バリオ19

2006年 MTV作品

“世界のストリートを知ろう”
MTVが制作し、世界中に様々なストリートスポーツを知らしめた“バリオ19”
どのジャンルに入れればよいか迷ってしまったが、日本人BMXライダー“田中光太郎”が
かなりフィーチャーされていたので、自転車というジャンルに入れることにした。
この作品はBMXだけでなく、インライン、B-Boying、スケートボードや中華鍋を使ったスケートボード、
フリーランニング、ヨーヨー、川でのサーフィン、インラインサッカーなど
世界中のストリートスポーツがぎっしりと詰まっている。
日本人もフリースタイルフットボールのマルコを中心とする球舞のメンバーや、B-Boy“KAKU”、
ダブルダッチ、BMXも北山努などたくさん出演し、世界に発信された。
ストーリーは無く、2分くらいの短いクリップがこれでもかというくらい、どんどんたたみかけてくる。
世界のストリートスポーツやカルチャーを飽きることなく見ることができるだろう。
おしゃれな作りなのでBGVとしても楽しめる1本。
映画という観点で、ストーリー性は無いけれど“文化”を世界に広めるという意味では
大事な役割を果たしていると思います。
(MTVの番組として作ったものをまとめたものなので、制作側にその意図は無いと思うが…)
ストリートスポーツに興味のある人は、是非一度見てみてください!!



スティック・イット!

監督:ジェシカ・ベンディンガー
出演:ジェフ・ブリッジス、ミッシー・ペリグリム他
2006年 アメリカ映画

“ジャッジの立場”
元体操選手だったBMXライダーの女の子が、人の家のプールでストリートをやり、その家を壊してしまう。
賠償金の支払と体操クラブに入ることで少年院入りを免れる。
彼女は古いしきたりと減点ポイントしか見ていないジャッジのやり方に反抗し、あることを考え付く。
体操人生の中で、家族にうらぎられたり、友達も作れなかったり、コーチを信じることができなかった彼女が、
ついに信じられるコーチの元、才能を開花させていくという青春ストーリー“スティック・イット!”
まず、この作品、オープニングからすごく気持ちが良い。
アパッチのリミックスにグラフィティだけで構成され、BMXのシーンにつながる。
Z-BOYZを思い出させる人の家のプールでのパークライドっぽいストリートシーン。すごくワクワクさせられる。
この作品は、“信じられる人はいるか?”というテーマと“古いしきたりのジャッジを変えられるか?”という
2本のテーマで構成されている。
ストリートで自由に新しいものを表現するBMXをやっているアスリートにとって、
体操は決まりに縛られているかもしれない。
さらに、人間関係で点をつけるジャッジもいる。
その意識改革をアスリート側がやったら…というストーリーなのだが、
ジャッジの変な感情で点をつけられた時点でルールなど成立していない。
公平であることがスポーツの基本。
体操だけでなくアイススケートやBMX、スノーボードなど、ジャッジで決められるアスリートは一度見ておくと良い作品です。



シャカリキ

監督:大野伸介
出演:遠藤雄弥、中村優一、鈴木裕樹 他
2008年 日本映画

“ロードレーサーの世界観”
廃部を迫られた高校自転車部の若者がロードレースを通して、
チームの大切さを学んでいく自転車映画“シャカリキ”。
漫画で見たことはあったので、ストーリーにはすんなり入れた。
元々、名門自転車部の監督の息子が“エース”になれなかったので他校に移り、
残された者達が細々と活動しているのだが、
インターハイの予選で負けると廃部というがけっぷちの状態の時、
1人の若者が入ってきて、チームとしてトラブルがありながらも成長していく話である。
ロードレースは“エース”をチームメンバーがアシストして勝たせるというスポーツである。
タイヤがパンクしたら、自分のタイヤを外し、リタイヤしてでもエースに渡す。
順番に先頭を走り、風除けになってエースの体力を残させたり、
集団の中で道を開けさせるため体を張ってコースを開ける。
個人競技のように見えるが、完全なチーム競技である。
ヨーロッパでは自転車競技は国民的スポーツである。
ただ誰が一番速いかだけでは、ここまでスポーツとして広がらなかったかもしれないが、
“チームスポーツ”としての面白さがあるから盛り上がっていくのだろう。
“自転車が好き”という同じ感覚の人間がチームになって勝利に向かう。
その勝利の為には、それぞれ違う得意部分を必要とする。
道を開けさせる為、パワーのある人間、山を昇る時、先導する体力のある人間、
風除けになるスタミナのある人間。自分の得意な部分をすべて“エース”の為に捧げる気持ち。
将棋やチェスにも似ている気がする。
仲間の為に自分のすべてを出すことの大切さを教えてくれる作品です。



Oi ビシクレッタ

監督:ヴィセンテ・アモリン
出演:ヴァグネル・モーラ、クラウジア・アブレウ、ラヴィ・ラモス・ラセルダ 他
配給:エスパース・サロウ
2006年10月14日〜シネマ・アンジェリカにてロードショー

“自転車家族の3200km”
自転車の旅。
かつて忌野清志郎の自転車の旅を撮っていた時、様々な思いが湧き上がってきたことを思い出した。
沖縄一周自転車の旅。
初日は晴天で、那覇から北に向けて走っていた。海からの強い風が吹くと、ひたすら踏んでいくしかない。
車の入れない道も入っていくことができる。
小学校に入っていったり、民家のおばちゃんの家の軒先で沖縄の戦争の話も聞いた。
ギターの三宅さんと、マネージャーの小澤君の3人で走っていたのだが、
お互いにひっぱり合っているうちに、チームとしてのコミュニケーションが生まれていく。
自転車で共に走るということは、何か不思議な一体感や、
どこにでも入っていけるという特別な空間を生み出せる旅なのである。
ブラジル3200kmを、職を求めて7人の家族が旅していく映画“Oi ビシクレッタ”
まず青い空のカットで、ブラジルの澄んだ田舎の空気感を感じさせられる。
その後に、突然、赤ん坊がトラックに轢かれそうになるシーン。
静かだった空間から、突然パニック的な家族を見せられることで、
いきなりスタートから作品の世界に引き込まれていく。
封建的父親と陽気な母親、思春期の兄、無邪気な弟、可愛い娘に、6ヶ月の赤ん坊。
4台の自転車で家族7人がリオ・デジャネイロに向かう。
ブラジルの有名人と言えば、レアル・マドリッドのロベカルこと、ロベルト・カルロス。
彼の名は、ブラジルのポップスター、ロベルト・カルロスに因んでつけたという。
このポップスター、ロベルト・カルロスの曲を、妻が小銭稼ぎの為に唄ったりして、
実に気持ちよく音楽が入ってくる。
映画評論家の木村奈保子さんの観点では、“この作品は、できるだけいらない音や音楽を外し、
ロベルト・カルロスの音楽をひきたたせる作りをしている”とおっしゃっていたのだが、
そういう視点で見ると、さらに音楽が体に入ってくる。
この作品の印象、それは、“父親の威厳と家族愛”
自転車の旅だからこそ、ゆっくりと、そして確実に、家族愛を見ることができる。
そして、旅の中で、“男の誇り”とは何かをゆっくりと考えさせてもらうことも出来るのである。
青い空と茶色の大地を4台の自転車がちょっとずつ前に進んでいく。
かつて僕が作ったPV(ミュージックビデオ)で忌野清志郎のサイクリング・ブルースという曲がある。

頭をよぎるのは 好きな女の事さ 汗をかいて峠の道 また聞こえる
風の中に 高鳴る胸に 大いなるサイクリング・ブルース
土煙あげた季節 やがて去っていった
国道で雨に打たれ また聞こえる
風の中に 震える胸に 大いなるサイクリング・ブルース
                       (サイクリング・ブルース/忌野清志郎)

自転車とブラジルとロベルト・カルロスの音楽は、ゆっくりとした時間の中で、家族愛とは何かを伝えてくれる。



joe kid on a STING-RAY the HISTORY of BMX

監督:ジョン・スウォアー&マーク・イートン
出演:スコット・ブライトハウプト、ボブ・ハロ、マット・ホフマン、デニス・マッコイ、デイブ・ミラ、スパイク・ジョーンズ 他

配給:ナウオンメディア
2007年2月17日〜23日シアターN渋谷にて限定ロードショー

“BMXの歴史の全てはここに詰まっている”
BMXは色々なスポーツの影響を受け、今が在る。
誕生の時、子供達がモトクロスを真似たくて始まった。ストリートやバートは、スケートボードの影響を大きく受けた。
スポーツを進化させたものは人である。“joe kid on a STING-RAY”の中に出てくる名文句だ。僕もそう思う。
1963年シュウイン社が作った1台の自転車“STING-RAY”からBMXの歴史は始まった。
その当時の映像がBMXの歴史を証言している。

子供達にレースの場を与えたスコット。彼みたいな人物が歴史を創り出すのであろう。
子供達より少年の心を持った大人。無邪気にBMXの現場を創り出していく。
そして、この映画で語っているのは、レジェンドBMXライダー達。
ボブ・ハロー、デニス・マッコイ、マット・ホフマン。
僕もホフマンバイクスのBMXを所有しているが、彼の挑戦を見ていると、余計に愛着がわいてきた。
巨大なバートを作り、エアの高さに挑戦していく。
自らケガをしながらトライしていく姿は、BMXに対する何にも変えられない愛情を感じる。
BMXの歴史を語る上で日本も大きく関わっていたことを、この映画で知った。
1974年、YAMAHAがゴールドカップを開催し、シマノもBMXツアーをスポンサードしている。
そして、あの映画監督スパイク・ジョーンズがBMXの専門誌“Freestylin”のフォトグラファーだったことにも驚いた。
時代が動いていく時、多くの人達が関わり、文化にしていく。BMXの歴史は栄光と冬の時代を繰り返していた。
日本でもそうかもしれない。そこには、情熱あふれるライダーと支える人々がいた。
今、日本のBMXシーンはそこのリレーションがうまく行っていないかもしれない。
もっとBMXシーンが大きくなるには…と考えると、この作品にヒントがいっぱい隠されている気がした。
うれしかったことは、日本でライダー達が開催しているK.O.G.という大会が、この作品の中に入っていたこと。
そして、ヤンマーこと山本亮二がライダーとしてピックアップされていたこと。

日本のBMXシーンを世界が見ているということだ。
BMXのことを知りたいなら、一度この作品を見るべし。