランニングに出てくる4人と変わらない。
格好も変だったと思うし、少し恥ずかしく笑える部分もあるが、楽しかった日々を覚えている。
未知へのトライは充実感も楽しさも与えてくれる。
全編にレゲエがかかっているのだが、そのミスマッチもワクワクさせる。
楽しみながら挑戦している姿こそスポーツの真の姿だと思う。
この作品を通してスポーツの真髄を見て欲しいと思います。



ミリオンダラー・ベイビー

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン他
2004年 アメリカ映画

“尊厳のある生き方”
クリント・イーストウッド監督のボクシング映画“ミリオンダラー・ベイビー”
この作品はボクシングを通した人生の名言がたくさん出てくる。
“ボクシングは相手の尊厳をやっつけることだ”とか“相手の逆をやらなくてはならない”など、
ボクシングを通して人生を教えてくれるこの作品は、イーストウッドらしいメッセージ性の強い作品だ。
その中でも特に考えさせられるテーマは、“尊厳のある生き方”についてである。
タイトルマッチを完全に勝てると思えるまで試合を先送りにするか、チャンスがあるならチャレンジするか?
どちらも正しい選択である。
トレーナー達は選手を守り、将来生きていける為の道を残そうとし、ついつい安心出来るまでは試合に出したがらない。
しかしボクサーは死を覚悟してでもチャレンジしたいと思っている。
その結果、負けてボクサーとして生きれなかった時、何を求めるのか?というテーマである。
“死んでいるみたいに生きたくない”そんな人間の生きる道はどうすればいいのかを本当に考えさせられる。
「夢をもてなくなった人間は人間であるのか?」そんな重いテーマを考えるきっかけになる作品です。
“人生の選択”すべてが正解であるが、結果失敗になることがある。
そんな時、僕ならどうするのだろう。
人生を見つめ直すスポーツ映画として一押しの作品です。



ロンゲスト・ヤード

監督:ロバート・アルドリッチ
出演:バート・レイノルズ、エディ・アルバート、マイケル・コンラッド他
1974年 アメリカ映画

“支配と誇り”
看守と囚人達のアメフトチームが自分達の誇りをかけて試合を行う様子を描いた“ロンゲスト・ヤード”
1人のアメフト好きの所長が看守達のアメフトチームを持っていた。
そのチームのコーチにさせる為、元プロのアメフト選手を自分の刑務所に囚人として呼び寄せる。
コーチを断ったその男にひどいことをする看守達。
そんな中、シーズン初めの試合を八百長試合にするようその男に言い、囚人達のアメフトチームを作った。
正々堂々、勝利を求めチーム一丸となっていく囚人達。
所長の支配に耐え切れず人間として扱ってもらえない男達の意地だった。
そしてついにゲームの日がやってくる。
八百長試合にしてしまうか?
それで少しは仲間を人間的に扱ってもらおうと思っていたが、もっと必要なことがあった。
それは人間としての誇りだ。
途中心は揺れ動くが、誇りを求め、勝利に向かって走り出す。
結果は作品を見て楽しんでもらいたいのだが、この作品を通して、
無意味でエゴな支配は反発を生むだけで、何もそこからは生み出されないことを教えてくれる。
暴力や脱走でなく、スポーツを通して“誇り”を持つことは大変良いことだと思う。
少なくとも皆自分に誇りを持って生きている。
しかし、支配を考えている権力者を前にすると、その誇りを捨ててしまうこともある。
しかし、そこからは何も生まれないのだ。
親が子供にスポーツをさせている時、熱くなって怒る人がいるが、そこからは何も生まれない。
誇りを持ちながらスポーツを行える環境を作ることの大切さを教えられました。



ファンキー・モンキー

監督:ハリー・バジル
出演:マシュー・モディーン、セス・アドキンス他
2004年 アメリカ映画

“アメリカの子供達”
夏休みや冬休みに“ドラえもんや“クレヨンしんちゃん”みたいなアニメ映画で
子供達向けに笑いながら道徳を教えていく日本の風習がある。
アメリカではまさにこんな作品で子供達に友達の大切さなどを教えているのだろうと
感じさせられた作品がこの“ファンキー・モンキー”である。
兵器として育てられたチンパンジーと訓練士が組織から逃亡し、たどり着いた街で、
秘密を暴く為、様々なことをする中で、アメフトをやりたい少年と出会い友達になり、
彼らの力と勇気と正義で悪と戦うというまさに“ドラえもん”などのテーマと同じような展開である。
その中に、アメフトやチア、FMXやスケートボードなどアメリカンスポーツが入り込み、
“ホーム・アローン”的なドタバタとアメリカンジョークという、アメリカの子供達が好きそうなものを詰め込んでいる。
アメリカの子供達は小さい頃からこのような映画を家族で観に行くから、スポーツに憧れを持つようになるのだろう。
もちろん、プロのアスリート達の活躍やドキュメントを見せることも大切だと思うが、
子供心に親しみやすく、楽しい形でスポーツを見せ、憧れを持たせることも大事だと僕は思っている。
幼い子供を持っている親が、子供と一緒にこのような作品を
「友達を大事にするんだよ」などと話しながら見るという習慣が出来れば、
日本でのスポーツ映画の必要性がもっと広がるのかもしれない。



燃えよ!ピンポン

監督:ロバート・ベン・ガラント
出演:ダン・フォグラー、クリストファー・ウォーケン他
2007年 アメリカ映画

“過去の自分を越える為に”
ソウルオリンピックに期待の中、出場したのだが、メダルを獲れず落ちぶれた1人の卓球選手。
田舎のバーで卓球ショーを見せ生活をしていた彼が、再び裏社会の卓球の世界にプレイヤーとして戻ってくる。
シリアスな表現をするとこんな感じだが、この“燃えよ!ピンポン”は完全なコメディ卓球ムービーです。
アメリカのコメディショー的な作りで展開が早くて飽きさせない。
そんな笑いの中にも“過去の栄光と挫折”を越える為、徐々に闘志を取り戻していく1人の男を描いている。
きっと誰もが自分にとって栄光の時期があると思う。
「あの頃の自分は輝いていた」とか「高校の頃は良かったなぁ」なんて
昔にひたって立ち止まっている人も結構たくさんいると思う。
人は立ち止まっていても何も始まらない。自分を前に向かせる為の何かを見つけ、
一歩でも未来に向けて進んでいくことで、また輝ける自分になれるものである。
そんな力のあるテーマを笑いに包んで伝えるこの作品は、いかにもアメリカっぽい作りにしているのに、
“卓球”を取り上げているので、さらに笑える。
しかし何故アメリカ人は日本というと相撲取りにしてしまったり、変なイメージを持っているのだろうか?
国際的な国だと思うが、日本の文化ってアメリカ人には理解してもらえていないんだな…とまた思い知らされてしまった。



ハスラー

監督:ロバート・ロッセン
出演:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリーソン他
1961年 アメリカ映画

“勝負の世界”
ポール・ニューマン主演のビリヤードの賭け師“ハスラー”の世界を描いた不朽の名作“ハスラー”
世界最大のスポーツネットワーク“ESPN”もスポーツとして扱っているし、
僕の中では一定のルールの中で体を使って勝負するものをスポーツとして考えているので、
ビリヤードもスポーツ映画としてとらえています。
小さなプール(ビリヤード場)を渡り歩き、ハスラーとして生きる男と、マネージャーと称してその機会を作る男。
しかし、プレイヤーはただの賭けではなくキューとの一体感、ゲームのスリル、そして自分の技術など、
僕が言うならば、“スポーツとしてのビリヤード”、
勝負や相手、そしてダメな自分への挑戦としてビリヤードに向かっていく。
愛する女性と、自分のハスラーとしての生き方に悩み、金を稼ぐだけでない“本当の勝負”に魅せられていく。
「勝負の世界」はただ勝てば良いのではない。
相手を認め、相手の凄さを知り、己を磨くことにある。
「勝負の世界」を知っていくと人生において相手のことを考えるようになる。
この作品では、そんな勝負師の生き様を描いている。
ただ勝ち負けで勝負を考えている人に、昔から語り継がれているこの作品を見て、
自分自身を見つめなおして欲しいものである。



ウォーターボーイ

監督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラー、キャシー・ベイツ他
1998年 アメリカ映画

“己に勝つこと”
過保護に育てられたマザコン31歳の給水係がアメフトの選手になり、
自分の人生を開花させていくコメディ作品“ウォーターボーイ”
アダム・サンドラー演じるアメフトの給水係は、31歳になっても友達もいなく、
チームからはいじめられ、チームの和を乱すということで辞めさせられる。
給水係をしたくて他のアメフトチームに仕事を求めて行くと、そこでもバカにされ、
怒りで選手にタックルするとそのパワーで簡単にその選手をなぎ倒してしまった。
その破壊力に驚いた監督は、彼を選手として起用する。
大学のチームなので31歳にして彼は大学生に。
マザコンで高校にも行かず母と2人きりの世界だった彼にとって、大学生活を送り、
チームでプレイすることにより社会への扉が開いた。
母との世界は、自分のことを守ってはくれるが、何の広がりも無い。
世間に出て行くことは、大変なことはあっても頑張れば認めてもらえ友達も出来る。
「己に勝つこと」それは何か一歩踏み出さないと始まらないのである。
自分の世界に閉じこもっていると、嫌なことは少ないかもしれないが、未来は広がらない。
勇気を出して新しい世界に飛び出そう。そんな力を、笑いの中で教えてくれる作品です。
アメフト映画はシリアスなものも多いのですが、この“ウォーターボーイ”はとにかく笑え、楽しさの中パワーをくれる1本です。



クライムチアーズ

監督:フランシーン・マクドゥガル
出演:ミーナ・スヴァーリ、マーリー・シェルトン他
2001年 アメリカ映画

“アメリカの学校スポーツ”
高校のチアリーダーとアメフト部のQBが付き合い、子供を作ってしまい、家を出て2人の生活が始まる。
そんな2人を応援するチアの仲間達。しかし、お金などに困って銀行強盗?
そんなアメリカンハチャメチャ青春ストーリー“クライムチアーズ”
内容は青春ドタバタムービーなのだが、アメリカの映画では
チアリーダーのキャプテンとアメリカンフットボール部のクォーターバックがヒロイン、ヒーローになる作品がやたらと多い。
実際の高校や大学でもチアリーダーやアメフト部のメンバーが学校行事や町の行事によく出演し、
校内の生徒やOB、町の住人によく知られ、人気者になっている。
アメリカの学校スポーツは学校や地域が本当にバックアップしている。
日本だと全国大会に出場すると、学校の校舎や壁に大きな横断幕をかけていても
「あっそうなんだ」くらいな感じで、特別何があるわけでは無い。
アメリカだと激励パーティや地元で寄付金を集めたり、地域と一体化してやっているところが多いように思える。
選手達も地元が応援してくれていると思うと、誇りを持ち、マナーなどもきちっとするし、
何しろ負けて地元に帰りたくないと思い、練習にも身を入れて頑張るものである。
日本でももっと学校スポーツを地域が入って応援する風習が出来たらよいと思います。



ドラッグストア・ガール

監督:本木克英
出演:田中麗奈、柄本明、三宅裕司他
2003年 日本映画

“THIS IS オヤジパワー”
薬学部の女子大生が、二股をかけられていたことを知り、逃げ出し、
偶然たどり着いた町の大きなドラッグストアのバイトとなる。
このドラッグストアの進出で困る薬屋やパン屋のオヤジ達が団結し、反抗しようとするが、
女子大生の可愛さに負け、彼女のやっていたラクロスを自分達もやろうと決意し、チームを作り立ち上がる。
こんな急展開のストーリーを描いた“ドラッグストア・ガール”
宮藤官九郎の脚本ということもあり、頑張っている姿が面白おかしく描かれている。
ラクロスは女の子のスポーツと思っていた僕も、男子のラクロスの存在を初めてこの映画で知った。
プロテクターにヘルメット、コンタクトもすごくあって激しいスポーツである。
この作品で思うことは“オヤジパワー”の凄さである。
オヤジがスポーツを再び始める時、動機はさまざまである。
実際、いろいろなスポーツを始めているオヤジ達も“会社で若い子に年寄り的な目で見られているから”
“健康の為”“若い頃、金が無くて出来なかったから”“インストラクターの若い女の子が可愛いから”などなど。
しかし、実際やっている人達は本当に楽しそうで、何より元気である。
スポーツを通じて新しいコミュニティを作り上げて、1つの目標に向かっている。
スポーツをしている“オヤジパワー”。
家でゴロゴロしているお父さん、この作品を見て、もう一度スポーツにトライしてみましょう!!



ベスト・キッド

監督:ハラルド・ズワルト
出演:ジェイデン・スミス、ジャッキー・チェン、タラジ・P・ヘンソン他
2010年 アメリカ映画

“絶望の後に”
ウィル・スミスの息子とジャッキー・チェンがリメイクしたあの空手映画の決定版“ベスト・キッド”
初めに言っておくと、“空手”映画ではなく“カンフー”の映画に変わっていて、舞台も中国になっている。
設定は小学生と低年齢化し、不良グループ的なリーダーはヒロインの元彼から親同士が知り合いの関係になったりと
テイストだけは残しているが、全く違う映画と言って良いだろう。
もし過去のベスト・キッドと比較して見たいのなら“ベスト・キッド”の1だけ見ると比べて楽しむことが出来ます。
共通の考え方は、“師弟”のつながりくらいなもので、ストーリーは完全に現代になっている。
今の人達は、こちらの“ベスト・キッド”の方が見やすいかも?
カンフーは生活の中にあり、自分を磨くことがカンフーを磨くことであると、武道の考え方の基本を教えてくれる。
どん底に落ちている時、立ち上がる力は自分自身の中にあることをメインテーマにしているのだが、
体を強くするだけでなく、心を強くする工程を丁寧に描いている。
いじめられている子がいたら、一度親子で一緒にこの作品を見ると良いでしょう。
強さというのは、やみくもにケンカをすることでなく、心を強くすること、
友達を大事にすることなどを教えてくれて、本当に強い子に育てられるはずです。



少林少女

監督:本広克行
出演:柴咲コウ、仲村トオル、キティ・チャン他
2008年 日本映画

“技より心”
柴咲コウ主演、仲村トオル、江口洋介、岡村隆史など豪華キャストで、
少林拳を修行した少女が大学のラクロスチームを通して、
少林拳の心を体得していくエンターテイメントムービー“少林少女”
はっきり言ってしまうと“少林サッカー”のラクロス版+死亡遊戯という感じだろうか…。
ダイナミックなのに、細かいCGと、やたらと動き普段見れないカメラワークで目には楽しい作品だが、
スポーツ映画として何を教えてくれるのだろう?と思っていた。
途中からチームワークの大切さ、相手を信じること、武道は戦うものではなく守ることなどを伝え始めると、
最後は“少林の教え”が人の心を救う的展開になり、後半のたたみかけてくる感じは面白かった。
個人スポーツをやっている人は、自分の価値観が全てになってしまう傾向がある。
チームプレイをすることにより“技や強さ”よりも“仲間を信頼し皆でプレイする”ことの大切さを知ることが出来る。
“技”より“心”を磨くことが大切なのである。
堅い映画は苦手なんだけど…という人にオススメの作品である。
単純に痛快で“和”の心を学べるはずです。



がんばっていきまっしょい

監督:磯村一路
出演:田中麗奈、清水真実、葵若菜他
1998年 日本映画

“負ける事”
田中麗奈主演の高校生ボート部の奮闘を描いた作品“がんばっていきまっしょい”
四国の田舎の女子高生が瀬戸内で海の上をダイナミックに走るボートを見て女子ボート部を作ることを決意。
部員が全然集まらなかったので友達を今年の新人戦までという期間限定で部員にしてスタートした。
新人戦の結果は最下位。
付き合いでボートをやっていた女の子達も最下位だったことが悔しくて、
次の年も頑張ることを決め必死に練習を始める。
“負ける事の悔しさ”この感情は真剣に取り組んだり、仲間と共に頑張るから生まれるものだと思う。
きっとスクリーンの中の彼女達が真剣にボートと向かい合わなければ、新人戦が終わった時点で終了だったと思う。
スポーツを始める時、誰もが真剣なわけではない。
「たまたま友達がやっていたから」「少しは健康になりたいから」「女の子にモテそうだから」
理由はいろいろ考えられるが、動機は大したことないことがほとんどである。
しかし、少しでも上手になりたい、1勝だけでもしたい。
この気持ちが生まれてくると、徐々にそのスポーツとの関わり方が変化してくるものだ。
何か1つは若い頃に真剣に取り組んで欲しい。
きっとそれは自分自身の大きな財産になると思うから…。
そんな気持ちを思い返させてくれる作品です。



ザ・エージェント

監督:キャメロン・クロウ
出演:トム・クルーズ、キューバ・グッディング・Jr、レニー・ゼルウィガー他
1996年 アメリカ映画

“スポーツビジネス”
トム・クルーズ主演のスポーツエージェントを描いた作品“ザ・エージェント”
僕もスポーツビジネスをしている人間の1人として、すごく真剣に見ていた。
映画としてでなく、仕事のやり方まで考えさせられた。
マネーゲームとしてやっている大手事務所の一員だったトム・クルーズ演じるジェリー。
選手とエージェントの心で通じる関係を訴えると会社をクビになってしまった。
選手は1人のアメフト選手しかついてこなくなり、理想に向けて頑張るが、なかなか上手くいかない。
理想と現実の間、大切なものを守り抜く強さが薄らぐ時もある。
選手達にハートで戦う大切さを伝えること。スター選手であっても尊敬される人間に育てていくこと。
本当のスポーツビジネスの大事な部分を表現している。
人によっては確かに綺麗事に聞こえる人もいるだろう。
誰だって多くの金は欲しいし、保障もしてもらいたい。
でもそのスポーツが好きだという気持ちを持ち続ける大切さ、
人を愛する気持ちを伝えることが出来るアスリートを育てなくては、スポーツビジネスそのものの意味が無い。
今やっている僕の仕事を改めて考えさせられる作品だった。
理想を求め、初心を忘れず頑張ろうという勇気を与えてくれた。
選手とサポートする人間との一体感、そして共に掲げる理想。
トップアスリートの未来を創るために必要なことを教えてくれるとても意味のある作品です。
スポーツビジネスをする人には必ず見て欲しい1本です。



ゲーム・プラン

監督:アンディ・フィックマン
出演:ドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソン、マディソン・ぺティス他
2007年 アメリカ映画

“技術と精神”
技術では最高のクォーターバック“ジョン・キングマン”は、誰も信じず、自分のやりたいようにプレイをしていた。
絶対的な彼のプレイでチームはついていくしかなかった。
そんな時、別れた妻との間に出来ていた娘が登場する。
前妻と別れ、一人暮らしをしていたジョン。
しかし前妻のことが忘れられず、娘の面倒を見ることにする。
娘はおてんばでバレエ大好き、スポーツも好きな子供で、アメフトの練習も見に行くし、
スター選手である父もバレエに巻き込んでいく。
父と娘の冷ややかな関係も、やがてお互いを信頼するようになり始める。
娘を大切にし始めると、徐々にチームのことも信頼するようになったジョン。
孤独だったスター選手が、本当のチームのリーダーになっていく。
この作品は、真のスター選手は技術だけでなく精神の大きさも大切だということを教えてくれる。
スポーツは“心技体”全てで行うものである。
その全てを手に入れた時、一流となれるのだ。
「“ノー”と言わない」という台詞がこの作品にやたらと出てくる。
しかし、前半と後半では全く意味の違う言葉となっている。
前半は孤独な人間がスター選手にかじりつく為の台詞であり、
後半はチームの為、娘の為、仲間の為に使われている台詞である。
同じ台詞が人間の成長でこれほどまでに持つ意味が変わるものなんだということをすごく上手に感じさせる作品。
バレエとアメフトのシーンのカットバックも非常に面白い。
単純に素晴らしいスポーツエンターテイメント作品である。



ベスト・キッド2

監督:ジョン・G・アヴィルドセン
出演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、タムリン・トミタ他
1986年 アメリカ映画

“間違いだらけの日本”
前作のカラテ大会の終了後、ダニエルが賞賛の中会場から出てくるところから始まる“ベスト・キッド2”
この作品は前作とセットにして2作一気に見ると面白い。
ダニエルの師であるミヤギの父が死にそうであるという手紙をもらい、
ミヤギとダニエルはミヤギの故郷沖縄にやってくる。
ここからがメチャクチャである。
多分、アメリカのどこかの島にオープンセットが組まれ、日系のエキストラを使っていると思われるのだが、
小さな子供の日本語までも外人風日本語。
モンペ姿だし、縁側で靴を履いているし、カタカナはやたらとカメラとテレビ。
しかも基地もあり、車が今の日本と同じ車線を走っているということは返還後の設定だと思われるが、
ボロボロのアメ車だらけ。
こんな日本は見たことが無い。
そんなにメチャクチャな間違いだらけの日本を作っているのに、“空手”の精神的世界はきちっと伝えている。
僕は、この文章でこの映画を否定しているのではない。
それより、“スポーツが持つ精神”をこれほどまでにきちんと伝えようとしていることに驚いているのだ。
スポーツは世界に広がっていく。例えば、柔道の教えが世界中に広がっているように…。
冒頭でハエを箸でつかもうとするシーンがある。
これは宮本武蔵が常に心を穏やかにし、“無の世界”を作った話であるが、日本人でも知らない人は多いはず。
しかし、そんなエピソードを映画に取り入れていることを考えると、
制作者達が“日本の武道”の精神を大切にしていることが見えてくる。
間違いだらけの日本の中で、正しい“空手の精神”を伝えようとしているベスト・キッド2。
僕達も日本の武道をもう一度見直すべきだ。



マラソン

監督:チョン・ユンチョル
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン他
2005年 韓国映画

“自閉症と家族”
自閉症の1人の青年と家族、そして夢を失った元マラソンの韓国代表ランナーを中心に
描いている作品“マラソン”
シマウマとジャージャー麺とチョコパイが好きで、興味の無い事は一切気にしない青年。
走ることも大好きで10kmロードの市民大会で3位になったことが家族にとっても自慢だった。
あきらめない人間にするため、そして普通の人と同じだと思いたいがため、
彼をマラソンに挑戦させることにした母親。
その時、2人の前に現れた人物は韓国の元有名マラソンランナーだった。
彼は今落ちぶれた生活をしていて、今回も問題を起こし2000時間の社会奉仕で償いをするため、
養護学校に来ていたのだ。
そんなランナーにコーチを頼むことになる。
最初はしぶしぶやっていたのだが、青年のあきらめない心、純粋な気持ちを少しずつ感じ、
本気で教え始める。
家族の絆も壊れかけた頃、マラソン大会に青年は出場する。
自閉症の人達との距離感は少し難しい気がしていた。
施設の人に“スポーツの大会を見に行きませんか?”と誘ったことがあったのだが、
「興奮する可能性があるのですみません」と言われたことがある。
中途半端な善意は困らせることがあるのだと反省した。
それ以来時々施設を訪ね、交流することがある。
普通に挨拶し、話していると、徐々に心を開いてくれる。
ちょっと間違って覚えている人もいる。
水球選手を連れて行って、彼をバレーボールの選手と覚えてしまった彼女は、
彼が来ると必ずアタックの真似で歓迎してくれる。
でも、本当に笑顔で、忘れないで、いつも応援してくれる。
僕達はもっとそばで共に暮らす空間を作ることが必要だと思う。



僕はラジオ

監督:マイク・トーリン
出演:キューバ・グッディング・Jr、エド・ハリス他
2003年 アメリカ映画

“知的障害者とスポーツ”
1976年、アメリカ・サウスカロライナのハナ高校アメフト部の“コーチ・ジョーンズ”と
知的障害を持つ通称“ラジオ”の実話を映画化した作品“僕はラジオ”
当時アメリカ南部の田舎町の高校は知的障害者を受け入れてなく、
施設に入るか自宅で生活するしか、彼らの生きる道は無かった。
自宅で生活していたラジオは、病院で働く母のいない時は高校の周りを歩き、アメフトを見るのが日課だった。
ある日、アメフト部の高校生がラジオをいじめているのを“コーチ・ジョーンズ”が発見し助け、ラジオに詫びる。
無口なラジオにチームの練習の手伝いをしないかと誘うところから2人の友情は始まる。
学校に出入りさせていると、ラジオは少しずつ明るくなり、生徒や職員達と交流を始めるようになる。
いつの間にか人気者になってしまったラジオ。
しかし、大人達の中には知的障害者が自分の子供と同じ学校にいることを恐怖だと思ったり、
コーチの慈善には何かがあると煙たがる人達もいる。
そんな中でも友情を育もうとする2人。そしてコーチの家族の葛藤が静かに描かれている。
ラジオは今ではハナ高校の名誉コーチとして町の人気者になっているそうだ。
ラジオと町の人のふれあいのおかげで、この町には知的障害者と壁が無く仲良くやっているそうだ。
僕も時々アスリートと一緒に知的障害者の施設を訪問している。
その時思うのは、哀れみなどでは無い。
彼達のストレートな応援が、アスリート達の力になっていることがわかるからである。
選手達の中から、自主的に施設に行く者も出てきた。
アスリート達は彼らが与えてくれるパワーの存在を知っているからだ。
知的障害者が純粋にスポーツに与えるパワーを皆にも知ってもらいたい。



YAMAKASI ヤマカシ

監督:アリエル・ゼイトゥン
出演:チョウ・ベル・ディン、ウイリアムス・ベル、マリク・ディウフ他
2001年 フランス映画

“フリーランニングを世界に知らせた作品”
走る、跳ぶ、登るなど体1つでランニングをパフォーマンスにする“フリーランニング”
発祥の地フランスでは“パルクール”と呼んでいるらしいが、
その存在を世界中に伝えた作品がこの“YAMAKASI”である。
B-BOYの存在を“フラッシュダンス”や“WILD STYLE”が世界中に知らしめたように、
新しいスポーツが1本の映画で世界中に広まることがある。
元々、アフリカの大地で行われていたものを、フランスの体育教授がトレーニング法として確立した。
今では“Art of Motion”など世界中で大会も開催されている。
YAMAKASIは本当に存在しているグループで“Taxi2”などにも出演し、
そのパフォーマンス性も買われて作品となった。
作品の内容としては、体の弱い1人の少年が“YAMAKASI”ごっこで木から落ち、
心臓移植をしなくてはいけないことから始まる。
その少年を救う為に移植を決める談合の世界の医者達から金を奪い助けるというストレートなストーリーなのだが、
彼らのパフォーマンスだけであっという間にエンドロールになってしまう。
フリーランニングの魅力を最大限に引き出している映画だと思う。
さらに、権力に立ち向かい弱者を救うという世界中の誰もがすぐに分かるストーリーも良かったのだろう。
1本の映画を通してニュースポーツが世界に伝わるのは本当に素晴らしいことだと思う。
エンターテイメントアスリートの方法論の1つである。
ただのライディングビデオでは巻き込めないパワーがここに在る。
魅せたいアスリート達は、この作品を見てスポーツ映画が持つパワーを感じてほしい。



ガチ☆ボーイ

監督:小泉徳宏
出演:佐藤隆太、サエコ、向井理他
2007年 日本映画

“知的障害者とスポーツ”
突然の事故で、事故以前の記憶は残っているのだが、
それ以降の事は寝ると全て失ってしまうという障害を負った大学生が、プロレス同好会に入って、
自分自身で生きている証をつかもうと必死に闘う姿を描いた作品“ガチ☆ボーイ”
この作品で強烈に残っている言葉がある。
「寝ると全て忘れるなんて死んでいるようなものだ。でも体のあざや痛みがあると生きているんだって実感できる」
記憶という障害はあっても、体は少しずつ成長するし、体自体が記憶していくこともいっぱいある。
毎日がリセットされるということは、不安の中、生活していることと同じであろう。
“障害者だからスポーツはだめ”と決め付けてしまうのは良くないこと。
このような視点で考えたことがなかった。
知的障害者に何かを伝える時、恐る恐る接してしまうことがある。
もちろん気を使わなくてはいけないこともたくさんあると思うが、差別してはいけない。
体でいろいろ感じてもらうことも大切だということに気付かされた。
そのためにもカリキュラムをしっかり考え、問題点はたくさんあると思うが、
一緒に楽しめる環境を作らなくてはいけないだろう。
障害を持つ人に対し、壊れ物に触れるように接していても未来が無い。
もっと一体化出来ることを考えなくてはならない。
障害を持つ子供を持つ親に、一度見てもらいたい作品である。



武士道シックスティーン

監督:古厩智之
出演:成海璃子、北乃きい、石黒英雄他
2010年 日本映画

“「道」の教え”
女子高剣道部の2人を成海璃子と北乃きいが好演する青春映画“武士道シックスティーン”
全国中学剣道大会で優勝した子が、中学時代唯一負けた女の子がいた。
友達も作らず道場でひたすら剣の道と向かい合った彼女にとって、中学時代の一敗が忘れられず、
同じ高校に入り、その女の子を負かすことをただ考えていた。
しかし、当の本人は、剣道を部活の一つとして捉え、友達と楽しい学園生活を送る中で、
剣道も楽しんでいるだけだった。
友達も作らず剣の道だけを突き詰める子と、友達と楽しみながら楽しい剣道を求める子という
正反対の方向の道を歩む2人。
同じ剣道部でまったく逆の道を歩む2人も徐々にお互いに惹かれ、剣の道を探り始める。
中学・高校の部活は、単なるスポーツでなく、社会性や“道”を知る為の重要な要素である。
スポーツを通して目的を持ち、友情を知り、相手を応援する心、自信、平常心の大切さなどを知ること。
それは、自分の“道”を作ることである。
この作品では、2人の女子高生、そして先生や仲間、先輩達を通して、
押し付ける訳でなく、すーっとそんなことを気付かせてくれます。
1つの道を極めようとその人なりに努力をすること。それは時に勝ち負けを超越することもある。
そんな“道”の作り方を教えてくれる1本です。
部活やスポーツに行き詰っている人、その父母が子供に見せるにはオススメの作品です。



タイタンズを忘れない

監督:ボアズ・イェーキン
出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・ハースト、ウィル・パットン他
2000年 アメリカ映画

“人種の壁”
70年代初頭公民権法が施行され、法律上は白人も黒人もすべての人種が平等とされたが、
実際は差別が続いていた。
バージニア州も教育改革として白人と黒人を同じ高校に通えるようにした。
この作品はバージニア州立T.C.ウィリアムズ高校が初めて白人黒人混合校になった年に生まれた
アメリカンフットボールチームの奇跡の実話を映画化したものである。
最初はチームも黒人と白人が二分化され、2人のコーチも交わることさえなかった。
しかし、南北戦争の決戦地“ゲティスバーグ”でお互いを知り、1つのチームになる努力を始めるようになる。
カリフォルニアなどの都市部では、既に白人も黒人も無い社会が出来つつあり、
そんな転校生がチームに入ってきたので、徐々に差別が無くなってきた。
チームは団結したものの、街の人々は人種差別を取り払うことが出来ず、チームへ向ける目も痛かった。
しかし、選手達の団結はそんな周囲の偏見もはね返し、勝ち進んでいくことで、
少しずつ差別が無くなっていく。
1つのスポーツを通し、自分達だけでなく、地域の人までも差別の無い世の中にしていく。
“政治の力”で叶わなかったことが、“スポーツの力”で叶えることが出来るということを証明した1つの事実が、
この作品に刻まれている。
“スポーツ”は何も語らずとも真剣に試合をし、生き様を見せることで、伝える力を持っている。
言葉だから伝わらないこともあるということ、言葉でないから伝わること。
そんなスポーツが創り出す奇跡をこの作品は教えてくれます。



チアーズ!2

監督:デイモン・サントステファーノ
出演:アン・ジャッドソン=イェガー、ブリー・ターナー、フォーン・A・チェンバーズ他
2004年 アメリカ映画

“チアの真髄”
アメフトとチアで全国に名を馳せている大学に、チアリーダーになりたくて入学してくる1人の少女。
彼女は名門チアリーディング部に合格し入部するが、特別意識や階級を勝手に作っている実態にがっかりする。
アメフト部は応援するが、マイナースポーツは応援しない。キャプテンの奴隷のように凝り固まった考え方の応援。
アメフトやバスケ以外の人間は下に見て、自分達の大会での優勝のことしか考えない。
彼女は、そんな名門チア部を辞めて、ダンサーや演劇など学校の中で追いやられた人達とチームを組み、
メジャー、マイナー関係なく、全ての学生達を応援するチームを組む。
アクロバットになり、今や1つのスポーツとして発展しているチア。
しかし真髄は先頭に立って応援をリードし、チームに勝利や喜び、勇気を贈り、応援者を一体にさせることだと思う。
注目されるとついつい「自分達がすごいんだ」と勘違いしてしまう人がいる。
何事も真髄を追求していかないと、道から外れていってしまう。
一度間違いを起こすと、全てが見えなくなってしまうものだ。
「応援の力」は相手がいてこそである。自分の身勝手なもののためではない。
この作品は、全ての人を応援する楽しさを全面に押し出してくる爽やかな青春グラフィティである。
友情、団結、夢への挑戦…青春映画に不可欠なものが全て詰まった“チアーズ!2”
どんな人も元気にしてくれる1本です。



シムソンズ

監督:佐藤祐市
出演:加藤ローサ、藤井美菜、高橋真唯他
2006年 日本映画

“何かを見つける力”
北海道の田舎の女子高校生達がカーリングを通して成長していく姿を映画化した“シムソンズ”。
しかもベースストーリーは実際冬季オリンピックに出場したメンバーを描いているというのだから、
前々から見てみたい作品だった。
チーム青森の活躍で“カーリング”というスポーツが徐々にメジャーになってきた。
僕もオリンピックの中継を見て、カーリングというスポーツに興味を持った。
選手達の試合中の声やコーチの声まで放送されたので、選手の心理やチームの考えも伝わり、
解説の人が実に分かりやすくカーリングの面白さを伝えてくれる。
“氷上のチェス”と呼ばれるくらい心理戦であり、正確さを競うテクニックを必要とする面白いゲームスポーツだ。
カーリングを面白く見るには、選手達のキャラクターを知ると何倍もふくらむだろうと思い、オリンピックを見ていた。
映画“シムソンズ”では、4人の個性の違う田舎の女子高生を描いている。
昔トップ選手で、今はエリートチームに在籍せず殻に閉じこもっている子、誰とも話せず孤立している女の子、
町を出たくて勉強はするものの、明るい将来を描けない女の子、
そして思いつきで色々やるものの将来が見えず何をしていいのか分からない子。
そんな4人がカーリングを通し、ぶつかり、本音を語れる仲になり、オリンピックという夢を抱くようになる物語である。
友達と助け合い、自分に無い部分を補って、苦しみながらも1つの目標に向かうこと。
それが“何かを見つける力”である。
1人でただひたすら自分勝手に何かをやっていても、何かを身につけることは出来ない。
自分を成長させたい人に見てもらいたい作品です。



ピンポン

監督:曽利文彦
出演:窪塚洋介、ARATA、サム・リー、中村獅童他
2002年 日本映画

“頂点だけが感じる幸せな時間”
コミックでも注目され、窪塚洋介君が主役を演じ話題になった卓球映画“ピンポン”。
神奈川の卓球部と町の卓球場を舞台にした青春映画である。
幼い頃いじめられっこだった“スマイル”を守り、友達のいない彼に卓球を教えてあげ、
友情を育てていった“ペコ”。
同じ卓球場で、卓球だけに非常に熱を上げ有名校に入った“アクマ”。
アクマの学校には絶対的存在の“ドラゴン”がいて、誰もが彼には頭が上がらなかった。
そんな中、ペコはアクマに負け、アクマはスマイルに負ける。
ペコは卓球を辞めようとする。センスもあり、卓球を楽しんでいるペコは、自分達の希望だった。
ペコはもう一度自分を鍛え、アクマとの勝負に挑むことにする。
1つのスポーツで頂点を目指し、同じレベルの戦いをする者同士だけが味わうことの出来る
“幸せな時間”があるという。
プレイとプレイをぶつけ合うだけで、何も語らなくてもお互いが会話している感覚になるのだそうだ。
トップのテニスプレイヤーや、サッカーの1対1や、マラソンでトップを並走している時に感じる人達がいるらしい。
僕はそんな感覚を味わったことが無いが、スポーツを撮影している時、
対象者の性格が、何も語ってくれなくても見えたような気がしたり、
何か会話をしているような気がする時がごくまれにある。
そんな不思議な感覚を再び体感できるような気持ちにさせてくれる作品が、この“ピンポン”であった。
不思議な気持ち良さを与えてくれる1本です。



しあわせの隠れ場所

監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:サンドラ・ブロック、クィントン・アーロン、ティム・マッグロウ他
2009年 アメリカ映画

“家族の愛とは?チームの愛とは?”
多くの店を経営し、セレブな暮らしを送る白人家族が、
親に捨てられ1人で生きている黒人高校生を家族として迎え、
フットボールの選手として大学にまで入れてあげる
アメフトヒューマンストーリー“しあわせの隠れ場所”
黒人高校生“ビック・マイク”は出生届も出しておらず、スラムで生まれ育ち、
暴力事件の中、母親から引き離され、里子に行ってもなじめず
半そでのポロシャツ2枚だけで、体育館やコインランドリーなどに寝場所を求める
ホームレス高校生であった。
誰も信じることが出来ず、勉強も学ぶ意志が無く、典型的な貧しい黒人生活を送っていた。
そんな時、彼は“SJ”という少年と出会う。
SJの母は、“ビック・マイク”を見て、自分の家に引き取り、育てることを思い立つ。
ビック・マイクは元々持っている運動能力を活かし、アメフトチームを連勝に導き、
学問をする意欲も持ち始める。
家族の愛とやすらげる空間は、1人の若者が生きる意欲を取り戻し、成長する原動力となったのである。
環境は人間にとって大切なもので、その人の人生に大きな影響を与えるものである。
ハングリー精神が無いと、人は勝負に勝てないことが多い。
しかし、その精神を活かし、自分を育成出来る環境も同時に必要なのだと僕は思う。
色々なチームに所属している選手達はたくさんいるが、
チームが選手達が育つ環境を作ってあげないと、心も体も技も育っていかないものである。
飼い殺しみたいな状態では、才能をつぶしてしまうことだってある。
そんなことをしっかり理解して、若いアスリート達と付き合っていかなくては…と
自分に言い聞かせるきっかけになる映画でした。
家族やチームの愛の大切さを教えてくれる1本です。



エクスプレス 負けざる男たち

監督:ゲイリー・フレダー
出演:ロブ・ブラウン、デニス・クエイド他
2008年 アメリカ映画

“スポーツが切り開いた平等”
大学アメリカンフットボールで活躍し、23歳で他界した
シラキュース大学のアーニー・デイビスを描いた“エクスプレス 負けざる男たち”
アーニーは貧しいながらも炭鉱で働く優しいおじいさんのもとで育てられる。
野球の世界では徐々に黒人も進出し、アメフトもプレイヤーとしては出てきているものの
どんなに良い成績を残しても、賞は獲得出来ないし、
差別主義のレフリーだと、故意のファールをされてもとってくれない。
南部に行くとホテルも泊まれず、客からもブーイングの嵐。
タッチダウンの瞬間は白人プレイヤーにボールを渡さないと
微妙な時は得点も出来ない。
これがスポーツなのか?と疑問を持ってしまう。
フェアプレイの精神などどこにも無い。
「敵はコートの外にいる」という台詞がずっしりと胸にきた。
アーニーはそれでもプレイをし続け、誰もが文句を言えない成績を残し、
アメフト界での人種差別を無くすきっかけを創り上げた。
今では、黒人無しのNFLのチームなんて存在しないであろう。
先人達の苦しみや悲しみの上に、この状態があるのだ。
平等なんて普通と思っているが、今でも小さな差別は存在する。
派閥であったり、出身校であったり…
アスリートはプレイで見せて、自分の地位を獲得していくしか無いのかもしれない。
誰もが認めるプレイをすることこそ、自分の環境を作ることにつながるのである。
“白人コーチと黒人プレイヤー”
コーチはアーニーを守るために試合に出ないことを勧める時がある。
しかし、アーニー達は試合の後もコーチが守ってくれることを信じてピッチに立つ。
解放なんて、そんな小さな、でも大きい信頼関係から始まっていくのかもしれないと思った。



グレイテスト・ゲーム

監督:ビル・パクストン
出演:シャイア・ラブーフ、スティーヴン・ディレイン、ピーター・ファース他
2005年 アメリカ映画

“アメリカとゴルフ”
100年近く前、全米コンテストで優勝した20歳のアマチュアゴルファーと、
プレイオフで最後まで戦ったイギリスの名プレイヤーを映画化したゴルフ映画“グレイテスト・ゲーム”
この頃は“紳士のスポーツ”として特殊階級のものとされていたゴルフ。
しかしこの米英の2人は庶民であった。
アメリカ人の若者はゴルフ場のそばで生活していたので、キャディで金を稼ぐことからゴルフを知り、
イギリスの名プレイヤーは、自分の家が、ゴルフ場を作る敷地内だったので
取り壊されることからゴルフと関わることになった。
最近は身分の差で偏見を持たれるスポーツは無いと思われるが、
身分の差で偏見を持つスポーツを果たして“紳士のスポーツ”と呼んでいいのか疑問である。
この作品はカメラアングルがとにかく面白い。
ゴルフ中継ではありえない玉を追っていく目線や、カップの下からの目線など
撮っている位置が非常に面白い。
ゴルフというスポーツが、何倍も面白くなってくる。
それぞれのスポーツに対して面白い目線というものがあるだろうが
そのスポーツをより分かりやすく見える目線にカメラがあることこそ、
最大にそのスポーツの面白さを撮れるアングルなのではないだろうか?
そんな当たり前だけど、時々忘れてしまうことを思い出させてくれる作品でもありました。



おっぱいバレー

監督:羽住英一郎
出演:綾瀬はるか、青木崇高、仲村トオル他
2008年 日本映画

“青春の新スタンダード”
はっきり言ってこのタイトルを見た時、ただのコメディだと思っていた。
中学生の部活は、元々小学校の頃から好きなスポーツが無い人にとって
入部の動機はいくつかしか無いものである。
仲の良い友達が入部した部か、もてそうな部に入るものである。
バンドにしろ、スポーツにしろ、もてたいという動機は、中学生にとって大きい。
やる気を失い、先輩にびくついていた中学生のバレー部員。
といっても、先輩のいじめで、バレーボールにろくに触らない。
昔の不良の溜まり場になっていた部には、よくあった話だ。
そんな彼達が、赴任してきた綾瀬はるか演じる
きれいな国語の先生のおっぱいを賭け、一勝を目指す。
しかも運悪く、相手は地区No.1の強豪校。
動機はそんなことだったが、いつの間にかチームの仲間達と結束し、
バレーボールに真剣に向かっていく姿は、
笑いの中にも、若かりし頃、頑張っていた自分達を誰もが思い出すことだろう。
最近の部活を見ていると、義務としてやっていたり、
仲間との一体感を感じていない中高生が多いように思える。
中途半端にやっていても、思い出にも残らないし、本当の友にもなれない。
1つのことに向かって、皆で苦労したことは、心も体も成長させてくれる。
部活の意義をも伝えてくれる青春ものの新スタンダード“おっぱいバレー”
薄っぺらい友達しかいない子供達に見てもらいたい1本である。



風が強く吹いている

監督:大森寿美男
出演:小出恵介、林遣都、中村優一他
2009年 日本映画

“たすきの重さ”
弱小陸上部の箱根駅伝挑戦を描いた駅伝ムービー“風が強く吹いている”
毎年正月の2、3日に、ついつい見てしまう箱根駅伝。
中継所で倒れこむランナー、あやまり泣きじゃくるランナー、
ゴール前で大声を出す部員達…
新年早々、言ってしまえば暑苦しい映像なのだが、何故だか見てしまっている。
その魅力って何だろうか?
そんな答えがこの作品の中に隠されていた気がする。
ついつい自分の出身校の順位を気にしてしまうが、
やはり気になるのはシード校に入れる10位の争いとか、繰上げスタートである。
たすきをつなげられなかった時の、ランナーの顔はそれまでの練習やチームの“想いの重さ”を
思い知らされる。
ただ、トラックで走るのでなく、“山上り”や“花の2区”など、タイプの異なる様々なコースを
選手達10名、それぞれに割り当てられ、それぞれが自分の全てを出し切り、
たすきをつないでいく。
今回の弱小陸上部には、父をコーチにもち、足を壊してもトップランナーでいようとした男など
エース級は2人しかいない。
しかし、それぞれの性格や特色を活かし、箱根駅伝に挑んでいく。
その中で、友情や生き方や目標を、それぞれが見つけていく。
1人だと辞めてしまうことも、駅伝だから続けられる。
喜びも悔しさもうれしさも、1本のたすきがつないでいく。
“たすきの重さ”という言葉が、よく実況に出てくるが、
毎回すべてのチームがそれぞれの“たすき”の意味を作り、
それが“重さ”になっていくことに気づかされた。
駅伝というスポーツが好きになってしまう作品です。



奇跡のロングショット

監督:フレッド・ダースト
出演:アイス・キューブ、キキ・パーマー、タシャ・スミス他
2008年 アメリカ映画

“親として守るべきもの”
夫が家を出て、娘を一人にしておけない母が、アイス・キューブ演じる夫の弟に
学校後の育児を任せることにした。
彼は元々この町の有名なアメフトの選手だったが、けがで選手を断念。
その後、工場でまじめに働いていたが、町全体が不況になり、工場も閉鎖。
無職となったとき、お金をもらえるから育児を引き受けた。
姪は、学校でいじめられ、1人で本を読むのが好きで、モデルに憧れる気弱な女の子だった。
そんな姪に、フットボールの性能があることに気づく。
社会から外れている2人にとって、2人だけのフットボールの練習は楽しい時間だった。
彼は姪に1つの提案をする。
“フットボールチームの入団テストを受けてみないか?”
目立たないように生きてきた彼女にとっては、大きな壁を自ら作るようなものだ。
男ばかりのアメフトの世界にQBとして入るなんて…。
しかし、彼女は見事合格し、チームに試合ごとに徐々に信頼され、
チームにとって欠かせない存在になっていく。
アメリカNo.1を決める大会の出場が決まり、TVなどの取材を受けると、
突然父親が彼女の前に現れる。
僕はこのような父親に対し、むしょうに腹が立つ。
いつも逃げていて、良い時だけ現れる。
親として常に子供を守り、逃げないことの大切さを教えるというのが、親としての役割だと思う。
常に近くに感じられる存在が、親の役目であるはずだ。
1人の少女のアメリカンドリームの話ではあるが、親として守るべきものの大切さを教えてくれる作品、
“奇跡のロングショット” 親子で見てもらいたい1本です。



奈緒子

監督:古厩智之
出演:上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶他
2008年 日本映画

“駅伝が持つ意味”
子供の頃、自分を助ける為に海に飛び込み溺れてしまった船長の息子雄介と、
高校の時偶然再会してしまった“奈緒子”
奈緒子は自分のせいで雄介の父を殺してしまったと、後ろめたい気持ちで雄介と接していた。
雄介は奈緒子に対し、父を奪った人として仲良くするなんて出来なかった。
小学生の頃の2人のトラウマは、2人の成長や時間を止めていた。
そんなとき、雄介の父親の友人でもあり、陸上部のコーチが、
奈緒子を雄介の駅伝の合宿に、マネージャーとしての協力を求めてきた。
今まで個人競技として陸上をやっていた雄介が、チームとして走る。
彼のずば抜けた能力や、マスコミのあおりで、チームから浮いてしまう雄介。
奈緒子は何とかしたいのだが、表現することすら出来ない。
しかし、2人の気持ちのわだかまりは、少しずつ解けていく。
駅伝のたすきは、単なるバトンではない。
大げさに言うと、“心のバトン”なのかもしれない。
しかも走っているメンバーだけでなく、コーチ、マネージャーなど
関わっている人すべての心のバトンが、たすきという形でつながっていく。
駅伝というスポーツは、独特なスポーツである。
すごく苦しい思いをして、心のバトンをつないでいくスポーツだ。
だからこそ、心の距離を縮め、チームとして団結できるのであろう。



インビクタス/負けざる者たち

監督:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン他
2009年 アメリカ映画

“1つの国、1つのチーム”
1995年ラグビーワールドカップ南アフリカチームと人種解放、そして
大統領となったネルソン・マンデラ氏の2つの目線で描いた“インビクタス/負けざる者たち”
当時、人種差別の国として世界に注目されていた国を、ラグビーのワールドカップを開催することで
黒人と白人の壁を取り壊そうとしたマンデラ氏。
白人選手達に、黒人の貧しい土地を訪れ、交流させたり、
大統領自身も交流を持つことによって、黒人と白人が一体化する“シンボル”として
ラグビーが平和的な道具として使われた。
“何か南アフリカが世界に自慢できるものを!”
選手達の背中に大きなプレッシャーが襲って来たに違いない。
紳士であり、戦士であるラガーマンだからこそ、この重荷に耐え、優勝につながったのだろう。
この作品は、2010年、南アフリカで開催されたサッカーワールドカップの日本チームの状況と
僕の中では、リンクしてしまった。
政治や経済不安の日本で、彼らがベスト16に行ったことは、多くの日本国民に勇気や希望を与え、
国民を1つにした。
残念なことに、政治的向上は、すぐに見られなかったが…。
スポーツは、国や民族を1つにする力を持っている。
マンデラ氏が訴えた“1つの国、1つのチーム”
ラガーマン達がプレイする姿で、人種を超え、国民すべてが喜び、1つになれた。
警察や軍が押さえ込んだり、武器を持って平和を目指しても、このような結果にはならなかっただろう。
スポーツは平和的に国を1つにする力を持っている。
アスリート達の仕事とは、すごく重要な仕事だと思う。
夢や希望を与える使命を持たされているのだから。



ベスト・キッド

監督:ジョン・G・アヴィルドセン
出演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、エリザベス・シュー他
1984年 アメリカ映画

“トレーニングとは?”
アメリカの空手映画の決定版と言えば“ベスト・キッド”だろう。
田舎からロスに出てきた一人の少年が、不良と付き合っていて別れた女の子に恋をしたことで
その不良達に目を付けられてしまう。
不良達は、空手をしていて、少年はやられてしまう。
その時、彼を助けたのが、少年の住むアパートで修理工をしている沖縄生まれの日本人ミヤギだ。
この作品、とにかく日本のとらえ方が変だ。
置物とか使っているものなど、ちょっとずつ違っていて面白い。
不良チームのリーダーと空手の試合をすることになり、ミヤギは少年に空手を教えるのだが
ボートの先端に立たせたり、拭き掃除をさせたり、変なことばかりやらせる。
それら全てがトレーニングなのだが、まるで亀田兄弟のトレーニングみたいだ。
ミヤギは少年に空手の道を教える。
ただ争うことではなく、心を穏やかにすること、バランスや体を磨きあげることを教える。
完全な男だと思っていたミヤギが、酔っ払って、少年に、奥さんと、生まれなかった子供の悲しい過去を話す。
日本人の一人の老人と、若者が本当に心を通わせ、師弟関係を作った瞬間だった。
トレーニングは体だけでなく、心を鍛えることも必要だし、コーチを信頼することが必要である。
疑いの中では、成長しないのである。
苦しさや悲しさを抱えた二人が、共に歩み、共に上達を目指すことが重要なのである。
ベスト・キッドは、アスリートとコーチの絆の大切さを教えてくれる。
ロッキーのように変なトレーニング法がいっぱい出てくる。
力を抜いて見ると、より楽しめる1本です。



リプレイスメント


監督:ハワード・ドゥイッチ
出演:キアヌ・リーヴス、ジーン・ハックマン他
2000年 アメリカ映画

“2度目のチャンス”
NFLの選手達がストライキをシーズン中に起こし、
チーム側は代理選手を集め、シーズンを戦うことにする。
大学時代、スター選手だったが大敗して失望した者、戦争に行った者、
ボディガードとして裏方になった者…
現役でない、しかもアメフトから離れている者達でチームを結成。
しかし、彼らはあくまでも代理選手。
ストが終わると元の生活に戻らなくてはならない。
そんな代理選手達が、一瞬の輝きを求め、
チームとして前に進んでいく姿を描いた“リプレイスメント”
憧れのNFLのチームが、どこの誰かも分からない人を代理選手として起用し、
ゲームをするのだから、最初はファンの怒りはすごかった。
しかし、自分達の存在に近い選手の頑張っている姿を見て、
徐々に応援するようになっていく。
ここに集められた選手達は、エリートでもないし、スターでもない。
何らしかの挫折があって、誰も知らない街の片隅で仕事をし、生活をしている。
一瞬の輝きを求め、飛び込んできたチャンスに、個性豊かな人達が
必死に汗を流している。
悩みも無く、勝ち上がった人は、背負うものが少ないので、
“金”や“名声”を求めるようになっていく。
アスリートと付き合っている中で、苦労したり、挫折感を味わっている選手のほうが
人間的にも面白いし、プレイに対して真摯な態度で接している人が多い。
そして、彼らの勝利はもちろん、プレイしている姿にも共感が持て、つい応援してしまう。
スポーツのプレイスタイルは、そのアスリートの人生を映し出していると僕は思っている。
アスリートと話していて「こいつのプレイを見てみたい」と思わされた人のプレイは、
感動させられることが多々ある。
今、悩んでいるアスリートは、この作品を見て、2度目のチャンスにトライしてものにして欲しい。



飛べないアヒル


監督:スティーブン・ヘレク
出演:エミリオ・エステヴェス、ジョス・アクランド、レーン・スミス他
1992年 アメリカ映画

“フェアプレイと仲間とトラウマ”
フェアで無いのだが勝つことが全てだった弁護士。
幼少の頃のコーチが植えつけた思想が彼をそうさせていた。
スタープレイヤーで、アイスホッケーを愛していた少年から、アイスホッケーを奪ったもの。
それは1つの敗北でプライドもホッケー自体も怖くさせるコーチの怒り。
負けたことを1人の少年に押し付けたことだった。
本来は楽しさを教えるはずのコーチが、1つの才能を消し去ったのだ。
そんな弁護士がひょんなことから弱小アイスホッケーチームの監督をすることになる。
最初はいやいややっていたが、勝つことが全てと思っていた彼は、
アンフェアなことを子供達に押し付ける。
弱小チームの子供達にもプライドがあった。
彼は子供達に教えられ、フェアと仲間を大切にする精神を思い出し、チームをまとめていく。
最近ゲームでスポーツを楽しんだと勘違いしている子供が多い。
ゲームでは技術がついても、本当の楽しさとか友情とか、フェアプレイの精神など生まれやしない。
本当に体を動かし、スポーツを一生懸命やるから、身に付くものである。
そんな当たり前のことをこの作品を通して、思い出すことが出来た。
日本でも、同じアイスホッケーの映画で陣内孝則が作った“スマイル”という映画がある。
アイスホッケーの子供チームの作品は、どうしてこのような気分になるのだろう。
きっと体当たりや格闘的な激しいプレイだからこそ、ルールを守ったり、味方を体を張って守らないと
強いチームになれないから、本当の仲間である必要性があるのだろう。
協調性の無い子供はアイスホッケーチームに入れると、きっと変わるのではないかと思わされた。
“飛べないアヒル”作品の中で、子供達はしっかりと飛んでいる。
子供達の団結を見て、大人は子供達から学ぶことがたくさんあると再認識してほしい。



ミラクル

監督:ギャヴィン・オコナー
出演:カート・ラッセル、パトリシア・クラークソン、ノア・エメリッヒ他
2004年 アメリカ映画

“政治とスポーツ”
オリンピックやワールドカップは“国対国”の対決だけあって、
時々政治や外交を持ち込まれることがある。
大会出場のボイコットをしたり、報道などでも時にそんな観点で語られることがある。
レイクプラシッド冬季オリンピックアイスホッケーチームを描いた作品“ミラクル”は、
そんな“政治とスポーツ”を描いた作品である。
アイスホッケーソ連チームが15年も王座を守り、NHLのオールスターでさえ勝てなかった時代、
1980年の冬季オリンピックで、“強いアメリカを取り戻す為”大学生中心の代表チームに
優勝を目指すプロジェクトを発足させる。
オープニングは、強いアメリカのニュースから、ベトナム戦争や大統領の演説などで、
不安を持ち始めたアメリカを見せていく。
ソ連のアフガン侵攻などもフューチャーし、練習風景と政治がカットバックされていく。
ソ連との練習試合も“ソ連アフガンから出よ”のようなプラカードが客席にいっぱい立っている。
“個々の能力よりチームプレイ”
ただ勝利に向かってハードなトレーニングをしている代表チームにとって
政治的扱いをされないように、監督やコーチは必死に選手をガードする。
代表選手は“国の代表”であり、国民の期待や夢のためにも戦うのは当然だと思うが
“政治”や“他の利権”のために戦うものではない。
ただ試合中の姿や結果で、勇気や希望や自信を持ってもらえればありがたい話だが。
“スポーツの世界”は平和的にルールの中で戦うものである。
国の威信は背負わせても、政治まで背負わせてはいけないのである。
絶対不利と言われた準決勝、ソ連戦に勝利し、
その後優勝したアイスホッケーアメリカ代表チームが、アメリカ国民に多くの希望を与えた。
それは、政治的なことでなく、彼ら自身のプレイだけで評価してもらいたい。



エニイ・ギブン・サンデー

監督:オリバー・ストーン
出演:アル・パチーノ、キャメロン・ディアス、デニス・クエイド他
1999年 アメリカ映画

“スポーツを愛する気持ち”
アル・パチーノ演じるNFLの監督と、そのチームオーナーであり、前オーナーの娘でもある
キャメロン・ディアス演じる経営者の戦いを中心に、オリバー・ストーンが描いた
アメリカンフットボール映画“エニイ・ギブン・サンデー”
真のチームを作るために頑張る監督と、勝ちと派手なプレイ、スタープレイヤーを作って
チームをTVやCMに引っかかるようにし、チームの値を上げようとする経営者。
監督は“アメフトの精神”を大切にし、チームを作っていた。
“QBはチームリーダーであり、尊敬される人物になれ”
“みんなで他のプレイヤーを守ってあげろ”
“勇気を持って相手をつぶせ”“全員で前に出て行け”など、
アメフトの持っている精神で作戦を作り、バックヤードでも選手を鼓舞していた。
一方、経営者は、スタンドプレーをしてでもスターを作り、CMに出演させたり、
チームドクターに嘘をつかせて、ケガしそうな選手でも客人気の多い人は出場させようとしたり、
金儲けとしてチームを動かそうとしていた。
その対立に振り回されるチーム。
不安になり、チームに不信を感じる者も出てきて、おかしくなってくる。
選手にフォーカスされがちだが、この作品は、監督と経営者にフォーカスしているので、
いろいろと考えさせられる。
確かに精神も大事だが、プロのチームなので、経営も大事。
でも、チームの精神を生かし、経営していく方法は無いのだろうか?
確かにこの問題は、僕も時々考えさせられることがある。
キッズのスクールなど、良いことをしているのだが、金が足りない時など、本当に頭を抱えてしまう。
そんな問題の答えのひとつをこの作品は教えてくれた。
それは、“そのスポーツを愛する力”があれば、少し方向性が違っても
お互い前に進めるということだ。
アメフト自体を愛する気持ちを皆が持つようになって、この作品の中でも、
問題は少しずつ解決していった。
僕もスポーツに関わっている人間の1人として、この作品は非常に考えさせらる1本でした。



スクール・ウォーズ/HERO

監督:関本郁夫
出演:照英、和久井映見、内田朝陽他
2004年 日本映画

“One For All, All For One”
かつてTVドラマで人気だった“スクール・ウォーズ”が映画化され甦った。
ストーリーは30代以上の人なら知っている人も多いと思われるが、
荒廃した学校に新任教師としてやって来た、元日本代表のラガーマンが
不良の生徒達をラグビーで更生させていく話。
112対0で負けたチームが、自分達の悔しさをラグビーにぶつけ、
京都代表として花園に行き、全国制覇するのだが、その軌跡を描いている。
部員が白血病になったり、暴力事件に巻き込まれたり、様々な困難に立ち向かいながら、
“One For All, All For One”のラグビー精神を養い、
チームとしてまとまっていく様子が手に取るようにわかる。
オープニングは、ニュージーランド“オールブラックス”の試合前に行なう気合入れから始まる。
不良達が集まるラグビー部に、体当たりしていく先生。
負け試合で、自分達の弱さに気づいた生徒達。
きっと点の負けより、心や、今までの不良生活でラグビーと真剣に向かい合っていなかった弱さに
気づかされたことが悔しかったのだろう。
先生の「元日本代表という目で彼らを見下していたのかもしれない。同じ目線に立つことが大切なんだ」
という言葉は、僕の心にすごく響いた。
若い人達と何かをする時、つい経験に頼り、押し付けてしまっていることもあるが、
それでは本当にチームとして一体化出来ない。
僕自身も反省しなくてはいけないと思った。
“一人は皆のために、チームは一人のために”
穴があったらフォローし、1つのボールを守るため、皆でスクラムを押しゴールを目指す。
“ルールのある喧嘩”みたいな時間も、ノーサイドの笛が鳴れば、お互いの健闘をたたえる。
“男の精神”“ラグビー魂”を通して、自分は必要とされていることを知った彼らは、
今も立派に人生を送っている。
ストーリーを知らない若者に、一度は見ておいてもらいたい作品である。



スマイル 聖夜の奇跡

監督:陣内孝則
出演:森山未來、加藤ローサ、田中好子他
2007年 日本映画

“誰かの為に戦う子供達”
北海道の田舎町の小学校教師が、縁もゆかりも無かったアイスホッケーチームの監督になる。
そのチームは1勝もしたことのない弱小チーム。
新任教師と弱小小学生アイスホッケーチームの物語を
俳優・陣内孝則が映画化した“スマイル 聖夜の奇跡”
タップダンサーを目指していた新任教師は、彼女との交際を認めてもらう為、彼女の父親に会う。
その父は、スケートリンクの会長で、フィギュアスケーターやアイスホッケーの子供達を育てている。
そのチームを勝たせたら、交際を認めるということで、チームの監督を引き受ける。
子供達も、母が家出した子、両親を事故で亡くし親戚に引き取られた子、
名門チームで落ちこぼれて、それでもホッケーが好きでやめられず弱小チームに入ってきた子…と
それぞれである。
子供達の色々なスポーツの大会を見に行くと、親が子供のミスや負けを怒っている機会を見ることが多い。
この作品では、監督は子供達の特性を見つけ、それを生かしていくことでチームを強くしていく。
子供達も悩みを抱えているし、怒りが子供達の才能を潰してしまうことだってある。
大人が子供を怒るシーンが無いからか、この作品は気持ち良く見ることが出来る。
それぞれの子供達が、自信を持って、モチベーションが上がっていく様子が手に取るように分かる。
さらに、チームとして、フィギュアスケートをしていた同じリンクの仲間であり、憧れの女の子が
白血病で闘っている姿を、自分達の勝利で応援しようという気持ちがチームを1つにしていく。
「自分の為だけでなく、誰かの為に闘うお前らは強い」という監督の言葉は、
チームの精神的な柱になった。
自分の子供のスポーツを見に行っている親は、一度この作品を見て、
子供のスポーツと自分との関わり方を考えて欲しいものだ。



インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン

監督:エリクソン・コア
出演:マーク・ウォールバーグ、グレッグ・ギニア他
2006年 アメリカ映画

“ロッキーと並ぶ不屈の男”
1970年代、低迷していたフィラデルフィアイーグルスを再生した男ヴィンス・パパーリの物語を映画化した作品
“インヴィンシブル 栄光へのタッチダウン”
この当時のフィラデルフィアは、工場の人員削減、ストライキと、労働の場が急減し、
パパーリ自身も仕事を失い、週2回の補助教員職も失って、バーテンのバイトで生活をつないでいた。
妻にも逃げられ、仲間と共にタッチフットしかしていなかったパパーリが
イーグルスのトライアウトを受け、合格する。
キャンプのセレクションで落とされるかもしれないのに、夢をあきらめきれず、全力で立ち向かっていく。
高校時代、1年間しかアメフトをしていなかったパパーリ。
大学はアメフト部が無く、タッチフットに転向。
新監督が突然経歴を問わないトライアウトをし、目をつけられたパパーリが他の人と違ったところ。
それは才能もあっただろうけれど、“不屈の精神”だったのだろう。
NFLのメンバーということで、全員ある程度の能力を持っているはずである。
なのに勝てないチームになっていたのは、勝利への熱が失われていたからだろう。
町の代表として、自分の頑張り、チームの勝利が、フィラデルフィアの人に勇気を与えると信じて
常に全力で戦うパパーリに、チームは勇気を取り戻し、再び強いチームになっていた。
パパーリはイタリア移民で、まるでロッキーのようだ。
ドキュメント映像に、ロッキーと同じようにフィラデルフィア図書館の階段を駆け上がっていくシーンがあった。
町を走る姿やドキュメント映像の姿を見ると、まさにロッキーだ。
彼の不屈の精神は、仕事を失い失望していた人々に元気を与えたはずだ。
自分達と同じように失業した人間が、夢をつかみ、相手をタックルでなぎ倒していく姿は、
“あきらめずにやれば出来る”ということを証明しているようだ。
30歳を過ぎても夢を掴むトライをしているパパーリの姿は、世界中の大人の元気を取り戻してくれるに違いない。



アイス・プリンセス


監督:ティム・ファイウェル
出演:ミシェル・トラクテンバーグ、ジョーン・キューザック他
2005年 アメリカ映画

“親の夢、本人の夢”
物理好きの少女がフィギュアスケートに目覚め、夢を追いかけていく“アイス・プリンセス”
教師の母親を持つ女子高生が奨学金をもらい、ハーバード大学のテストとして
レポートをまとめようとしたテーマが、“フィギュアスケートの力学”
元々、家の裏の池に氷がはるとスケートを楽しんでいた女の子だった主人公は、
“母親の夢”を“自分の夢”と錯覚していた。
幼なじみとしか会話が出来なかった子が、レポートを書くために通い始めたスケートリンクで
スケートに取り組む同校の生徒達と出会う。
自分の理論をスケーター達に教えたことで、彼女達が成功し、
友達になっていくことで、彼女はスケートの魅力にとりつかれていく。
ハーバードの面接の時、彼女は“物理”より“スケート”が好きだと気づき、
夢に向かって走り始める。
スポーツの中には、お金や時間、時には周囲の協力無しにはトップを目指せないものもある。
ウインドサーフィンの高校生プロの板庇雄馬君と話した時は、ギアももちろんお小遣いでは買えないし、
ギアを運ぶのも車でないと無理なので、両親の協力を常に仰いでいる。
自分のやりたいことも、高校生の頃だと一人で出来ないこともあるのだ。
もちろんフィギュアスケートも、スケート靴、衣裳、リンク代など、お金もとてもかかってしまう。
親が子供に自分の夢を押し付けることも問題あると思うし、
子供も自分の夢を親に伝え、納得させるくらいの熱意がなかったら、
きっとトップに立つ力など持てないだろう。
大会などで親が子供を叱っている姿を時々見る。
「なんであそこで頑張れないんだ!!」
子供達は必死に戦っている。
大会で気合を入れずに戦っている子供なんていない。
こんな怒り方をしていると、好きなスポーツもいつか嫌いになってしまうだろう。
親の夢のため、子供は頑張っているのではない。
子供の夢を親が共に頑張ってあげるべきだと僕は思う。



ナチョ・リブレ 覆面の神様

監督:ジャレッド・ヘス
出演:ジャック・ブラック、エクトル・ヒメネス、アナ・デ・ラ・レゲラ他
2006年 アメリカ映画

“子供達に夢を与えよう”
ジャック・ブラック主演のタイガー・マスクのようなストーリー“ナチョ・リブレ覆面の神様”
ロックシンガーであり、コメディアンであるジャック・ブラックの作品だから、少し下品で笑えるストーリーに仕上がっている。
孤児院も兼ねた教会で調理係をやっている主人公は、
プロレス好きで、教会では禁止されているレスリングを隠れて始める。
もらったギャラは、少しでも子供達に美味しいものを食べさせてあげようと、
野菜などを買い、サラダを食べさせてあげる。
自分の好きだったレスラーが、自己のことだけを思い、傲慢だと知ると、
レスリング自体に興味を失うが、子供達に楽しい思いをさせたいという希望と、
修道女との禁断の恋が、再び主人公をリングに向かわせる。
まるで、子供の頃、TVで見たタイガー・マスクのようなストーリーだが、
主人公演じるジャック・ブラックは、腹もぶよぶよで学問も身につけていない、下品でアホな3枚目。
だからこそ、必死な姿や苦しんでいる姿は、心の琴線に染みてくる。
自分のためだけでなく、誰かのために戦う姿は、多くの人に感動を与える。
ストレートなストーリーだけに、気持ちも伝わってきた。
子供達に夢を与えることは、アスリートの1つの仕事だと思っている。
立ち向かう姿、頑張ると夢が叶うこと、必死に前に向かうこと、そんな感動を伝えられる職業がアスリートだ。
全力で戦う姿こそ、子供達に見せるべき姿なのである。
こんなバカバカしいストーリーのメキシコでのプロレス映画なのに、なんでこんなに熱く筆を走らせているのか
自分でも少し不思議であるが、お涙頂戴的ストーリーでなく笑いながらも心にボディブローを少しずつ打たれ
心がマットにホールドされてしまったのかもしれない。
コメディアンが演じると、なぜか哀愁を感じるときがある。
この作品こそ、まさにその代表的な作品である。
誰かのために戦うこと、子供達に夢を与える大切さを教えてくれる1本です。



俺たちフィギュアスケーター

監督:ウィル・スペック
出演:ウィル・フェレル、ジョン・ヘダー、ウィル・アーネット 他
2007年 アメリカ映画

“氷上のエンターテイメント”
フィギュアスケートはスポーツであり、ショーであり、日本でも男女共に人気のスポーツである。
そのフィギュアをもっと楽しみたいなら、“俺たちフィギュアスケーター”を見るとよいだろう。
ウィル・フェレル、ジョン・ヘダー扮するタイプの違うトップスケーター。
その2人が世界大会で暴れ、“男子シングル”としてスケート界から永久追放される。
永久追放されて、やさぐれている2人。
スケートでしか生きていけないことを痛感する2人は“男子シングル”でだめなら
“ペア”で出場することをたくらむ。
元々、性格も違い、憎みあっていた2人が無理やりペアを組む。
2人で共に生活させられ、お互いのことを知り、共に1つの目標に向かって練習することで
少しずつ理解をし合い、1つの作品を作るようになっていく。
浅田真央選手がよく“作品”という言葉を使うが、世界中の人誰もがわかるよう
音に合わせ、エンターテイメントとして芸術を作っている様子は
“作品”という言葉以外では表現できないのであろう。
さらに、往年の名選手、スコット・ハミルトン、ブライアン・ボイタノ、ドロシー・ハミルトンなども
本人役で出演。
ナンシー・ケリガンやサーシャ・コーエンは、脱ぎたてパンツでうっとりするなど、
アスリートがここまでやらされているのか?というシーンがある。
これを見るだけでも一見の価値あり。
コメディという形でスポーツ映画を見ると、すごくそのスポーツに対して親近感がわき
身近になり、会場に足を運びたい気分になる。
日本でも、女子のやるシンクロを男の子達がやった“ウォーターボーイズ”などを見たことで
シンクロを難しいものとして敬遠していた人も、気軽に見に行けるようになったはずだ。
この作品を見た後はきっとフィギュアスケートを身近に感じられるようになることだろう。



プライド 栄光への絆

監督:ピーター・バーグ
出演:ビリー・ボブ・ソーントン、デレク・ルーク 他
2004年 アメリカ映画

“17歳とプレッシャー”
1988年テキサスのパーミアン高校アメリカンフットボール部の実話を元に映画化された作品である。
英題はFRIDAY NIGHT LIGHTS。
街全体が高校の伝統あるフットボール部を応援し、高校生達は重圧を受けていた。
練習にOBは毎日集まり、部室にTVカメラが入って常に中継する。
街で食事をしていても声をかけられる。
映画だから大げさに描いているかと思っていたら、当時の映像や写真が残っていて
本当に映画とそっくりの状況で驚いた。
父が有名選手で息子もスター選手に…とすごいプレッシャーをかけられる選手。
QBは、母が病気で自分が守らなくてはと考え、大学からの誘いも断ろうとするが、街の人は許してくれない。
高校生達にとってはプレッシャーとの戦いだっただろう。
個人競技だったら、彼らはきっとプレッシャーに勝てたのだろう。
チームが絆を作り、チーム全体が強くなっていくと共に、一人一人の心が強くなっていく感じが伝わってくる。
高校のアスリート達を育てるコーチは、スポーツの技術や戦略だけでなく、
生き方や人生のコーチもしなくては、強いチームを作れないと感じさせられる。
プロのチームの監督よりも大変な仕事なのかもしれない。
パーミアン高校の期待のプレイヤーが怪我で選手から外されてしまう。
フットボールしか取り柄の無い彼にとって、“第2の人生”を17歳で考えなくてはならないということは、
大変なことだったに違いない。
でもコーチは、テキサス州のファイナルのバスに彼を乗せ、
選手達に彼もチームの一員だと伝え、皆の絆を強くした。
もし見捨てられていたら、彼の人生はどうなったことだろう。
高校生という多感な時期に、1つのスポーツを通し人生を学ぶことの大切さを、
この作品に教えてもらったような気がする。



炎のランナー

監督:ヒュー・ハドソン
出演:ベン・クロス、イアン・チャールソン 他
1981年 イギリス映画

“何の為に走るのか?”
1924年パリオリンピックのイギリス陸上競技チームを描いた“炎のランナー”
ケンブリッジ大学に入ったユダヤ人のハロルド。
ユダヤ人ということにコンプレックスを持ち、走り、そして勝つことで自分のプライドを守っていた。
彼のライバルでもあり、後にチームメイトになるスコットランドの宣教師でもあるエリック。
イギリスという国は複雑で、今でもサッカーやラグビーは、イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズの
4国に分かれ、オリンピックの時はこの4国がまとまって“イギリス”という1つの国になりチームを組む。
イングランド、スコットランドと分かれて、ハロルドとエリックは戦い、ハロルドが敗れる。
大学生のハロルドは、プロのコーチ、サム・マサビーニを雇い、トレーニングを始める。
イタリア系アラブ人のコーチのサムを、大学側は良い目で見ない。
第一次世界大戦の時の同盟国、敵国という考え方が強い時だったからだ。
ハロルドはテクニックを磨き、個人の栄光だけを求めていた。
勝利の為に手段を選ばず、国のことなども考えていなかった。
しかし、パリオリンピックの合宿で、少しずつ考え方も変わっていく。仲間達の優しさにも触れていく。
一方エリックは、宣教師であるにも関わらず、走ることに惹かれていく。
走っている時、神に触れられる自分に酔っていた時さえあった。
しかし、オリンピックの予選が、日曜日という安息日に当たってしまう。
国は出場しろという。しかし神への忠誠心を守り、レースに欠場。
友人が自分の代わりに違う競技に出て、安息日ではないレースにチャンスを与える。
ハロルド、エリック共にオリンピックで優勝した。
コーチがハロルドに言った言葉が印象的だった。
「君は何に勝ったか分かるか?君自身と私に勝ったんだ」
陸上を通し、コンプレックスに打ち勝ち、友情を知り、強さに変えた男達の実話である。
テクニックばかり磨き、個人的栄光だけを考えている人に見てほしい1本である。



ドッジボール

監督:ローソン・マーシャル・サーバー
出演:ヴィンス・ヴォーン、ベン・スティラー、クリスティン・テイラー 他
2004年 アメリカ映画

“アトラクションのようなアメリカのドッジボール”
まずアメリカのドッジボールを初めて見た。日本とまったくルールが違う。
日本のドッジボールとはまったく違うスポーツだ。
日本みたいに内野・外野がない。
ダイレクトキャッチすると、フィールドの外に出たプレイヤーが1人、コートの中に入ってこれる。
最も違う点は、ボールが1つではなく、6つあることだ。
コートエンドに並んだ6人のプレイヤーが、スタートのホイッスルと共に
センターラインに並んだ6個のボールを奪うところからゲームが始まる。
フィールドプレイヤーが相手のフィールドの選手にボールをぶつけ、ぶつけられた人はコートの外に出るというルール。
ボールがいくつもあるので、日本のドッジボールよりスピーディであちらこちらで色々な展開が起こる。
コートも得点ボードもPOPで、ESPNが全米中継しているという設定も個人的には笑えた。
さらに、ツールドフランスのスーパースター、ランス・アームストロング本人が出演したりと、とにかく面白さ満点。
対立している2つのジムがあり、みんなの為にやっているジムが、隣の傲慢なジムに買収されそうになり、
5万ドルを作らなくてはならなくなった。
その時、雑誌で見つけた全米ドッジボールの大会の賞金が5万ドルだったので、皆で出場することになる。
伝説のボーラーに指導を受け、団結していくというストーリーなのだが、ちょっと下品なところもあるが
笑いながら、いつの間にかこぶしを握って頑張れ!!と言っている自分がいる。
落ちこぼれと思われる人もそれぞれの人生があって、皆が頑張っているパワーが集まればすごいことが出来るということ、
そしてチーム団結を笑いの中から教えてくれる作品です。



ロール・バウンス

監督:マルコム・D・リー
出演:バウ・ワウ、ニック・キャノン、シャイ・マクブライド 他
2005年 アメリカ映画

“ローラーダンスはスポーツとダンスの融合”
ローラースケートでダンスを踊るというと、“光GENJI”を思い出す人が多いのではないだろうか?
本当はすごくアグレッシブで昔のソウルステップなども取り入れた格好良いものなんだけどな…。
映像が無いから伝えられないな…と思っていたところ、発見しちゃいました。
それがこの作品“ロール・バウンス”。
あの4ウィールのローラースケートでトリックやステップを活かし、DJのサウンドで巧みに踊るのである。
まさにアメリカンなカルチャーである。少し古い感じもあるけど、
ソウル、R&B、ディスコ好きにはたまらないカルチャーである。
マービンゲイ、ビージーズなどのサウンドも楽しませてくれる。
貧乏な地区の友人達が組んだチームが、金持ちの地域のローラーリンクに乗り込むのだが、
バカにされてしまい、自分達の誇りのために練習を重ね、挑んでいくという単純な明快なストーリー。
主人公は、母を失い父親と妹の3人暮らし。父は家事を手伝ってほしいので彼に門限などを与えるが、
コンテストの前、息子が頑張る姿を見て良き協力者となっていく。
70年代後半のアメリカのカルチャーがダイレクトに伝わってくる映画である。
“ローラーゲーム”と“ローラーダンス”という2つのローラースケートカルチャーは、
70年代後半の頃、僕にとってはまさにアメリカンカルチャーの代名詞だった。
子供達誰もが親にローラースケートをねだっていたあの時代。
古き良きアメリカを感じるにはまさにぴったりの1本。
さらに、ブレイクダンス的動きもあって、ルーツを見るにはもってこいの作品である。



ローラーガールズ・ダイアリー

監督・製作・出演:ドリュー・バリモア
出演:エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、クリスティーン・ウィグ、
ジュリエット・ルイス 他
2010年5月ロードショー

“様々な愛情に包まれたローラーガール”
“ローラーゲーム”
この言葉の響きは僕達の世代にとって、なんだか懐かしい香りのする言葉だ。
子供の頃に見たアメリカンなスポーツで、パワーとスピード、ファッションは憧れの的で、
誰もが親にローラースケートをねだり、“東京ボンバーズ”ごっこをしたものである。
僕の友人に元ボンバーズの選手がいて、日本でも“ローラーゲーム”の復活に向けて動いている話や
アメリカの女子リーグの話を耳にしていた。
この作品は、そんなアメリカ女子リーグのLAのチーム“ロサンゼルス・ダービー・ドールズ”の
マギー・メイヘムことショウナ・クロスが自身の経験をベースに原作を書き、
“チャーリーズ・エンジェル”で有名なドリュー・バリモアが監督したローラーゲームの映画である。
女優達がトレーニングをし、一切吹替え無しでやっているリアリティや、
劇中のコーチの説明の中で“ゲーム”や“ルール”を何気なく理解させていく作りはスポーツムービーとして立派だと思った。
家族、友人、チームなど色々な愛情が全編を包みつつ、ローラーゲームのスピード感、
激しさ、ファッション性、音楽が刺さってくる作品だ。
若いアスリート達は自分の目標に没頭して、周りの友人や家族やチームや仲間の気持ちを忘れがちになる。
この作品は、そんな“ピュア”な気持ちを思い出させてくれつつ、ローラーゲームの面白さをたっぷり詰め込んだ、
青春アクションスポーツムービーである。



STEALING BESS

監督:ルーク・クレスウェル、スティーブ・マクニコラス
出演:キップ・パルデュー、ローズ・マクゴワン、リー・エヴァンス 他
2002年 アメリカ映画

“This is Performance!!”
STOMPの制作者が、STOMPのメンバーを使ってストーリーの中でパフォーマンスを見せていく
実験的作品である“STEALING BESS” 日本語タイトルは“STOMPの愛しの掃除機”
僕が目指しているところは、まさに“STOMP”の世界観である。
アスリートとしての肉体から作り出す極限の技+エンターテイメント。
特に言葉を使わず、日常にあるものを使ってリズムやステージを作っていく彼らは
世界中どこでも楽しんでもらえるパフォーマンスだ。
しかもそれぞれがエクストリームマーシャルアーツ的動きやフリーランニング的要素もトップアスリートランクで、
エンターテイメントと完全に融合している。
こんなパフォーマーを日本で創りたいと思う。
日本でも、アイデアの部分はWAHAHA本舗の“3GAGA HEADS”が、この発想に近い
オリジナリティあふれるものをやっていて、09年の世界3大コメディフェスティバルの1つ“fringe”で
オリジナリティを競う賞にノミネートされた。
彼らのパフォーマンスにXsportsのライダーをMIXしたらきっと日本流の“STOMP”が創れるはずなのに…。
この作品のストーリーは、はっきり言ってすごいストレートで分かりやすいつくり。
きっとパフォーマンスを見せたいがためにストーリーを作ったんだと思うのですが、
1つ1つシーンの中で細かくパフォーマンスをしているのでじっくり見ることをオススメします。
“This is Performance”と呼んでもいいくらい、これぞ、パフォーマンスの面白さという部分が
随所に散りばめられた作品です。