ステップ・アップ3

監督:ジョン・チュウ
出演:リック・マランブリ、アダム・G・セヴァーニ、シャーニ・ヴィンソン他
2010年 アメリカ映画

“踊るということ”
ストリートダンスをフューチャーし、ダンサー達の競技性(大会)をフォーカスする
ステップ・アップシリーズの第3弾“ステップ・アップ3”
作品も毎回ステップアップしていき、今回の作品はシリーズの中で最も面白い作品であった。
ダンス的に言うと、ブレイクダンス“B-Boying”のチームバトルがメインに扱われているのだが、
タップやジャズ、タンゴなど様々なジャンルと、
今回主役の1人がNY大学の工学部に入った若者という設定なのでエレクトリックな部分もある。
BMXやスケーターも上手く取り入れ、ストリートのにおいプンプンの作品です。
友情、愛、裏切り、信頼、いろいろなテーマが上手くストーリーとして綴られているが、
ダンスシーンの格好よさは文句のつけようが無い。
ダンスの良さもきちっと見せ、B-Boyバトルの真剣勝負も伝わってくる。
この作品の良さは、視点が偏っていないことだ。
スラムや貧しい子達にフォーカスして、その人達の言い分だけで描かれたダンス映画は今までもたくさんあったが、
この作品は主人公の1人として、高校でダンスをやっていたが我慢して、
普通に受験し大学に受かった若者を描くことで、様々な境遇の人の“踊る”意味を表現している。
貧しい人にとってはダンスという共通点で今まで味わったことの無い“家族”を感じ、
普通の生活で愛情たっぷり育てられた若者もダンスをしている時だけ感じる
“特別感”や“解放感”をモチベーションとしている。
ハングリーなことだけがモチベーションではない。
それぞれの人間が“スポーツにかける理由”がある。
“踊るということ”は、人それぞれ理由は違えど、表現することや目標が1つになれば皆で前に進めることを教えてくれる
素晴らしい作品です。



ステップ!ステップ!ステップ!

監督:マリリン・アグレロ
2005年 アメリカ映画

“子供達のスポーツ教室”
NYの子供達が学校別で社交ダンスにチャレンジするドキュメンタリー作品“ステップ!ステップ!ステップ!”
マンハッタン、ブロンクス、クイーンズ、ブルックリンとニューヨークの全地区の小学校の中にクラブというか、
プログラムを作り、予選から勝ち上がっていく様子、練習風景などを密着している。
貧しい地域、犯罪の多い地域、高級な地域、いろいろなところを取り上げている。
日本で言うと、地域クラブのような形で無料で希望者を募り、参加させ、
Pick Upしたメンバーが大会に出場する。
ダンスを通して友達を作ったり、ダンスが出来ても学習態度や生活態度が悪いとメンバーから外されたり、
ダンスを通して礼儀や文化、社会を学ばせつつ、スポーツとしての指導をしている。
僕も総合型地域スポーツクラブなどでスポーツを時々教えているので、この作品はとても参考になった。
スポーツを通じて子供達に教えてあげられること、伝えられることはたくさんある。
教える人間もそのことを理解していないといけない。
1つのことに集中し、チームで目標を持つことの大切さ。
最初は文句を言っている子供やチームを乱す子供、相手の目を見ることが出来ない子供達が
大会が進むにつれ、一体化していくのが本当によくわかる。
とても勉強になる良い映画でした。



ターン・イット・ルース

出演:TAISUKE、BENJ、HONG10、LILOU、RONNIE、ROXRITE他
2009年 フランス映画

“B-Boyが背負うもの”
2007年のRed Bull BC OneというB-Boy(ブレイクダンス)個人世界一決定戦と、
出場した16人の中から6人をピックアップし、ドキュメンタリーを加え構成された映画“ターン・イット・ルース”
南アフリカで行われたこの大会に集まった世界から選ばれた16人のB-Boy。
日本人のTAISUKE(2008年準優勝)も取り上げられ、長崎から東京に出てきた若い頃の苦悩を見ることが出来る。
BC Oneの常連でもあるフランス在住のアルジェリア人のリルーや、メキシコからの移住者、
アフリカのスラム出身者と、この大会に出場しているB-Boy達は裕福とは言えない人達が多い。
皆、“ダンスが無ければ犯罪者になっていた”とか“自分の表現すら出来なかった”とダンスに助けられ生きていると語る。
このくらいのハングリー精神が無いと、この大会には出られないのかもしれない。
僕も2009年のNY大会と2010年の東京大会を生で体感している。
会場の興奮度は他のダンスの大会では見られないものだった。
人生そのものを表現しバトルするこのBC Oneは単なるダンスの大会ではない。
己の全てを相手に見せ付ける大会である。
人生を賭けてダンスでバトルする。
これはB-Boyingのルーツであるアメリカ・ブロンクスで、けんかの替わりにダンスでバトルしたあの精神を
今でも最も表現しているのではないだろうか?
単なるダンスの映画ではない。
スポーツが人生を救うことを教えてくれる作品である。



ストンプ!

監督:イアン・イクバル・ラシード
出演:ルティナ・ウェスリー、ドウェイン・マーフィ、トレ・アームストロング他
2007年 アメリカ映画

“親が望むこと”
姉が薬物中毒で亡くなりお金が苦しくなったので、私立の高校を辞め、
地元の公立高校に通いだす1人の女の子。
その地区はスラム的な地区で犯罪は日常的に行われており、
奨学金をもらい大学に行って、早くこの地域を出て行きたい彼女は、
母の夜も寝ないで働く姿を見て、“STOMP”の大会の賞金で少しでも楽にしてあげたいと思う。
亡き姉はSTOMPの天才的ダンサーで多くの大会で優勝していた。
そんな姉の姿を見て、自分もやっていたSTOMP。
勝ちそうなチームを渡り歩き、友達も裏切ってしまう。
彼女にとってSTOMPは街を出て大学に行く為の資金作りであり、
大学に行く金を作ろうと必死で働く母を楽にしてあげる為の道具でしかなかった。
しかし、そんな気持ちで踊っている彼女はあと一歩のところで負けてしまう。
仲間に許してもらい、楽しむ為、皆と一体化する為だけに踊った時、本当の喜びを手に入れるのである。
スポーツで夢や金やいい生活を手に入れたいという人もたくさんいるだろう。
しかし、それは結果的についてくることであって、根本にそのスポーツ自体が好きであったり、
仲間と共に頑張りたいという気持ちが無いと、真の成功には結びつかない。
“ストンプ!”は、そんなピュアな心を取り戻したい時、見て欲しい作品です。



最強絶叫ダンス計画

監督:ダミアン・ダンテ・ウェイアンズ
出演:ショシャーナ・ブッシュ、デイモン・ウェイアンズ・Jr他
2009年 アメリカ映画

“ダンス映画ファン必見のパロディムービー”
昔“裸の銃を持つ男”という色々な映画をパロディでつないでいく映画シリーズがあったが、
この作品“最強絶叫ダンス計画”はダンス映画・音楽映画ばかりを集めたパロディムービーです。
“フットルース”“YOU GOT SERVED”“ストンプ・ザ・ヤード”“STEP UP”
“フラッシュダンス”“ヘアスプレー”“フェーム”“ダンスレボリューション”などのダンス映画に加え、
“Ray”“ドリームガールズ”などの音楽映画も入っている。
日本で言うと「とんねるず」などがよくやっているようなスタイルでパロディをやっているのだが、
そこはMTVが制作しているだけあって、
ヒップホップなどのダンスシーンも“セイブ・ザ・ラストダンス”の振付師が指導していたりと、
音楽やダンスの制作チームも超一流でダンスのクオリティはすごく高い。
ストーリーやテーマはパロディなので、強引なところも多々あるが、
このような作品を通して色々なダンス映画に興味を持つ人は多いのではないかと思われる。
元々、ダンス映画が好きな人にとっては何倍も楽しめる作品になっています。
このようなパロディ作品が、ダンス映画やスポーツ映画を見るきっかけになってくれるのなら
とても良いことではないかと思っています。
ゲイとか下品な部分もたくさんあるので、そういうものが大丈夫な人は是非見てください。



昴-スバル-

監督:リー・チーガイ
出演:黒木メイサ、Ara、平岡祐太他
2008年 日本映画

“バレエの世界”
僕はこれまで数々のダンス映画を見てきたが、バレエの映画を見たことはほとんど無かった。
トゥシューズを履いて、踊り全体を見せ、芝居もしなくてはならない。
演舞的要素も多いだろうから吹替えも難しいし、吹替えをするとやたらと上半身と下半身が別カットの画になってしまう。
バレエの映画は制作が本当に大変だと思う。
バレエ映画を作るには、本当に踊れて芝居が出来る人が必要なのである。
そんな不安を抱えながら“昴-スバル-”を観た。
主演の黒木メイサの踊りを見てそんな気持ちが一切無くなった。
完全に踊っていて、突き刺さるような芝居をしているではないか。
彼女が1人のバレリーナに見えた瞬間、一気にストーリーに入っていくことが出来た。
スポーツ映画の良さでも悪さでもあるのだが、役者が1人のアスリートに見えた時、ストーリーに引き込まれていく。
しかし、この人絶対にプレイヤーじゃない!と思った時は、全てが単なるつくりモノに見えてくる。
その点ではこの作品は大成功なのではないだろうか?
病気の双子の弟の為に、体で表現して毎日の出来事を伝えていた少女は、
やがて大人になり、バレエという踊りで自己を表現する世界にのめり込んでいく。
小さなキャバレーで教えてもらっていたダンスから、プロのダンスの世界に歩み出すのだが、
そこは競争と孤独さえも感じる冷たい世界。
多くの事を学び、練習し、自己を磨き続けなくてはならない。
どんなスポーツでも同じだと思うが、バレエは伝統や派閥などがある世界。
上を目指す為、立ち向かっていく勇気が伝わってくる。
夢の途中を走り続けている人に是非見てもらいたい作品です。



メイク・イット・ハプン!

監督:ダーレン・グラント
出演:メアリー・エリザベス・ウィンテッド、テッサ・トンプソン 他
2008年 アメリカ映画

“田舎と都会”
シカゴから何百kmと離れた地に住むダンス好きの少女。
母もダンサーを目指していて彼女が10歳の頃に他界。
自分が夜遅く帰った日、父が家で倒れていて手遅れで他界。
ダンサーになりたいという夢を持ちながら兄と2人で、父の残した自動車工場を守るために働く日々。
しかし、3年たって、自分の夢を捨てきれず、1人シカゴに向かう。
ダンスアカデミーに通っていると兄に嘘をつき、キャバレーのダンサーとしてダンスを磨く。
いつかダンスアカデミーの狭き門に挑戦し、トップになることを目指して…。
そんな時、工場の経営がうまくいかない中、兄がシカゴまで会いに来る。
ダンスアカデミーで勉強していると信じていたのに、キャバレーで踊る妹の姿を見て肩を落とす兄。
父の形見でもある工場を救うためにシカゴから再び田舎に戻る彼女。
そんな彼女の夢は?というストーリーなのだが、ストレートに友情、家族愛、夢が描かれていて、
すがすがしく見られる作品だった。
この作品で「私は田舎者だから…」というニュアンスのフレーズが時々出てくる。
僕はこの時代に、田舎に住んでいようが、都会に住んでいようが大差は無いと思う。
むしろ田舎だからこそ発信できることだからいい部分もあるのでは?とも思う。
音楽の世界でも、沖縄や仙台のアーチスト達がライブの時だけ東京に来て、
制作は地元でやるなんて、いっぱいあるし。(仙台はそんなに田舎ではないが、
僕の知っている和太鼓グループの拠点・美里町などは本当に田舎だったもので…)
自分たちのペースで創作活動をし、世界に向けて発信出来るのだから、
ダンスもスポーツも音楽も、どこでやっていても構わないのではないか?と思う。
しかし、ただやっていても埋もれるだけである。
そこにアイデアや仕掛けが必要だし、苦労もすることだろう。
全ての人間が発信者や表現者になれるはずなのだから…。



Shall we ダンス?

監督:周防正行
出演:役所広司、草刈民代、竹中直人他
1996年 日本映画

“きっかけと自分の世界”
社交ダンスの定番となっている周防正行監督の“Shall we ダンス?”
僕はあるタレントの社交ダンスの1つ“タンゴ”の舞台のプロデュースや演出を
やっていたので、この世界のすごさを知った。
タンゴのアジア大会に撮影で行った時、舞台裏を見て、
エンターテイメントであると同時にスポーツだと思った。
ESPNなどのスポーツ専門局で、社交ダンスを扱っている理由を肌で感じてしまった。
伝統と創造性、練習と相手とのコンビネーションなど、
大会で勝つためには、実に多くの要素を必要とする。
しかし、社交ダンスのイメージは“セレブのもの”とか“少し恥ずかしい”など
決して誰もがすぐにやってみたいものとして、日本人はとらえていないだろう。
そんなダンスの世界に飛び込み、はまっていく様子を、この作品はうまく取り上げ
人間ドラマとして繊細に描いている。
たまたまダンス教室から外を見ていた女性に惹かれた男、
医者に健康のために進められた男、妻がやっていてバカにされたくないからこっそり始めた男、
3人の違うきっかけで始めた男達が、同じスクールでどんどんダンスにはまっていく様子を描いている。
どんなものでもやってみないと、その面白さや奥深さに気づかない。
しかも、楽しみ方は個人の自由である。
しかし、その人なりに思いっきり練習したり、トライしないと本当の楽しみは生まれないのである。
それぞれの立場や生活があり、その中で思いっきり楽しむことで、
仲間が出来たり、人生や考え方を変えてくれるものになる。
“Shall we ダンス?”は、トップダンサーから始めたばかりの男達まで
いろいろな立場の人がそれぞれ影響を与え、良い方向に進んでいくことを教えてくれる。
基本にあるのは、そのスポーツそのものを愛することが出来るかが大切なのだ。



フラッシュダンス

監督:エイドリアン・ライン
出演:ジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー 他
1983年 アメリカ映画

“B-Boyの存在が世界に”
決してHIPHIP映画ではないが、この映画が世界中にブレイクダンス、B-Boyの存在を知らせたという事実は
誰にも曲げることは出来ないだろう。
ジェニファー・ビールス主演の“フラッシュダンス”はバレエダンサーになりたい1人の女性が夢を掴む為、
まっすぐに生きていく様を描いた作品である。
アイリーン・キャラのフラッシュダンスの曲に乗って街の中を自転車で走り、
男に混ざって溶接をしているオープニングが終わると、バーでのダンスシーン。
有名な椅子を使って上から水をかぶるあのダンスだ。
水しぶきを飛ばしながら、逆光の中、踊っている様子は何十年経っても忘れることは無い。
独学でダンスをやってきた主人公は、バレエ団のオーディションを受けようとするが、
願書の時点で過去の経歴を書かなくてはならなかったり、自分ひとりだけが貧しい格好だったので逃げ出す。
トレーニングが終わり、帰っていくシーンで突然ジャージや革ジャン姿のロックステディクルーが登場し、
ブレイクダンスを踊りだす。
路地に置かれたラジカセ。流れてくる曲は“IT'S JUST BEGUN”
クレイジーレッグス、プリンスケンスウィフト、Mr.フリーズ、Normski、Frosty Freezeの5名が出演。
傘を使ったムーブや、オールドスクールのすごいスピンを見せつける。
最後のコンテストのシーンで、主役のアレックスがブレイクダンスを取り入れた時の
審査員の拍手と笑顔が印象的である。
伝統のバレエの中に、ブロンクス生まれのブレイクダンスを入れた時、
ダンスが持つ“自由な表現”という幅が広がったことを伝えたかったのだと思う。
僕もあのシーンで初めてブレイクダンスを知った。この映画が持つ意味は大きい。
B-Boyを世界に発信した映画なのだから。



ダンス・レボリューション

監督:ビリー・ウッドラフ
出演:ジェシカ・アルバ、メキー・ファイファー、リル・ロミオ 他
2003年 アメリカ映画

“子供を信じてあげる心”
ニューヨークの空撮とリズムの効いたラップミュージックとクラブから始まる“ダンス・レボリューション(原題HONEY)”。
CDJから繰り広げられる音楽とHIPHOPダンス。クラブの1歩外に出るとB-BOY達のブレイキン。
金や変な争いも無く楽しい世界が広がっていた。
でも彼らは札付きの悪とされていて、警察が来るとBMXで逃げていた。
主人公のハニーはセンターでダンスを教えている。
バスケ、インライン、BMX、HIPHOPダンス、ブレイキン…ストリートのカルチャーがつまりまくっている。
ギャングに憧れているが、ダンスの才能のある少年と出会った彼女は、少年に自分のスクールに来るように勧める。
ヤクの売人の手先のように使われていた少年。
プロモーションビデオの現場に連れて行ったりして、ダンスには“夢”があることを体感させていくと、
少年は徐々にギャングから離れ、“夢”を追いかけようという気持ちが芽生えていく。
しかし、父からの暴力、業界を仕切っている人からあっけなく切られたりすると、
少年は“夢”を持つことに失望し、ギャングに戻っていく。
しかし、彼女はそんな子供達の集まれる場所を作ることを目標にチャリティライブを行なう。
このライブで“夢は自分達の力でつかめる”ということを学ぶ。
子供達の才能を信じ、大人達がその環境を作ることの大切さを、この映画は教えてくれる。
格好よいものに子供達は憧れる。“ダンスやスポーツは格好よい”“人のために何かをすることは格好よい”など、
大人が子供達をひっぱれる存在になって示していかないといけないのだと痛感した。
特別なことではなく、生活の中から自然に何かを伝えられる大人になりたいと思わせてくれる1本です。
作り的にはティーンエイジャー向けに作られている作品だと思うのですが、是非大人に見てほしい作品。
子供達を信じてあげる心、あなたは忘れていませんか?



YOU GOT SERVED

監督:クリス・ストークス
出演:オマリオン、マーカス・ヒューストン、ジェニファー・フリーマン 他
2004年 アメリカ映画

“圧倒されるダンスシーン”
オープニングから圧倒されるようなダンスバトルで作品に引き込んでいく。
全編“B-BOYING”のチームメイトの友情のストーリーなのだが、
悪ながら、ダンスで、生活や気持ち、友情の大切さを手に入れていく話である。
数チーム出場するのだが、それぞれのチームにスタイルがあって面白い。
既存のチームかと思っていたが、この映画のキャスティングで、1からオリジナルということに驚かされた。
コリオグラファーの人のネタの多さにびっくりしてしまう。
ネタのバリエーション、コミカルにバカにしていく感じ、まるで本当のバトルの迫力がある。
撮影中に、負けるはずのチームが押しすぎて、撮影を中断したというエピソードもあるそうだ。
ブレイクダンスのバトルの面白さの全てが見られる1本である。
さらに、ストリートバスケやLAスタイルのストリートファッション、ストリートの若者の問題など
ストリートカルチャーをふんだんに盛り込んでいて、
B-BOYING、ブレイクダンスのチームバトルやその考え方を見る第一歩として見たい人にはオススメの1本です。



ダンサー

監督:フレッド・ギャルソン
出演:ミア・フライア、ガーランド・ウィット、ジョシュ・ルーカス 他
1999年 フランス映画

“障害と兄妹愛”
ニューヨークで兄と暮らす1人の失語症の妹。
彼女は毎週土曜日にNYのクラブでDJからあらゆるジャンルの即興リミックスに合わせ踊るという
バトルを受け、勝ち続けている。
兄は妹を守ることを生きがいとし、自分ものし上がることを考えていた。
そこに現れた1人の科学者。
ダンスの動きで音を創る発明をした男が彼女に近づく。
金にもならないことなので兄は反対するが、彼女は“音”を自分から出せることに喜び
“自分の新しい未来”のために踊り始める。
ミア・フライアの圧倒的な存在感とダンス。
リュック・ベッソンチームによる立体的カメラワーク&編集、
そしてJB、オーティスからプロディジー、ファットボーイスリムなど
オールラウンドクラブミュージックがうまく作品の中で使われている。
障害を持つ女性の苦しみ、この苦しみから解放してやりたいため何でもやってしまう兄。
2人はお互いに1人立ちできていなかった。
しかし“未来”が見えた時、共にある部分は共存し、ある部分は自分のために歩いていくことを知る。
ダンスとは、“体と音と感動を表現すること”
この映画でダンスの素晴らしさを再認識させられました。
今、自分を勝手に枠におさめている人に見てもらいたい作品です。



プラネット B-BOY

監督・制作:ベンソン・リー
配給:トルネード・フィルム+イーネット・フロンティア
2010年1月9日〜渋谷シネクイントにてレイトショー

“カルチャースポーツの真髄を見よ”
世界三大B-BOYバトルの1つ、バトル・オブ・ザ・イヤーのドキュメンタリー映画“プラネットB-BOY”
B-BOYとは、ブレイクダンスをする人のことを言うのだが、この大会はクルー対抗バトルである。
フランス・アメリカ・日本・韓国のチームがフューチャーされていて“個”が強いストリートカルチャーにおいて、
“チームのつながり”と“HIPHOP”という文化への尊敬の念が詰まった1本である。
それぞれの“生き方”と“世界大会”。
アスリート的一面が強くフォーカスされている作品だが、
カルチャーとしての部分もそれぞれの国民性も含め、しっかりと描かれている。
NewYorkで個人のB-BOY世界一決定戦“BC ONE”を生で見て撮影をしてきたが、
B-BOYバトルの面白さは人生や考え方がストレートにダンスに表れてくることであろう。
規定が無い分、自由に発想できるこのジャンルでは、それぞれが新しいスタイルを追い求めている。
物まねでなく、自分達のスタイルを創り出し、創り上げたチームが世界一をとることができる。
規定が無い中で勝敗をつけるのは難しいと思うが、気持ちのぶつかり合いを楽しく見る事ができた。
まさにエクストリームスポーツであり、エンターテイメントショーだ。
NewYorkブロンクスで生まれたHIPHOPカルチャーの1つ“B-Boying”が、
しゃべらなくても人に伝えることのできるエンターテイメントツールだということ確信させてくれる
ドキュメンタリー映画“プラネットB-BOY”
この1本を見てカルチャースポーツの真髄を知ると良いだろう。




STEP UP2〜THE STREET〜

監督:ジョン・M・チュ 製作総指揮:アン・フレッチャー
製作:アダム・シャンクマン他
出演:ブリアナ・エヴィガン、ロバート・ホフマン 他
2008年 アメリカ映画

“B-BOYINGは全ての人のもの”
前作“STEP UP”は、B-BOYNGやHIPHOPダンスの世界に生きてきた男の子と、
バレエダンスの世界に生きてきたお嬢さんが、ダンスを通じて住んでいる世界を超え、
1つになっていく融合の素晴らしさを教えてくれたダンスムービーだった。
この作品の第2弾はどんな作品だろう?と思ってみたが、まったくの別ものだった。
これは“B-BOYING”は全ての人の“自由”を表現するダンススタイルだと教えてくれる1本。
ストリートでワイルドに生きている人が“リアル”で、学校に行っている人はB-BOYになれない訳じゃない。
自由にダンスで表現し、友達と1つの目標に向かって何かを創り出そうとしている人全てが
B-BOYになれるということを教えてくれる。
B-BOY No.1を決める“BC ONE”の世界大会でニューヨークに行ったが、
そこは本当にフレンドリーな空間でバイオレンスのにおいなど無い。
“B-BOYは怖い”みたいな変な空気が流れているが、
“B-BOYING”は全てのブレイクダンスを愛し何かを創ろうとしている人達のものだと教えてくれる作品だった。
作品のカラーリング、色やトーンも好きな作品だし、HIPHOP、B-BOYINGのパワーがあふれている気持ちの良い1本です。



ステップ・アップ


監督:アン・フレッチャー
出演:チャニング・テイタム、ジェナ・ディーワン、マリオ・ドリュー 他
配給:エイベックス・エンタテインメント、松竹
2007年3月17日〜ロードショー

“夕陽にジャンルはとけていく”
バレエとHIPHOP。伝統と破壊。上流階級とゲットー。厳格なステージとストリート。
とにかくこの“ステップ・アップ”は、対極的な2人の主人公が融合することが全てである。
まずはアメリカのアートスクールとゲットーのクラブ。
アメリカのアートスクールはよくアメリカの映画やドラマの題材になっている。
例えば、“フェイム”とかがそうだが、上流階級の人達だけでなく、
貧しくても奨学金で入ってきた生徒達がダンスやアート、音楽という夢に向かって邁進している場所である。
一方、ゲットーのクラブは、夢を持たない若者の溜まり場として表現されている。
この差がテーマになっていて、そこから抜け出し夢の場に行くというストーリーなのだが、
ゲットーからでも夢をつかむことはできるのでは?と思ってしまった。

この作品の監督はコリオグラファー、振付師出身の人だそうだ。
だから余計、そんな人達がいっぱいいることを知っていると思うのだが…。
中盤のシーンで、アートスクールの女性とゲットー出身で社会奉仕中の男性が夕陽にそまる海辺で踊るシーンがある。
あれがエンドシーンであればよかったのに…。
あとは、夢をスクールで追いかけるには?とかダンスアカデミーに入るために頑張るとか、ひかれたレールの上をただ進んでいくだけ。
オリジナリティを追求していく姿は中盤で終わってしまう。優等生が正しいと言われている気がして少々悲しくなった。
全体的なストーリーは、ストレートでわかりやすいし、ダンスの良さはいっぱいあるけど、
本当に融合したのか?と思うと少々疑問が残る。
エンドロールに一般のオーディションで勝ち残った人達のがダンスをしている映像が出てくる。
これは面白い試みだと思う。




フットルース

監督:ハーバート・ロス
出演:ケヴィン・ベーコン、ロリ・シンガー、ジョン・リスゴー、ダイアン・ウィースト 他
1984年 アメリカ映画

“不滅の青春ダンス映画”
あの熱血ラグビードラマ“スクールウォーズ”のテーマ曲“HERO”を聴くと、この作品を思い出す。
校舎の中を松村雄基がバイクで走るシーンより、
ケヴィン・ベーコンが畑の1本道をトラクターでチキンレースの勝負をしているあのシーンがよみがえる。
何と言っても、オープニングの足元のステップのアップがダンス映画らしい。
スニーカー、パンプス、色々な靴のアップ。様々なステップ。
ナイキのスニーカーとかも格好よい。Gパンに白のTシャツのシンプルなポスターも印象深い。

物語は、海とロックとダンスの禁止されたある町に、都会からレン(ケヴィン・ベーコン)が遣ってくるところから始まる。
Quiet RiotみたいなLAメタルやメンアットワーク、ポリスといった新しいロックを聴き、ダンスが好きで、
ファッションは革ジャンにGパンといったイギー・ポップみたいな子が来たものだから、町は混乱してしまう。
ボロボロのワーゲンもストーリーにマッチしている。
そんなレンが青春を楽しみ、最後にプロムパーティでダンスをしようと立ち上がるという、いたってシンプルなストーリー。
そこに甘酸っぱいラブストーリーが流れていく。

人は何かのせいにして嫌な記憶を葬ろうとする。まさにこのストーリーのベースに流れているものがそれだ。
しかし、友情、愛情、親子の愛というものが、新しい扉を開いていく。
ストレートだからこそ、伝わってくるものがある。

アメリカンなオープンなからっとした感じが、よりこの作品の色気を作っていく。
80年代のダンス映画の決定版。不滅の青春ダンス映画“フットルース” 
アメリカならではのプロムパーティ(卒業パーティ) 
ストレートでPOPで音楽とダンスに満ち溢れたこの作品を通じて、ダンスの気持ちよさを汲み取るがよい。
なぜだか、甲子園球児のさわやかな感覚につながるものも感じてしまう。