恋のスラムダンク

監督:サナー・ハムリ
出演:クイーン・ラティファ、コモン、ポーラ・パットン他
2010年 アメリカ映画

“トレーナーの力”
ニュージャージーに生まれ育った“NETS”を愛するリハビリトレーナーが
NETSのスターバスケットボーラーと出会うことから始まるラブコメディ映画“恋のスラムダンク”
クイーン・ラティファ演じるリハビリトレーナーが偶然ガソリンスタンドでスター選手と出会い、
同居人の女友達が彼女を利用してその選手と付き合い始める。
そんな時、彼は試合中大怪我をする。
セレブになりたかった友達は、来年引退ともささやかれる彼の元から去ってしまうが、
彼女はトレーナーとして彼を必死に治していく。
体のリハビリだけでなく、昔バスケを始めたコートに連れて行ったり、けつを叩いて心のケアもしている。
僕もいろいろなスポーツのトレーナーと出会ってきた。
名トレーナーと言われる人は、チームのメンバーの一員のように、選手達と一緒に戦い、プライベートもよく知っている。
心も体もケアしている感じがすぐにわかる。
トレーナーの力はチームや選手にとって実に大きいものである。
スポーツは体だけでなくメンタルも大きく影響する。
ただ体だけが完璧でも、試合で使い物になるわけではない。
そんなトレーナーの力の大きさを痛感できる作品です。
ラブコメ映画が大好きな人も楽しめるライトな内容なので、一度見てみてはいかがでしょうか?



フライング☆ラビッツ

監督:瀬々敬久
出演:石原さとみ、真木よう子、滝沢沙織他
2008年 日本映画

“女性の力”
合気道をしていた1人の女性が、キャビンアテンダントを目指しJALに入社。
同じ名前のバスケ部入部の子と勘違いされバスケ部に入部し、女子バスケリーグに出場するという
笑いあり涙ありのこの作品“フライング☆ラビッツ”は、今の女性アスリートの色々な要素が詰め込まれている。
仕事をしながらトップアスリート達も頑張らなくてはいけない現実。
仕事と恋とバスケットと全てに全力でぶつかっている女性達。
そしてチームが一丸となり、笑って前に進む力。
まるで、W杯で優勝したサッカーの“なでしこJAPAN”のようではないか?
自分達の好きなもの、やりたいことの為にひたすら前進する姿、チーム力。
そんな環境下だからあきらめないで最後までやりきるのかもしれない。
“男”より“女”の方が感情も激しい部分があるかもしれない。
女性のアイドルグループなどにはすぐ派閥ができ、グループがうまくいかない話などよく聞く。
男はその点少しドライかもしれない。
しかし、スポーツというわかりやすい目標“勝つこと”という為には、まとまる力も出来てくるのかもしれない。
男性よりもパワフルで一所懸命で、今のスポーツシーンを表している“フライング☆ラビッツ”
なでしこJAPANに感動した日本人が見るとさらに楽しめる作品です。



SPACE JAM/スペース・ジャム


監督:ジョー・ピトカ
出演:マイケル・ジョーダン、ウェイン・ナイト、テレサ・ランドル他
1996年 アメリカ映画

“最強のスタームービー”
往年のNBAが好きな人ならこの作品は必ず楽しめます。
マイケル・ジョーダンが主演し、ユーイングやチャールズ・バークレーなどのトップ中のトップバスケット選手や
殿堂入りのラリー・バードなどが出演する“SPACE JAM”
バックスバニーなどのアニメキャラとマイケル・ジョーダンが、
他星のアニメキャラとバスケットで勝負するというシンプルなストーリーのコメディ映画。
ユーイング、バークレー、ラリー・ジョンソン、ショーン・ブラッドリーなど
当時のNBAトッププレイヤーのバスケの才能を奪った宇宙人達。
バックスバニーとバスケの試合で勝つとバックス達、アメリカのアニメキャラを宇宙に連れて行くと約束をさせた。
助っ人として当時MBLでプロ野球選手になっていたMジョーダンをアニメの世界に引き入れ、
マイケルは宇宙人達に、試合で宇宙人が負けたら選手達にバスケの才能を戻すことを約束させる。
アニメ、バスケのスター総出演のイージーな作品と言えばそうとも言える。
当時アメリカの批評家達は、この作品をすごく否定した。
しかし興業としては大成功だった。
当時のトップアーティスト、RケリーやJay-Z、LLクールJ、バスタライムス、クーリオ、モニカなど
HipHopやR&B界総出でサントラに参加し盛り上げた効果もあったと思われる。
スポーツ、音楽、アニメのスター達で1つの作品を創り、
子供達を中心に誰もが楽しめるものを発表することはとても素晴らしいと思う。
様々なエンターテイメントがしっかり組むことで広がりも増えてくる。
アメリカにとってバスケ、R&B、HipHop、アニメなどは、
文化であり、生活であり、憧れであるということを再認識させてくれる1本。
これぞ最強のアメリカンスタームービーと言えるだろう。



モア・ザン・ア・ゲーム

監督:クリストファー・ベルマン
出演:レブロン・ジェームズ他
2008年 アメリカ映画

“スーパースターの作り方”
世界が注目するNBAのスーパースター“レブロン・ジェームズ”と
彼を取り巻くチームメイトとコーチのドキュメンタリー作品“モア・ザン・ア・ゲーム”
オハイオ州の救世軍の体育館で出会った4人と1人のコーチ。
レブロンやメンバーの中の数人は貧しい生活を送り、父親の顔すら知らない子供達もいた。
しかしコーチが彼らの父親的存在となり、バスケットを通じて“人間としての道”を教え、
家族同様に扱うと、次第に4人は親友となり、その後同じ高校へ行き、バスケットを続ける。
転校生のロメオを加えた才能あふれ家族のような絆で結ばれた5人は“ファブ・ファイブ”と呼ばれ
全米でも注目を集めるようになる。
高校生にとって異常なまでの熱狂は人生を狂わす時もある。
おごりが生まれ、敗北を味わったり、アマチュア規定にひっかかって出場停止になったりするが、
そんな数々の苦難を乗り越えられたのも仲間がいたからである。
子供の頃からのビデオや当時のTV番組、大人になってからのインタビューを中心に構成されているのだが、
リアリティの中にドラマ以上のドラマを感じる。
作られていない本物の表情が、余計にドラマチックに見せているのだ。
もしレブロンの近所に彼らが住んでいなくて、コーチであるドリュージョイス2世に出会わなかったら、
天才はただの天才で終わり、世界中が注目する選手にはならなかったであろう。
プロプレイヤーとしての道を選ばなかったメンバーもいるが、いまだに彼らは家族のような関係らしい。
スーパースターは、絆とともに戦う気持ちが持てる仲間を創り出すものなのである。



バスケットボール・ダイアリーズ

監督:スコット・カルヴァート
出演:レオナルド・ディカプリオ、ロレイン・ブラッコ、マーク・ウォールバーグ他
1995年 アメリカ映画

“ストリートの栄光と挫折”
NewYorkでドラッグに苦しみ抜け出した若者を、若き頃のレオナルド・ディカプリオが演じた、
実話を元に作られた作品“バスケットボール・ダイアリーズ”
NewYorkのストリートで生きていた1人の青年は、、ストリートで悪さを働きながらも高校に通い、
バスケットボール部で活躍していた。
治安の悪い街に住み、遊び半分でドラッグや盗みに手を出す仲間達。
そんな中でも、青年は学校に通い、校内ではスタープレイヤーになっていった。
そんな中、バスケ仲間の1人が白血病で若くして死んでしまう。
青年は、ドラッグにのめりこみ、バスケも手につかなくなり、バスケも学校も辞めてしまう。
唯一続けたことは、趣味の詩や物語を書くことだった。
バスケ仲間の1人がドラッグに手を出さず、スター選手になっていく姿をテレビで見て知る青年。
自分もなれたかもしれないと過去の栄光を引きずりつつ、さらにドラッグに身を投じ、
殺人や盗みの現場に足を踏み入れていく。
アメリカほどドラッグは近くにないのかもしれないが、日本でも手を伸ばせば、誰もがドラッグの道に入ることが出来る。
「自分ははまらないから一度だけやってみよう」とか「やらないと仲間から勇気の無い奴と思われる」など、
変な勢いは人生に必要無い。
“断る勇気”“やらない勇気”こそ本当の勇気だと思う。
アメリカではストリートの掟みたいなものがあるかもしれないが、“真の強さ”を知り、
ドラッグに手を出さず、自分の力で悲しみ、苦しみを乗り越えて欲しいものである。



俺たちダンクシューター

監督:ケント・オルターマン
出演:ウィル・フェレル、ウディ・ハレルソン、アンドレ・ベンジャミン 他
2008年 アメリカ映画

“マヌケ度No.1のバスケ映画”
とにかくマヌケでバカバカしくて下品なバスケ映画である。
オープニング曲からダサくて下品。
その歌をヒットさせたミュージシャン“ジャッキー・ムーン”がバスケチームを買収し、
選手兼オーナー兼監督をするというストーリー。
リーグがNBAに吸収され、トップ4のチームしか存続できないというところで、主人公のジャッキーは、
最下位で動員も無い自分のチーム“トロピックス”を何とかあの手この手で救おうとするのだが、すべてがバカバカしい。
選手自らが着ぐるみショーをしたみたり、クマと戦ってみたり、バスケと全然関係ないところで頑張る。
テンションだけ高くて感情だけで動く男ジャッキーとチームの友情の物語。
とにかくバカバカしいのだが、バスケットボールとチームを愛している男達の友情は絶対だということを伝えてくれる。
こんな映画が出来るのは、バスケットボールとコメディが大好きなアメリカ人がたくさんいるからだろう。
陽気でバカ好きなアメリカ人のための映画だ。
ジャッキー・ムーンを演じるウィル・フェレルはサタデーナイトライブの人気者である。
アウトキャストのラッパー“アンドレ・ベンジャミン”やウディ・ハレルソンなど大物を使って
バカバカしい作品を作っているにもかかわらず、
NBAのピーター・コーネル(日立サンロッカーズに所属していたこともある)を起用するなど、
バスケの本質はきちっと取り入れている。
音楽もダイアナ・ロスやクラプトン、マドンナなどのヒット曲を作ったナイル・ロジャースがやっているのだから、
実はぜいたくな作品なのである。
各界のトップ達がこんなに集まってこんなマヌケな作品を作っているのだから、スゴイ。
バスケを使ったコメディ映画としては最高の悪フザケ映画である。



ウィニング・パス

監督:中田新一
出演:松山ケンイチ、堀北真希 他
2003年 日本映画

“本当の強さを教えてくれる車椅子バスケムービー”
北九州の車椅子バスケットチームを描いた作品。
以前、AND1 Mix Tape TOURのオープニングアクトゲームとして車椅子バスケを見たことがある。
普通のバスケよりガツガツ当たっていて、格闘技を見ているような興奮を感じたことを覚えている。
ゲーム中はやたらと“アツイ”のに、ゲーム終了後、お互いのチームがとてもフレンドリーで
全員笑顔だった印象が残っている。
松山ケンイチの初主演作品でもあるこの作品は、ひたむきな高校生がバイク事故で車椅子生活になり、
その苦悩をしっかり表現している。
バスケ部のエースが事故を起こして、彼だけでなく、家族・友達・彼女など周りの生活が一変する。
足が使えないことで生活が思うようにいかない本人の悩みはもちろんだけど、それを迎え入れる親、
障害者の兄を持っていじめられた妹、学校の中でも変な目で見られたり、彼女の母は交際に反対したりと、
今までの人間関係が崩れていく。
車椅子バスケと出会い、青年は生きるパワーをもらい、努力を始める。
までエースでパスも出さず、自分でシュートまで持っていった彼も、皆の協力で生きていくことを学んだことで、
チームで戦うことを覚えていった。
周りの人達も頑張っている彼のパワーに影響を受け、大学を目指して勉強を始めたり、何か目標を持ち始める。
障害者で何かをやっている人を見ると自分に無いパワーを感じる。
どん底に落ちて、立ち上がってきた人間だから持つ“本当の強さ”は、一緒にいる人間に勇気を与えてくれる。
以前、バスケットボールが目に当たり、色が見えなくなった少年のドキュメンタリー番組を演出したことがある。
彼とAND1のスタープレイヤー“プロフェッサー”が1on1をして何が変わるのか?というテーマで作った番組でした。
初めて彼と会った時、お母さんと一緒にいないと話せなかった中学生も、
今、大学生となり、薬の開発をする人になろうと頑張って勉強をしている。
時々クラブチームでバスケを楽しんでいる。僕もたまに彼とバスケの試合を見に行っている。
一人の青年が障害を乗り越えていく力は、周りに勇気を与えてくれることを僕は実感している。
彼と出会って、障害者だからといって変に何もかもやってあげたり、かわいそうな目で見る必要は無いと感じた。
お互い前に進むパワーを持ち、協力してほしいというシグナルが出ていたら協力すればいいし、
普通に応援しあい、彼からのパワーをもらい、自分の力に変えればいいだけである。
この映画は障害者とどう向き合うのかという問題だけでなく
“本当の強さ”を手に入れるパワーを与えてくれる作品である。



コーチ・カーター

監督:トーマス・カーター
出演:サミュエル・L・ジャクソン、ロバート・リチャード、ロブ・ブラウン 他
2005年 アメリカ映画

“リアルに勝るドラマは無い”
ケン・カーターという大学で活躍した元名プレイヤーが、地元の高校のバスケットコーチになって
選手達と共に成長していく話である。
実際の話をベースにしているだけあって、ストーリーがリアルに展開していく。
カリフォルニア州リッチモンドは、産業が少なく、クスリを売ったり、犯罪率が当時非常に高く、
高校を卒業する人間も少なく、
バスケットボールは、NBAに入るか高校までで辞め犯罪者になるかのギャンブル的感覚でやっていた。
そんな感じでやっているからチームワークなども成立していない。
カーターは就任する時、選手と保護者に契約書を作り、サインをさせた。
その内容は、バスケのことよりも学業や生活のこと中心のものだった。
カーターはバスケ部員全員が大学やプロをきちっと目指せる道を作ろうとしていたのである。
チームは強くなり、街からも注目を集めていく。
その後ストーリーは二転三転していくのだが、これが事実だというのだから驚きである。
スポーツには“教え”がある。野球道、柔道魂…。
バスケットにある“教え”が、カーターの口から選手達に伝えられていく。
指導者は、スポーツのプレイを教えることも大切だが、その奥にある“人としての生き方”を教えていくことが
大事なのだと感じさせられた。
MTVが作っているだけあって音楽も最高である。
バスケット版“スクールウォーズ”である。



アフリカン・ダンク

監督:ポール・マイケル・グレイザー
出演:ケビン・ベーコン、チャールズ・ギトンガ・マイーナ、ヨランダ・ヴァスケス 他
1993年 アメリカ映画

“成長する瞬間”
有名大でプレーしていたのだが、怪我をしてコーチに転身した1人の男を
ケビン・ベーコンが演じている“アフリカン・ダンク”
全米大学選手権のスタープレイヤーだった男は、アシスタントコーチになっても
その時のプライドが捨てられず、スカウトする選手にも、つい自分のプレイで応戦し、スカウトすらできない。
そんな男がアフリカの部族にいた男をスカウトに行く。ここからはコメディが展開していく。
あの“フットルース”で決めていたケビン・ベーコンが、文明の無いところで、野グソをして葉っぱでお尻を拭いたり、
いのししに追われたりとドタバタのコメディ。
スカウトの相手は、部族の長の次男。
この村は都会の人に狙われていることもあり、息子をアメリカに送りたくない父。
ESPNや雑誌で“NBA”のことを知っていて憧れる息子。
でも“部族の掟”で長の言うことは絶対なのである。
そんな中、村の存在を賭けて近隣の部族と“バスケの試合”が組まれることになった。
コーチは逃げ出そうとする。しかし、長の息子は夢を叶え村を守るためにもこの試合に勝つしかない。
やがてコーチも、自分のことよりも村や若者の未来の為に戦うことを決心する。
この瞬間こそ成長する瞬間だ。
大人になると、なかなか性格や生き方を変えられない。
“部族”も“バスケットのチーム”も“チーム”という1つのグループなのである。
1つの目標や考え方にまとまって団結して進むこと。時には自己犠牲も必要とされること。
そんなチームの大切さを教えてくれる。
バスケットボールという“チーム”プレイをすることで成長する1人の大人を通して、
楽しく笑いながらも生き方を教えてくれる痛快バスケットボールコメディ。
親子で楽しめる作品です。



THE HEART OF THE GAME

監督:ウォード・セリル
製作総指揮:ラリー・エステス
配給:グラッシィ
2006年 アメリカ映画

“ドキュメントが創り出すドラマ”
アメリカの高校女子バスケットチームの監督と選手を数年に渡って追い続けた
ドキュメンタリー作品であるこの作品。
高校生の女の子達の揺れる気持ち、人種や貧富の違う生徒達、
高校生ながら出産し、学校と母とバスケを両立させようとする女の子…。
いろいろな問題を抱えながら、チームを強くするために様々なアイデアでトレーニングさせ
試合を組み立てていく監督。選手達の問題は、選手達自身にとことん話し合いをさせ、
時に喝をいれ、時に優しく受け入れていく監督。
ストリート的個人のバスケをチームバスケに取り入れ、個性を生かしていく。
そして、チームは年を重ね、州No.1のチームとなっていく。
まるでストーリーがあって撮ったのではないかと思わされるくらいドラマチックだった。
“スポーツはドラマ”である。そんな言葉を再認識させられる作品であった。
ストリートでバスケをやっていた人間がチームに入り、新たに“WNBA”や大学リーグに夢を持つ。
貧しい家に生まれても、ボール1つで人生を切り開いていける。
そこにはチームメイトがいて、応援してくれる家族や地元の人がいて、父親のような監督がいる。
これは作り話ではない。ドキュメンタリーだからこそ、事実だからこそ、説得力がある。
“ボール”が人生を変えることができる。
“スポーツ”をすることで人生を変えることができる。
パワーを与えてくれる本当のストーリーがこの作品に在る。



CROSS OVER


提供:NIKE 製作・監督・脚本:カーン・コンクイザー+キップ・コンクイザー
製作総指揮:マジック・ジョンソン+ペニー・マーシャル
音楽:チャック・D(パブリック・エネミー)+プロフェッサー・グリフ(パブリック・エネミー)
配給:デックス・エンタテインメント
2005年9月テアトルタイムズスクエアにてレイトロードショー

“世界のバスケットボールシーンの入門書”
マジック・ジョンソンが製作総指揮をしているバスケ映画があると言ったら見たくない人はいないはずである。
“CROSS OVER”はそれだけでも価値がある。
そしてジョーダンやバークレーなどNBAのスーパースターが出ているとなると価値はあがる。
世界のバスケシーンを集めたバスケットドキュメンタリームービーであるこの作品、
あのバルセロナのUSAドリームチーム、02年の世界バスケでの敗退、ユーロリーグの実態、NBAやAND1など、
アメリカンバスケしかなかなか見れない日本で、世界のバスケシーンを見ることができる。
もちろん、ゲーム、アスリートとしてのバスケから、南アフリカで生きる為にやっているバスケシーン、
アメリカのストリートカルチャーとしてのバスケも見ることができる。
皆、自分のブロックにあるパブリックパークでゴールがある所に集まり、HOOPの周りで遊びだす。
そして、そこに音楽があり、HIPHOPシーンと結びついていく。
ゲームとして、カルチャーとして、いろいろなバスケットシーンが詰まっている。
音楽はパブリック・エネミーのチャック・D。ザ・ニューヨークスタイル、ハードHIPHOP。
この組み合わせこそ、まさにアメリカという感じである。
日本ではゲームとしてのバスケットが中心である。
AND1が来日したり、ストリートバスケがO-EastやAXなどのクラブでやり始めているが、なかなかカルチャーとして定着していない。
それはプレイヤーだけが先行し、オーディエンスを育てていないからかもしれない。
だからこそ、この作品はバスケットを“生”で見たことはないけど、少しだけ興味があるという人に是非見てもらいたい。
きっと価値観が変わるはず。
もちろんプレイするのも楽しいが、見るのも楽しいということがわかるはず。



リバウンド

監督:スティーヴ・カー
出演:ポール・ディーソン、マーティン・ローレンス、ハイディ・サンテリ、トレイシー・トレンチ 他
2005年 アメリカ映画

“バスケット版 スクール・オブ・ロックだ!”
エディ・マーフィーの「ドクタードリトル2」や「チャーリーと14人のキッズ」を撮っている、
コメディや子供を描くことが上手いスティーヴ・カーのバスケットキッズコメディ。
マーティン・ローレンス扮するNCAAの大学バスケコーチ・ロイ。
自分の名を売りたい為、試合に出ずTV出演したり、リンカーンと契約して車を乗り回したり、
試合中も一人で目立って自分のエゴを押し通し、すぐ退場させられる困ったコーチである。
協会はそんなロイを追い出しにかかり、彼は大学のコーチを解任される。
ロイのエージェントは、好印象を与えて復活させ、元の金持ちに戻す為、彼の出身中学のコーチをさせることにする。
しかし、チームは何十年と勝ったことがなく、選手も無気力で、ロイ自身も金ももらえないのでやる気がない。
しかし、あまりにひどい負け方にロイは闘争心に火がつくのである。
最初は単なる自分のエゴとプライドだけであった。
しかし、それぞれの悩みを抱えている子供達と接しているうちに、
ロイの心に潜んでいた“バスケットを愛する心”がよみがえってくるのである。
バスケットはチームプレイである。
1人でドリブル突破しかしない子。彼は母親しかいない子である。
自分ひとりで生きていくしかないと思っている彼に、バスケットを通じ、チームプレイを教え、
友達と接することの楽しさや夢を持つ重要性を感じさせていく。
プレッシャーに弱い、すぐゲロを吐いてしまう少年には、試合はプレッシャーでなく皆で楽しむものだと感じさせていく。
バスケットボールを通し、子供達に生き方を教えているうちに、エゴの塊だったロイ自身も成長していく。
この構造は、“がんばれベアーズ”であり、“スクール・オブ・ロック”である。
子供達に教えているつもりが、ついつい自分が教えられている。
当たり前のことかもしれないが、1つのスポーツを通して、歳などを超えチームになることが重要なのである。
かつて目に障害のあるバスケ好きの高校生のドキュメンタリーを撮ったことがある。
彼の変化を見て、そしてバスケを愛する気持ちに刺激を受けたあの感じに似ている。

バスケ版スクール・オブ・ロック「リバウンド」心温まる1本である。



グローリー・ロード

監督:ジェームズ・ガートナー
出演:ジョシュ・ルーカス、デレク・ルーク、ジョン・ヴォイト、スヒン・A・S・カー 他

2006年 アメリカ映画

“バスケによる黒人解放の瞬間”
日本人である僕は、黒人の人種差別のことを本当に理解しているかと聞かれると、理解していないと答えるしかない。
“マルコムX”を見た時も、キング牧師の話を聞いた時も、身近に感じられなかった。
モハメッド・アリの映画を見た時、少し黒人の苦悩を感じ、
“BAD ASSSSS!!”や“SWEET SWEET BACK!”を見た時、反骨のパワーを感じた。
今回のグローリー・ロードを見た時、本当に痛く彼らの苦しみが刺さってきた。

この話は、1962年の実話でNCAAの大学テキサスウエスタンス大学のバスケ部が
黒人だけのチームで決勝戦にのぞみ優勝した時の、コーチとバスケ部の部員を描いた作品である。
今は、NCAAでもNBAでも普通に黒人プレイヤーがチームの中心となって活躍しているが、
60年代前半、特に南部の大学と考えると、黒人選手は試合に出しても1人か2人。
普通はベンチにおいておくものとされていたらしい。
白人で元女子高のコーチだったハスキンズは、上手いプレイヤーやチームプレイできるプレイヤーは差別せず起用した。
ディフェンスを固め、オフェンスはパスワークと個人技を融合させた。チームはいきなり勝ち始める。
しかし、勝てば勝つほど、黒人プレイヤーは襲撃されたり、ホテルを荒らされたりと問題が起きる。
白人のコーチであるハスキンズは非難を浴びる。
1つにまとまって人種の壁を越えたチームは、悩みながらも勝ち続けるのである。
1つのことを共にやることで分かり合えた人達がいるのに、社会の目は冷たい。
バスケ映画で事実に基づいているからこそ、余計に痛く感じてしまうのだろう。
スポーツ、特にチームプレイを必要とするものは、当たり前のごとく人間の壁を越えることができる。
周りの声をもはねのける絆もできる。
バスケット、チームプレイの凄さと、人種問題の深さを感じさせられた。
テキサスウエスタン大学からはデビット・ラティンやハーダウェイなどのNBA選手も数多く輩出された。
ハスキンズは1999年までで719勝も挙げ、殿堂入りとなった。1962年NCAA決勝戦、バスケによる黒人解放の瞬間。