ロード88 出会い路、四国へ

監督:中村幻児
出演:村川絵梨、小倉久寛、須藤理彩他
2004年 日本映画

“出会いと別れ”
白血病の女の子がスケートボードで四国88ヶ所のお遍路の旅をしている様子を描いた
“ロード88 出会い路、四国へ”
その旅の中で少女が出会った人は、昔売れていたコメディアン、会社が苦しくて犯罪に手を貸してしまった社長、
そして子供の頃いなくなってしまった母。
88ヶ所巡りを歩くかわりにスケートボードでしているだけなので、特別派手なトリックなどは無く、
プッシュとスケーティングだけなのに、何故かスケートのシーンが頭から離れない。
きっと心理描写の中に上手く溶け込んでいるので、より心に残るのであろう。
このアプローチは僕にとってとても新鮮だった。
ストーリーで気になったのは、“出会い”と“別れ”を上手に描いていること。
誰一人として完璧な人間などいない。
だからこそ、いろいろな人と出会い、影響を受けたり、成長出来るのである。
そして別れは、忘れない為の儀式なのかもしれない。
ずっと一緒にいると当たり前になってしまい、大切さに気付かないこともある。
でもずっと一緒にいる人のことこそ、当たり前にしてしまってはいけないのである。
最近同じ人数人としか会っていない人は、もっと人と出会いましょう。せっかく一度きりの人生なのだから。
出会いと別れの大切さを教えてくれるこの作品。
ずっと家にこもっている人や、誰とも会わない日々を送っている人に見て欲しい作品です。



DOG TOWN&Z-BOYS

監督:ステイシー・ペラルタ
出演:セファー・スケートボード・チーム
2001年 アメリカ映画

“LAサーフスケートの全て”
トニー・アルバ、J・アダムス達のゼファーチーム“Z-BOYS”と言えば、スケーターやサーファーなら皆知っていることだろう。
彼らがサーフスケートを作り出し、近代スケートボードを創り出した男達なのだから…。
そんなZ-BOYSのドキュメンタリーフィルムがこの“DOG TOWN&Z-BOYS”だ。
まず、よく写真やフィルムが残っていたものだと感心する。
60年代、サーファー達の間で流行したスケートボードは65年頃下火になった。
カリフォルニアルート66号の終点、北は金持ちのサンタモニカ、南はゴーストタウンのベニスビーチ。
67年に遊園地は閉鎖され、桟橋でローカルサーファー達がしのぎをけずっていた。
その頃シェイパーのジェフ・ホウやスキップ、イングロム等が作ったサーフショップが“ゼファー”だ。
そこの革新的なボードを求め集まってきたスタイルを持つ若者達でチームを結成した。
その中に現アルバスケート元世界チャンピオンのスケーター“トニー・アルバ”や
伝説のスケーター“ジェイ・アダムス”“ステイシー・ペラルタ”などがいた。
ステイシーはチームを持っていて、トニー・ホークやトミー・ゲレロを発掘したり、
クレッグ・ステシックとビデオを作り始めたり、この作品の監督も務めている。
日本の伝説スケーター“ショウゴ・クボ”もゼファーのメンバーだった。
Z-BOYSの伝説は色々聞いてきた。特にハリウッドの屋敷のプールの水を抜いて、
こっそり入って、スケートをして、エア技が世界で最初に誕生したとか、
全米の大会にいきなり出場して勝ちまくったとか、古いスケート雑誌で見たことはあった。
しかし、今回フィルムで事実を見せ付けられると、本当に衝撃的である。
“あの時代に、あのトリックを!!”という衝撃より、“こんな風にして新しい時代が生まれるんだ!!”という
感動の方が大きかった。
大人になって当時を振り返る彼らの言葉は全てが力強く、“スタイル”にこだわり、
仲間という絆で結ばれていたムーブメントを作り出した男達に、変な迷いは無かったのだろう。
“サーフィンのようにスケートボードをしたい”“スタイルを追求したい”ただそれだけのためにスケートを楽しみ、
今のスケートの原型を創り出した。
スターライダーになってチームがばらばらになってからは、クスリに手を出した人、
金を求めスケートが楽しめなくなった人、失踪した人など人生様々だが、
この映画を通して何かが誕生する時の瞬間を見ることができたような気がして、なんだか興奮してしまった。
スケートボード、サーフスケートの歴史を見て、カルチャーの本流を多くのスケーター達に知ってもらい、
もっと楽しいスケートライフを送ってほしいものである。



ワサップ!

監督:ラリー・クラーク
出演:ジョナサン・ベラスケス、フランシスコ・ペドラサ 他
2005年 アメリカ映画

“貧富の差とスケートボード”
サウスセントラルというゲットーに住んでいるスケートボード好きの若者が
高級住宅街のビバリーヒルズにスケートを楽しみに行って巻き込まれる事件から、
自分達を考えていく様子を描いた作品。
「キッズ」「ケンパーク」「ブリー」など若者のストリートライフを撮り続ける監督ラリー・クラークらしく、
ストリートをリアルに描いている。
ストリートで集まって、階段越えやスケーターズロックを大音量で使うなど、
スケーター達には“リアル”なテイストで入っていきやすい作品であろう。
サウスセントラルは黒人とHIPHOPと銃の街。
そんな中、若者達はスケートを愛し、パンクやロックを好み、ラテン系の自分達のアイデンティティを探しつつ
笑いながら生きている。
銃を持たず、無邪気に笑って生きていこうとする彼らに、何故か悲しみを感じてしまった。
仲間が殺されても、祈り、笑うしかない。
復讐をすると、銃で撃たれ、新たな悲劇が生まれることを知っているからだ。
たまたま遊んでいたら警察に捕まり、女の子と知り合って家に行くと乱闘になり逃げていると住人に銃で撃たれる。
仲間を失うと逆上して復讐に行く作品は多くあるが、
自分達の中で悩み、どうしようも無いからと悲しみ、ただ逃げていく。
白人でも黒人でもない彼らの悲しい宿命がじわじわと伝わってくる作品である。
楽しくスケートで遊んでいる時と街の中を逃げるためスケートに乗っている無表情な時の彼らの顔が
脳裏に焼きついている。
世界中のすべてのスケーターが笑って楽しめるような世界になってほしい。
日本に住んでいるから、貧富の差や人種問題をあまり感じないが、
この作品はじわりじわりとその現実を突きつけてくる1本である。



スケート・オア・ダイ

監督:ミゲル・クルトワ
出演:ミッキー・マウ、イドリス・ディオブ、エルサ・パタキ 他
発売:アスミック  2008年 フランス映画

“フランスのリアルストリートがわかるエンターテイメントSK8ムービー”
EXやトリプルX以来のスピード感あふれる本格的エクストリームムービーを見つけてしまった。
それがこの“スケート・オア・ダイ”
パリのリアルストリートをうまくストーリー化し、スケートボードを使ったエンターテイメントムービーだ。
パリのインラインスケートシーンであるフライデーランや、ストリートバスケのシーン、
クローズのクラブイベント(これは少しデフォルメしすぎているが、ストーリーの中で見るとまったく気にならない)、
スケーター達。
どれもリアルに表現出来ている。ファッションもチープでなく、VANSやNIKEもスケートデッキのシューズを
きちっと履いているし(スタイリストがわかっていないとスケートボードのシーンなのにテニスシューズとか履かせたり
して無理があったりする)、フランスのストリートとスケートファッションもうまく融合されている。
さらに、ヨーロッパのエンターテイメントスケーター達が吹き替えや出演しているので、トリックも最高。
VANSのオーストリアムービースタースケーター“Chris PFANNER”、フランスのEmericaのライダー
“Maxime GENIN”など、コンテスト系でなく、ビジュアルで世界に発信するライダー達が出演している。
彼らはいかにSK8を格好よく見せるかを常に考え、世界に発信しているだけあって、見せ方が上手い。
Alexis LAMENDINやAnthony ROUSSE、Jullen MEROORなどヨーロッパの新旧ライダー達のライディングにも注目!!
役者の2人のプッシュにもリアリティがある。元々やっていたか、相当練習をさせたと思われる。
立ち姿やプッシュやドロップという何気ない様子に嘘があると、一気にリアルさに欠ける。(日本のスポーツドラマに多いが…)
魅せるスポーツであるSK8をストーリーに上手く使い、表現し、映画としての面白さ、カルチャーとしての発信、
若いX系の人達の共感、色々な要素が詰まった1本である。
これこそリアルストリートのエンターテイメントX系ムービーだ!!



ロード・オブ・ドッグタウン


監督:キャサリン・ハードウィック
出演:ジョン・ロビンソン、エミール・ハッシュ、ヴィクター・ラサック 他

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2005年 アメリカ/ドイツ映画

“スケートクラッシックスがよみがえる”
“DOGTOWN&Z-BOYZ”はトニー・アルバ、ジェイ・アダムス、ステイシー・ベラルタなどの
スケートボード創世記のLAのレジェンドスケーター達のドキュメンタリーである。
ベニス近辺のサーファーであり、サーフショップ“ゼファー”にたむろしていた悪ガキというか不良グループの若者達が
世界のスケートシーンをひっぱっていく、あの伝説の頃をフィルミングしたものである。
数年前、トニー・アルバが来日した。
“DOGTOWN&Z-BOYZ”の印象とは多少違うものの、やんちゃぶりは健在だったので少し安心した。
その一方、子供達には気軽にサインするし、スケートに対しては熱く語るし、スケートに対する強い愛情を感じた。
だからこそ、今でもトニー・アルバは色あせない。
ステイシー・ベラルタは、現在世界で最も有名なスケーター、トニー・ホークを育てた男でもある。
シーンに今でも影響を与え続けている。
ジェイ・アダムスは今でもスケートを続けているそうだが、相変わらず暴れまくっているらしい。

そんな彼らを役者を使って再現した映画が、“ロード・オブ・ドッグタウン”だ。
ストーリーは“DOGTOWN&Z-BOYZ”をかなり忠実に再現している。
びっくりするのは、役者達がしっかりスケートに乗れていることだ。
オーリーはもちろん、フリップもきちっと決めるし、ボールライディングもしっかりしている。
さらに表情や心情がドキュメンタリーよりしっかり表現されているため、気持ちが入りやすい。
ドキュメンタリー的リアリティではないが、心情がはっきり分かる部分で、よりリアリティを感じてしまった。

スケートを通して、若者達の心の葛藤が見えてくる。
最近のスケーターの中には、ビジネスを先行で考えている人もいる。そんな人に、この作品を見て感じてもらいたい。
スケートボードはカルチャーであり、仲間をつなぐツールであり、自分のスタイルを求める自己成長のものであるということを…。

ロード・オブ・ドッグタウンを見ると、スケートボードの全てが見える。



クール・ボーダーズ(GRiND)

監督:ケイシー・ラ・スカラ
出演:マイク・ヴォーゲル、ヴィンス・ヴィーラフ、アダム・ブロディ 他

2003年 アメリカ映画

“SK8 is FUN”
“クールボーダー”というスノーボードの作品があったが、この“クール・ボーダーズ”はスケートボードの青春コメディ映画。
高校の終わりにプロを目指しチームを組んだ変わり者の4人が、
バンの上にジャンプランプを積んでスケートのツアーに参加し、アピール。
スポンサーをつける為にあの手この手でアプローチするというストーリー。

女好き、バカ、ダメな奴、熱い奴の4人が、まったく通用しそうにない手口を使ってみたりしながら旅をしていく。
エッチなところもあり、“jackass”+“グローインアップ”みたいな作品と言うと、バカにする人もいるかもしれないが、
スケーター達にとってはお宝物の作品。
X GamesのチャンピオンVANSのバッキー・ラセックやボブ・バーン・クイスト、ピエール・リュック・ガニオンなどのトップスケーター達が
大会やパークのシーンでガンガン技を決めている。
スケーターでjackassにも出ているバム・マージェラやエレン・マクギーニもトリックを見せている。
特にバムは演技のシーンもたっぷり。
さらに、オールドスクール派には魅力の、あのマーク・ヴァレリーも出ている。
スケートのトリックビデオとして見るだけでも価値がある。
とにかく、パークも凄いし、ファッションもVANS、ZOO YORK、etnies、ボルコム、elements、emericaなど、
スケーターアイテムを着こなしているので、スケーターファッションをキメたい人も参考になる1本である。
「だったら、スケートビデオでいいじゃないか?」という人もいるだろうが、ストーリーがとにかく陽気で楽しいので、
友達と笑いながら見ると数倍楽しめるだろう。
さらに、“自分に素直に生きろ”というテーマが全体に流れているので、スケーター達の核心にも繋がっていると思う。
この作品を通して、ますますスケートボードって楽しいものなんだと思わされることだろう。

こんな映画が作れるのも、アメリカのスケートシーンがメジャーであるからこそ。
スケートボードをやっていて難しいことを考えている人、スケーター達を見て、ちょっと恐い人達と思っている人、
この作品を見て考えを改めて欲しい。“SK8 is FUN”