陽だまりのイレブン

監督:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
出演:ジーコ、フェリッペ・バヘット・アダオン、ジョースナ・ブロシ他
1998年 ブラジル映画

“スーパースターであること”
日本にも馴染みの深い偉大なるサッカープレイヤー“ジーコ”は子供達をブラジル中からピックアップし、
自分のサッカー場で指導する話だが、コピーを作る大企業がジーコのコピーを作ってしまうことで物語は急展開する。
陽気で楽しいジーコと真面目で理論派というジーコのもともと持っている性格が分かれてコピーされてしまうのである。
この後はドタバタ喜劇的展開なのだが、ブラジル人が制作したものらしく細かい事は何も気にしていない。
突っ込みたくなる部分は多々あるのだが、ここでは何も言わないこととしよう。
まず、この映画が作られた背景を考えると、ジーコ、そしてブラジルのサッカー選手は国民に愛され、スーパースターであるということ。
スポーツというものをここまで国全体で応援し注目しているということが凄いことだと思う。
W杯やオリンピックなどの開催に向け、今(2014年)ブラジルは国を挙げて盛り上がっているらしい。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、日本人は挙国一致で盛り上げることが出来るのだろうか?
そんなブラジル人にとってのスポーツに対する価値観やスーパースターアスリートに対する意識を考えさせられる作品であった。
内容は、特に何も深く考えず楽しんで下さい。 



ジェラルド・バトラーin THE GAME OF LIVES

監督:デヴィッド・アンスポー
出演:ジェラルド・バトラー、ウェス・ベントリー他
2004年 アメリカ映画

“W杯アメリカの奇跡”
サッカーで昔のことを描いた映画はヨーロッパの作品が多い。
当たり前だがヨーロッパのサッカーは古くからの歴史があり、文化の1つとなっている。
野球やアメフトなどアメリカにはアメリカのスポーツがある。
古きアメリカのサッカーを描こうとすると、屈辱的歴史を描かなくてはならない。
そんなアメリカサッカーの軌跡の第一歩となるアメリカ1950年ワールドカップの奇跡を描いた
“THE GAME OF LIVES”
アメリカは色々な移民が多い国だったので、イタリア系、ドイツ系などヨーロッパの血をひくものも多かった。
セントルイスのイタリア系の若者達にとっては“野球”より“サッカー”が街が注目するスポーツであった。
そんな彼達を中心に集められたW杯アメリカ代表チーム。
遊びに来ていたイングランドのプロクラブチームにボロ負けするなど、
チームとしては寄せ集めの集団に過ぎなかった。
アメリカのサッカーなど誰も注目していなく、出場することに意味があるとだけ思われていた。
しかしアメリカのサッカーの歴史を創ろうとベストを尽くす事にしたメンバー達。
僕が特に注目したのは、リオの軍の基地で軍の高官から
大統領のメッセージと高官からのユニフォームの授与式のシーンから顔つきが変わる選手達の行動だ。
アメリカにとって国の名誉というものの重要性を表現している1シーンなのだが、
日本人にとってこんなことってあるのだろうか?
“愛国心”というものを根底に生きているアメリカの“スポーツの強さ”を感じさせられた。
国の代表としての名誉、この名誉を傷つけない為に頑張る闘争心。
W杯でのアメリカの奇跡はそんな気持ちが生み出した勝利なのでしょう。



勝利への脱出

監督:ジョン・ヒューストン
出演:シルヴェスター・スタローン、マイケル・ケイン他
1980年 アメリカ映画

“スポーツエンターテイメントの真髄”
第2次世界大戦中、ナチスドイツ軍と捕虜の連合軍チームがサッカーの試合を行う。
ナチス側は連合軍を倒すことで国力を世界に知らしめることを目的としていたが、
連合軍はこの試合で、捕虜になった往年の元サッカー選手を救い出すことにあった。
お互いの思惑はありつつも、いざグランドに立つとプレイヤー達は必死に良いプレイをするだけだった。
試合直前にスタジアムからの逃亡計画が持ち出される。
シルヴェスター・スタローン演じるアメリカ兵のゴールキーパーは収容所から一度脱走し、
試合が行われるパリの同志に協力を求めに行く。
いよいよキックオフ。
結果はここには書けないが、試合はとにかく面白い。
何と言ってもスタローンはロッキーの後で捕虜に見えないということで体重を落とし、
プロサッカー選手と共にキーパーの練習を積んだ。
さらには往年のプレイヤー達が台詞もあって出演している。
サッカーの神様“ペレ”はメインのキャストとしてしっかり芝居をしている。
オーバーヘッドキック(当時はバイシクルシュートと呼んでいた)も華麗に決めている。
その他にはイギリスの名プレイヤー“ボビー・ムーア”や
ペレの同僚、アメリカのニューヨークコスモスでプレイしていた“ウェルナー・ロス”、
アルゼンチンの“オズバルド”、ベルギーの“ボール・バン・アルディレス”、
挙げるときりがないがポーランド、ノルウェー、デンマークの代表選手も出演。
まさにワールドオールスターが出演。ストーリーも楽しく、サッカーも世界レベル。
スポーツエンターテイメントの真髄がこの作品に在る。



ザ・カップ 夢のアンテナ

監督:ケンツェ・ノルブ
出演:ジャムヤン・ロドゥ、ネテン・チョックリン他
1999年 ブータン/オーストラリア映画

“サッカーは地球人のスポーツ”
僕は人生の中で初めて“ブータン”という国が製作した映画を観た。
ブータンの少年僧と愛するサッカーをテレビで見たいという日常を描いた“ザ・カップ夢のアンテナ”という作品です。
出演している人達も実際の少年僧達で、ビーチサンダルや裸足でジュースの缶をボールにしてサッカーを楽しんでいる。
貧しい国でもあり、戦闘もある国で、僧になり勉強をすることが子供達にとって未来を作る為の道である。
大好きなワールドカップを見たい為、皆でお金を出しあってテレビとアンテナを借りてくる。
初めてサッカーをテレビで見ている時の子供達のキラキラした目。これこそリアルな表情である。
ボールを使ったサッカーシーンはこのTVの中のシーンしか出てこない。
ジダンなどのフランスチームとブラジルチーム、ワールドカップの決勝。
子供達が自分達で集めて全てのお金を出し、見たいものがコレだ。
サッカーというスポーツが世界中に愛されていることが伝わってきた。
“サッカーは地球人のスポーツ”そんな言葉がリアルに感じられる映画です。
スポーツが世界と地域をつなげることが出来る重要な要因となれることを思い知らされました。
スポーツを題材にしたこの映画は、きっと世界中の人が見ても理解出来るでしょうし、
“ブータン”という国を伝えることも出来るでしょう。
僕もこの作品を観るまではブータンという国を知らなかったのだから…。



ミーン・マシーン

監督:バリー・スコルニック
出演:ヴィニー・ジョーンズ、ジェイソン・ステイサム他
2001年 アメリカ/イギリス映画

“ヨーロッパとアメリカ”
元イングランド代表のサッカー選手が暴れて刑務所に入り、
看守達のチームと囚人チームが戦う姿を描いた作品“ミーン・マシーン”
この展開はまさに“ロンゲスト・ヤード”アメリカンフットボールの名作でリメイクまでされている作品である。
そのストーリーそのままにイギリスでサッカーに置き換えたものがこの“ミーン・マシーン”である。
日本で制作した“Shall we dance?”をアメリカでリチャード・ギアがリメイクするなど、
このようなことは時々あるものだが、スポーツのジャンルを替えてリメイクなんて僕は初めて観た。
やはりイギリスではアメリカンフットボールでなくサッカーでないと主役がスターに見えず
囚人達がうらやむ存在になれなかったということであろう。
国によって人気のスポーツはかなり違う。
日本でマイナーなスポーツも海外の国ですごくメジャーなものも多々ある。
スポーツにおける国民性という部分だけで考えると、アメリカはアメフトや野球、バスケットのように
短い区切りで1つ1つの勝負結果がすぐ出るものが好きだと思われる。
ドラッグレースのような4、5秒で決まるものなど、すごく盛り上がる。
一方ヨーロッパはサッカーなど長い時間が続き、その得点までの過程を楽しんでいるように思える。
これだけスポーツに対する見方が違うのに、スポーツスターがどん底に落ちて、
自分達が人間としてのプライドを持つため、全力で立ち向かうというテーマはまったく一緒である。
つまり、スポーツの中に見える精神は世界共通ということを教えてもらった。
“ミーン・マシーン”は“ロンゲスト・ヤード”と共に見ると楽しさが何倍にもなります。



ペナルティ・パパ

監督:ジェシー・ディラン
出演:ウィル・フェレル、ロバート・デュヴァル、ケイト・ウォルシュ他
2005年 アメリカ映画

“教え育てること”
地元サッカーリーグのトップチームの監督を父に持ち、
そのチームに所属していた我が子がトレードされ弱小チームに行かされた時、
そのチームの監督にされ、同じリーグで自分の父のチームと対戦する日までの、
監督と子供達の奮闘ぶりをコメディタッチで描いたサッカー映画“ペナルティ・パパ”
一言で言うと、サッカー版“がんばれ!ベアーズ”のような作品である。
ベアーズとの大きな違いは、監督になる父がサッカーも運動も苦手で、スポーツショップをやっていて、
勝ちにこだわるスポーツの得意な父への憧れと反抗がパワーになっていることである。
一回も勝ったことのないチームが、初めて勝利した時の子供達の笑顔が忘れられず、
優勝できるチームにしてあげたいと思った彼は、
父と反対に持っていたスポーツを楽しむというポリシーを捨て、父と同じように勝つために手段を選ばなくなっていく。
我が子もチームの子供達も少しずつ彼と距離を置くようになっていく。
子供達は反乱を起こし、本当に大切なことは何かを伝えようとするというストーリーなのだが、
子供達のスポーツチームに教えるということは非常に難しいことである。
チャレンジする気持ち、勝利を目指すこと、チームワーク、仲間を大切にすること、
ルールを守ること、応援してくれる人達に感謝すること…同時にいろいろなことを教えなくてはいけない。
バランスも大事である。
勝利の喜び、敗戦から立ち上がる力も持たせなくてはいけない。
子供達にスポーツを教えることは、教え育てること、まさに“教育”なのである。
そして子供達に教育していると、教えている方も育てられるのである。
スポーツと教育の関係を考えさせてくれる1本である。



GOAL!3 STEP 3 ワールドカップの友情

監督:アンドリュー・モラハン
出演:クノ・ベッカー、レオ・グレゴリー、ニック・モラン他
2009年 ドイツ映画

“アスリートである前に1人の人間であること”
メキシコからアメリカに逃亡し、夢だったプロサッカー選手になるため、
ヨーロッパに単身で挑戦するクノ・ベッカー扮するムネスを描いた作品
“GOAL!”シリーズの最終作であろう作品“GOAL!3 STEP 3 ワールドカップの友情”
“GOAL!”“GOAL!2”までは逆境と苦悩の中の挑戦を見せていたが、
“GOAL!3”ははっきり言って前作とはテーマも違うし、つながりが無くても見られる作品である。
前作の続きとして見たいという人は少しがっかりしてしまうかもしれない。
今作はトップになったサッカー選手がそれより大事なものに気付くというテーマ。
ベッカムやルーニーを始め、トップのサッカー選手達がやたらと出てくるので、
“ひょっとしたら現実?”と思わされてしまうくらい入り込めるし、
ワールドカップが舞台になっているので、世界中のトッププレイヤーのプレイを見ることが出来る。
もちろんサッカーのプレイも大事だが、“家族”や“恋人”を捨てるべきではないということをこの作品では教えてくれる。
夢に向かって挑戦している人達は、変に熱くなって“家族”“恋人”など本当の応援者を捨ててしまう時がある。
その時はそれで良いと思っていても時間が経つとすごく後悔したりするものである。
自分の大切な者を守ること、そして共に生きていき、喜びや苦しみを共有し、共に成長すること。
トップアスリートも1人の人間である。そんな当たり前のことを教えてくれる作品です。



ドイツの奇蹟

監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
出演:ルーイ・クラムロート、ペーター・ローマイヤー他
2003年 ドイツ映画

“国を1つにする力”
1954年、スイスワールドカップを優勝した西ドイツチームと、ドイツの1つの家族を描いた作品“ドイツの奇蹟”
第二次世界大戦で敗戦したドイツ。
多くの家族は父を亡くしたり、捕虜となり母と子供達で復興を願い必死に生きていた。
そんな時、ソ連から解放された父が戻ってくる。
昔のドイツ人らしく厳格な父。自由と未来の為に生きていた子供達。
一番下の子は、地元のスター選手でありワールドカップドイツ代表の“ヘルムート・ラーン”と友達で、
父のように慕っていた。
しかし、父は捕虜や戦争を引きずって生き、厳格に育てようと子供達を叱り、
家族は少しずつ崩壊していく。
戦後10年も経っていないドイツで、多くの家庭がこんな未来が見えず悩みを多く抱える生活を送っていた。
そんな西ドイツに力を与えたのは、ワールドカップで戦う選手達の姿だった。
この大会で西ドイツは優勝する。
崩壊しかけた家族も、苦しい中戦うサッカーチームのように少しずつコンビネーションが出来、
絆を深め、幸せという勝利に向かっていく。
サッカーの西ドイツの優勝するまでの軌跡という事実に、
ドイツの当時の家族のあり方を上手くシンクロさせて作った本当に優れた作品だと思う。
日本も終戦後、オリンピックの選手達の活躍やスポーツでどれだけ勇気付けられたかが、
高齢の方と話しているとよく話題になる。
サッカーのワールドカップの時、“日本人”が団結し、街の至るところで応援している。
スポーツで国を背負い戦う姿は、国民に勇気を与え、国を1つにする力を持つ。
このパワーこそ、スポーツの持つミラクルなパワーだ。
全ての日本を代表するアスリート達よ!!
君達の頑張りは皆に勇気を与え、団結する力を創ることが出来るのだ!! 頑張れ日本!!



スコットランド・カップの奇跡

監督:マイケル・コレント
出演:ロバート・デュヴァル、マイケル・キートン他
2000年 アメリカ映画

“スコットランドにおけるサッカー生活”
中村俊介選手が在籍していたことで、日本でもなじみのあるスコットランドリーグ。
グリーンと白の横縞の“セルティック”と、“レンジャース”の2チームの激しいトップ争いは
日本人でも知っている人はいるはずです。
この作品“スコットランド・カップの奇跡(原題:A SHOT AT GLORY)”は、
1部リーグだけでなく、スコットランドの全てのチームが参加するスコットランドカップに
参加した2部のチームのことを描いている。
監督の娘の夫“ジャッキー”は、セルティックやプレミアリーグで活躍していた名プレイヤー。
しかし監督は、娘夫婦の存在を認めず、自分の道を曲げずに生きていた。
チームのオーナーは、チーム力を上げつつ、話題性を求め、ジャッキーをトレードで獲得。
仲の悪い親子関係だったので、監督はジャッキーを試合に出さないことも多々あった。
ファンの人達はジャッキーの得点に期待していたのでブーイングの嵐。
同じチームにいることから、2人の問題は街全体の問題になっていく。
しかし、スコットランドカップに優勝しないとアイルランドにホームを移転する話が持ち上がり
しぶしぶジャッキーを起用するようになる。
プレイの中で、家族の絆も出来ていき、決勝戦へと駒を進める。
この結果は作品を見てもらえば分かるのだが、この作品を見て思ったことは
スコットランドなどのイギリスの国々は、サッカーは単なるスポーツでなく、
生活そのものであるということ。
葬式を地元のサッカー場で行ったり、街を歩いていても選手達に声をかけ、
自分達の街の名士として扱っている。
日本のサッカーもフランチャイズ化されているが、生活の一部として根付いていない。
本当の地元に密着したクラブチームが日本にも誕生したら、
もっとスポーツが盛り上がるだろうと思わされた1本でした。



オフサイド・ガールズ

監督:ジャファル・パナヒ
出演:シマ・モバラク・シャヒ、サファル・サマンダール、シャイヤステ・イラニ他
2006年 イラン映画

“男と女とサッカーと”
イランのワールドカップ予選を会場で見たい女の子達。
しかしイランでは、男性の試合は男性のみ、女性の試合は女性のみしか
会場観戦することが出来ない。
そんな会場になんとかもぐりこんだのだが、捕まってしまった6人の女の子達。
会場すぐ横に拘留されるのだが、会場の歓声はリアルに聞こえてきて
余計我慢出来なくなっていく。
サッカーが好きで、自国を応援したいのに応援出来ない不満。
日本人の女の人達などは観戦しているのに、自分達は出来ない矛盾。
家族以外の男女が一緒の場にいることを極端に嫌うイランの風習。
まるで幕末の会津藩の武士達と同じようで、“時代遅れ”としか思えないのは
日本という国で生まれ、生活しているからだろうか?
それぞれの国に独自の宗教や風習、文化があって、独自の習慣があるのだが
スポーツなどは、国際ルールやそのスポーツの世界的協会があって
世界統一のルールでやっているのだから、誰もが見られるようにしないと
国際試合というものが成立しないと僕は思う。
サッカー映画なのに、ボールを蹴るシーンがまったく無い、
面白いアプローチの“サッカー映画”でした。



ペレを買った男

監督:ポール・クラウダー
2006年 アメリカ=イギリス映画

“アメリカスポーツの真相”
2010年のサッカーワールドカップでも活躍し、MLSというプロリーグもあり、
サッカーはアメリカに定着してきている。
しかし、今のプロリーグの前に、全米で盛り上がり、そして消滅したリーグがあった。
1968年に誕生した“NASL”
このリーグのチームの1つ“ニューヨークコスモス”の関係者と当時の映像で綴った作品
“ペレを買った男”
この男とは、ワーナーグループの社長“スティーブ・ロス”
映画・レコード・テレビ局・家庭用TVゲームの会社を経営するロスには
メジャースポーツのチームオーナーになる夢があった。
1966年のサッカーワールドカップを見て、“世界で最も有名なスポーツ”サッカーに
興味を持ち始めた。
チームもリーグもメジャーにするために、ペレやベッケンバウワー、キナーリャなど
当時のスーパースターを買い、アメリカでサッカーをメジャーにした。
しかし、経営陣や首脳陣の揉め事で、ニューヨークコスモスは弱くなり、チームはリーグから離脱。
人気チームが無くなったことで、リーグも消滅するのである。
アメリカのスポーツは、野球やアメフトなど一瞬の注目が繰り返されるスポーツが人気であった。
45分間止まることなく、演劇を見るように常に見続け、休憩を挟み、
また45分見るなんて、習慣がなかった。
メジャーな野球より高い金で入団する選手を見てやろうというミーハーな目線から
アメリカのサッカーは始まった。
アメリカのスポーツは、金やプロモーション力によって、人気を作り、アメリカ人が好むよう
ルールや見せ方も作ってしまう。
アメリカスポーツの真相も見えてくるドキュメンタリー作品である。



レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏

監督:イヴ・イノン、エリック・カルド、デルフィーヌ・ルエリシー
出演:ハワード・ウェブ、ロベルト・ロセッティ、ミシェル・プラティニ他
2009年 ベルギー映画

“視点が変わると違った試合が見えてくる”
ユーロ2008で笛を吹いた審判達のドキュメンタリー映画
“レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏”
まず見始めてすぐ違和感を覚えた。
サッカーの試合のシーンで音声が審判のインカムの声と、そこからうっすらと聞こえる会場の音。
試合を見ていて一度も体験したことのないこの状況。
しかも、審判達が試合中に文句を言ったり、悩んだり、答えを求めたり…
いろいろな会話が展開されている。
“審判は神ではない。人間なんだ”と痛感した。
2010年のワールドカップでも審判の誤審はいろいろなメディアで話題になった。
誤審でなくても、きわどいジャッジにはクレームが来る。
この作品の中でも、非難されたジャッジには、サポーターのインターネットでの批判映像が流出したり、
政治家、さらには首相までもが批判してくる。
家族や自分の命すらもかけてジャッジしている審判達。
試合をテレビで見たり、スタンドで見ていると、いつも毅然としているように見える彼らも
勇気を持って、仲間達と共にゲームを裁いていることを知ると、さらにサッカーが面白くなった。
“尊敬されることが大事”
これがレフェリーの基本だそうだ。
人が人を90分裁き続けることの大変さを知ってしまった。
スポーツに関わる人達は、選手だけではない。
監督、コーチ、トレーナー、協会の人、スタッフ… そしてレフェリー。
それぞれが本気で戦っている。
この作品は、選手達だけでなく、試合に関わるすべての人達が真剣に戦っているから
興奮できるゲームが創れること、
そして、目線を変えると、こんなにゲームの見え方が変わることを教えてくれる1本です。



GOAL!2

監督:ジャウム・コレット=セラ
出演:クノ・ベッカー、スティーブン・ディレイン他
2007年 イギリス=スペイン=ドイツ合作映画

“夢をつかみかけた時”
メキシコからアメリカに不法入国したクノ・ベッカー演じるムネスが、
プロサッカー選手になって夢を叶えていくGOAL!シリーズの第2弾“GOAL!2”
前作“GOAL!”では、プレミアリーグの名門チーム“ニューカッスル・ユナイテッド”のメンバーになり、
GOALするところで終わったのだが、この物語は、そこから始まる。
スーパースター軍団である“レアルマドリッド”に移籍するムネス。
ジダン、ベッカムらと共にプレイをして、大金や家、車などを手に入れる。
しかし、自分を支えてきた彼女をそっちのけにし、スターとして、遊びまくっていた。
そんな時、幼き頃、家を出て行った母、そして国外逃亡した後、生まれた弟の存在…
そんな自分の変化にムネスは対応出来ず、自分の夢をつかませてくれたエージェントまで解雇してしまう。
自分の急激な変化に気づいた時、多くのものを失ったことに気づく。
一人だけで戦っている気分になったムネスは、自分がスター気取りで変わったことに気づく。
また、サッカーと夢の為に立ち上がったのだ。
レアルはアーセナルとチャンピオンリーグ決勝戦に臨むことになる。
アンリなどのスター軍団。頂上決勝が始まる。
夢をつかみかける時、人はまるで自分一人でやったかのような気分になる時がある。
苦しい時の人の助けは、ありがたいと思うが、上手く行っている時はついつい錯覚し、
今まで協力してくれた人のことを忘れてしまうことがある。
しかし、そんなことでは取り返しのつかないことになってしまうことがある。
本来のアスリートの能力すら減少させ、自分のまわりに何も無くなってしまった時に気づいても
後の祭りになってしまう。
GOAL!2は、夢を手助けしてくれる人達の大切さを教えてくれる。
エンドロールに“HIMSELF”という文字がいっぱい出てくる。
本物のスタープレイヤーがたくさん出てきて、映画ならではの特別のアングルで見られるので
サッカーファンは必見だ!!



GOAL!


監督:ダニー・キャノン
出演:クノ・ベッカー、スティーヴン・ディレイン他
2005年 アメリカ=イギリス合作映画

“夢は必要か?不必要か?”
メキシコから不法入国し、ロスで清掃やバイトで生活している若者が、サッカーのプロ選手を夢見て
成長していく姿を描いた“GOAL!”
GOAL!シリーズの1作目は、クノ・ベッカー演じるムネスが不法入国し10年経ったところから始まる。
ロスのクラブチームで試合をしていると、たまたま元イングランドの有名選手に声をかけられる。
不法入国者である彼の父は、トラックを買って清掃業で独立することが夢であった。
「プロサッカー選手という大きな夢より現実を見よ」という主義で、チャンスをつぶそうとする。
ムネスの祖母は私財を売り、イングランドに行くチケットを買ってあげる。
夢を追う気持ちを応援してくれたのだ。
GOAL!公開の頃、クノ・ベッカーと監督ダニー・キャノンが来日した時、話を聞く機会があった。
プレミアリーグのコーチ達にサッカーの基本を学び、撮影に入ったそうだ。
監督も大のサッカー好きで、プロデューサー陣もサッカーと深く関わっているそうだ。
ジダンやベッカムがちょこっと出演したり、ボールタッチやプレイ1つ1つを丁寧に扱っているし、
引きのカットも上手く使って戦術も見ることが出来る、サッカーファンにはたまらない作りになっている。
この作品のテーマは、夢は必要か?不必要か?というところにフォーカスを当てているが
その中で重要視されていることは、“自分自身の強さ”という点である。
チャンスは与えられても、ちょっとした挫折や言い訳で逃げるようでは夢は叶えられない。
そんな人には、夢は不必要である。
自分自身に強い気持ちが持てる人のみ、夢が必要なのである。
変に夢を語って、多くの協力者を得ても、逃げ出してしまうような人間なら、協力者達が迷惑である。
絶対に叶えるんだという信念を持ち努力が出来ないと、夢を持つ資格は無いのである。
GOAL!は夢に向かう若者の大切なハートを教えてくれる映画である。



ホームレスワールドカップ

監督:スーザン・コッホ、ジェフ・ウェルナー
ナビゲーター:コリン・ファレル
2010年5月8日〜ライズX他全国順次ロードショー

“伝えることの大切さ”
僕はこの映画を公開するという話を聞いて初めて“ホームレスワールドカップ”の存在を知った。
2001年に発案され、2003年に初めて開催された。
3年後の2006年には、世界中で2万人以上のホームレスが
ストリートサッカーチームに所属し、48カ国500人もの選手が出場した。
世界中には色々な情況でホームレスになる人達がいる。
戦場となったアフガニスタンは、家を焼かれた人が突然ホームレスになったり、
ケニアのスラム街で生まれながらのホームレスの人もいる。
薬物依存症でホームレスになった人、ソ連が崩壊してロシアになり、都市部で無い人々は職を失い、
都市にやってきても住民になれずホームレスになった人。
父親の暴力で家を逃げ出し、ホームレスになった人。
日本も他人事では済まされない状況である。(日本も2004年から参加している)
社会から捨てられたと思っている彼らに必要なことはいろいろある。
“自分も人間として必要とされていること”“生きていくことの誇り”“人生を切り開いていく力”
サッカーを通し、ワールドカップという国の代表として戦うことで、
その力を手に入れていく様子が、このドキュメンタリーから伝わってくる。
ドラマではなく、ドキュメンタリーという事実だからこそ、強く訴えかけてくるものがあるのだろう。
7人のホームレスを追っているのだが、国も、ホームレスになったきっかけも違う。
様々な社会問題も身近に感じさせられた。
サッカーという1つのスポーツが、世界の問題を浮き彫りにして、解決している。
スポーツというもの、サッカーというものの限りない力や可能性を感じる。
2010年、ブラジルのリオで開催されるこの大会に、
日本はNPO法人ビックイシューや企業・市民のサポートで、
代表チーム“野武士ジャパン”を送り込むそうだ。
“1つのスポーツが人生を変える”という姿をまざまざと見せ付けられた。
このような力を持つスポーツ映画が、この地球には必要である。
すべての人に見てもらいたい作品である。



天国へのシュート

監督:ヨラム・ルーセン
出演:ヤニック・ファン・デ・フェルデ、トーマス・アクダ、ウェンディ・ヴァン・ディーク 他
2004年 オランダ映画

“親子の“ゴースト”的感動ストーリー”
“熱狂的なサッカーファン”“オレンジ軍団”として世界中に知れ渡っている
サッカーオランダ代表チーム。
サッカーが好きで、オランダ代表を目指す少年、サッカー好きで少年のコーチ的存在の父、
歌が大好きで優しい母、そして妹。
オランダではごく普通の家族だった。
スカウトが見に来る試合、少年は自分のため、父のため、頑張ったが
父は熱狂するあまり、心臓発作で倒れてしまう。
少年は責任を感じる。父はそのままあの世に行ってしまうのだ。
父の店は経営がうまく行っていなかったので、税理士が入ってきて母に近づいていく。
少年は足に怪我をして、サッカーをするなと言われてしまう。
全てを失っていく気がする少年。
そんな時、父の亡霊が彼の前に現れる。
父はサッカーをコーチし、悩みを聞いてくれる。
マンチェスターユナイテッドの飛行機事件で亡くなったメンバーや、
かつての死んだ大物サッカー選手と練習したりと、
古くからのサッカー好きな人達にはたまらないストーリーになっている。
ヨーロッパやアフリカにとって“サッカー”は単なるスポーツではなく、
文化として、家庭、学校、生活に根付いていると感じさせられる1本です。
“ゴースト”的な展開で、すごくファンタジックなストーリーが進んでいきつつ、
子供のスポーツにちょっと熱の入った親には、自分の立ち位置を考えるのに良い作品です。